真相 終
夜になり、アリスちゃんをマーニ君に返すと同時にギルド併設の酒場の仕事が始まる。
初級の迷宮があるだけのこの町は人口の移動が少ない。
ほとんどが馴染みの、気のいいおじさん達ばかりで過剰なスキンシップもそれをするりと交わすのも最早挨拶のようなものである。
いや、喜んでる訳じゃないからね。
別れ際こそ寂しいものの、日昼の戯れを思い出して思わずほほえむ。
思い出し笑いなんて気持ち悪かったのか、おじさん達がぽけ~っとこちらを見ている。
ちょっと油断しすぎだわ、反省反省。
マーニ君に懐いたのか後をつけるようになったアリスちゃん。
流石に危険なので(実際は一緒にいたいだけ)必死に捕まえる。
かつて冒険者だったときの名残・・・ずいぶん鈍ったものだが・・・による捕獲である。
わざと殺気を放ち、解く。
その際の弛緩した気配を追う技術なのだけど、まぁそれは相手の動きを一瞬とめるためで、アリスちゃん、隠れてるつもりかもしれないけどギザギザしっぽが見えてるよ?
うん、やっぱりちょっと心配だ。
最近は遊びに来てくれなかったせいか、アリスちゃんをみると暴走してしまう。全身なで回すのはもちろん、ひっくり返してお腹に顔を埋めたのはやり過ぎだったかもしれない。ちょっと避けられているような気がする。
もう一度だけさせてくれないだろうか。
そんなことを考えていると気づいたら時間があっと言う間に過ぎている。酒場が最近騒がしい気がする・・・?
ああ、そういえばまた脱ぐのを忘れていた。
アリスちゃんはどいういうわけか、私の首の後ろがお気に入り?なようで、よじよじとよじのぼるのだけれど、爪がちょっと痛いし、制服に穴を空けられるのも困るので、手作りで一着仕上げたのだが、腰から脇、背中の登り口?に生地を厚く配しただけの野暮ったい作業着然とした代物でちょっと恥ずかしいのだ。
そんなこんなで酒場も閉まり、仕込みなんかをし終われば再び奥へと引っ込んで業務日誌を書く。
正直そんなに書く内容もないのだが、本部のころからの習性のようなもので、眠る前の儀式のようなものだ。
最近・・・この辺じゃ見ない魔物の発見報告や退治依頼が増えている気がする。少し気になる程度とはいえ、嫌な予感がする。
冒険者をやめて久しいが、この予感というか直感は未だに鈍ってないんだよね、とため息をついて日誌を閉じた。




