真相 序
最近のエイファは、ご機嫌さんであった、間違いない。
ただ、その原因は男ではなかったが。
まぁ、お分かりのことかと思うがアリスである。
マーニにから、「アリスがついてこようとするから、捕まえて自分が帰るまで預かってください」といわれたエイファは当然の如くOKした。
―――そして現在。
「ふふふふーん♪」
もしかしたら親すらも見たことがなかったかもしれない。
アリスを脇抱えで高いたかーいの如く持ち上げて部屋の中をクルクルと回る様は彼女を信奉している、といってもよい彼女のファンですら夢から醒めてしまうかもしれない。
「ふふふ、アリスちゃーん、今日もかわいいでちゅね~♪」
ちょっとハイになり過ぎているのか、口調もおかしい。
彼女にそのような趣味はないので、冷静になって恥らう姿が見られるかもしれない。
そしてそんな様子を見せられ、全身撫で回されたアリスはと言えば
瞳から光が失われている。
エイファの肩の上、首の後ろに身を添わせるように寝そべっている。
姿もろくに見えないであろうが、エイファの御機嫌具合はうなぎ登りで、今ギルド本部へと送る予定の割と重要な書類が丸文字で溢れており
、後々本部のある王都でも一波乱起きる火種が出来上がりつつあった。
リリーン。
かるい、涼やかな音色が響いたにも関わらず、その音色がもたらした結果は魔王の降誕のようであった。ボキッという音とともにペンが折れ、インクが書類を黒く汚した。
かの地へと訪れるはずであった混乱を沈めたファインプレーは知られることはなかった。
「すみません、依頼の途中で怪我をしてしまいまして。受けた依頼のほうはなんとか達成したのですg・・・ひぃっ」
姿を捉えた瞬間、思わず殺気を放ってしまった。
いけないいけない。幾らアリスちゃんとの時間を邪魔されたからってちゃんと仕事はしないとね。
チッよりによってなんでこんな時に限って依頼なんかあるのかしら。
そういいながらもテキパキと治療を済ませる。
普段より若干応対が雑なのは仕方ないでしょう。
わざわざ離れた街から来てくれた冒険者さんにこの対応はマズイ。
「これにて依頼達成です。ありがとうございました。規則ですので依頼料を上乗せすることはできませんが、もしよろしければ昼食でも召し上がっていってください。」
そういって併設の酒場へと彼を誘い、一食ごちそうした。
「またよろしくお願いします」
冒険者さんが扉を出た瞬間に私は奥へと駆け戻ったのはいうまでもない。




