凶報 終
噂が噂を引きつけ、男たちが情報を整理したところ、
昼は機嫌が非常に悪く、夜は機嫌がいいということだった。
「もしかしてギルドの裏で男と・・・」
「あぁん?」
「いやだって!昼間はエイファさん、基本呼ばないと表に出てこないじゃないっすか!まぁここの閑古鳥ぶりじゃ仕方ないとも思えるっすけど」
「じゃあ何か?相手は真っ昼間に家にいて夜中に出ていくような奴ってことか?」
「そうと考えたらつじつまがあうっす!」
周りの男たちもなるほど~とか言いながら頭を上下させている。
「待て待て!あのエイファさんがそんな男にひっかかると思うのか」
「ありえねー。エイファさんにひっかかる馬鹿男が居ても逆はない」
周りの男たちも確かに~とか言いながら頭を上下させている。
「いや、ありえなくもないか」
クエスチョンマークとハテナマークを浮かべた男たちが一斉に声の主へと顔を向けた。
「いや、ちょっと思っただけなんだが、夜のお勤めだからって別にいかがわしいとは限らないと思ってな。そもそもエイファさん自身が元々ギルドのお偉いさんだっていうんだ。相手がギルドの関係者ってこともありえんるんじゃないか?」
「まさか・・・ギルド直属の情報機関"斑蜘蛛"か!?」
ーー斑蜘蛛、それはギルド小飼いの調査機関とも暗殺機関とも噂されている存在である。
各国に跨り、存在するギルドの力は大きく、取り込もうとする者、目障りに思うもの様々が存在している。一度とある国の陰謀によって打撃を受けたギルドのトップが組織したとか。
ーゴクリ。
「で、でもよぅ」
静まった一同の中で一人が声をあげる。
「おかしくねぇか?相手がギルドのメンバーだってんなら着飾ったりする必要はねぇだろ?」
そうだ。エイファさんは最近ギルドの制服(エイファは着心地のいいように改造している)の上から一着服を羽織るようになった。
作業用エプロン・・・というには多少オシャレで、ワンピースというにはいまいち作業用という今まで見たことのない服で、当然売り物ではなくエイファ自身の手製によるものと思われる。
エイファがこの町に赴任してきて以来、毎日きれいではあるが、制服姿を欠かしたことはない。
上から羽織っているだけで下は制服なのだが、とはいえこれまでそんなことはなかったのだ。
「やっぱり、着飾って見せたい相手ってことなんじゃないのか?」
ポツリ、と誰かが落とした声。
実際のところ誰もが気づきつつも目を背けたかった事実。
「そうだよな、エイファちゃんがオシャレしてまでな相手なんだもんな。思うところはあるだろうが、エイファちゃんを祝福してやろうや」
・・・ざわざわ。
「そうだな。もともとあんなきれいな人に相手がいない方がおかしかったんだ。ちょっと寂しいが、ほかでもないエイファさんのためだ。みんな素直に祝ってやろうじゃないか」
それからしばらくエイファの顔を見る度に祝福の声をかけられて首を傾げる様子が散見されたとか。
見かけはむさ苦しいおっさんが多い冒険者だが、中身は割といい人が多いようであった。誰得な情報であるが。




