決別 後
目覚めたマーニが見たのは見知らぬ天井、定番のオマージュ。
人間に傷つけられた小動物のように警戒心を顕わにする。
コンコンコン、とノックの音が響いて「入るわよ」と柔かい声が届く。
しかしその瞬間に部屋の中に走った緊張感にその女性は入るのをやめ、扉のところから声をかけるにとどめた。
曰く、彼女の名前はリアーム、領地の隅で孤児院を経営していて、食材を探しに出かけた院の子どもたちが、マーニのことを見つけ呼ばれたリアームが抱えて帰ったのだそうだ。
流石に迷惑をかけようで気まずかったのかマーニの眉間の皺が消える。
それを見てようやく部屋へと踏み入れたリアームは持ってきた水を差し出した。
「いくところがうちに来る?ってもういるんだけどね。」
リアームの孤児院に世話になりだして、その生活にも慣れだしていた。
幼さではむしろ下から数えたほうが早いにもかかわらず孤児院の手伝いをし、子ども達の面倒を見る側になっていた。
リアームはそのことに胸を痛めつつも馴染んできたことを喜んでいた。
しかしそんな日々も長くは続かず、子ども達と連れ立って薬草や食べられるものを採りに山へいった時、狼型の魔物に襲われた。
幸い群れではなかったため、マーニは囮となって他の子どもたちを逃がすことに成功する。よくわからないが自身の回復の力を当てにしての作戦だった。
なんとか孤児院へと帰り着いたマーニはリアームに泣きつかれて困ったが不思議と悪い気はしなかった。
孤児院は質素ではあったが、両親と生活していたときに次いで心安らかな空気に満ちていた。
聖光教というこのあたりの国々に力のある教会が、マーニの身請けをしたいと孤児院に打診してきた。
突然の申し出に不審なものを覚えたリアームは理由を聞かせてほしいと伝えたが、教会の使いは無理やり連れて行こうとする。
リアームはマーニをつれていかせまいとかばうが、頬を叩かれ蹲るリアームに
「異端扱いされたくなくばおとなしくその子を引き渡せ」
という低い声が突きつけられた。
聖光教は強い権力をもっていた。
異端扱いとなればすでにギリギリの生活をしている孤児院が周囲から孤立し立ち行かなくなるのは考えるまでもない。
だが、年に見合わないどこか心配な少年を人柱として差し出すことはリアームには出来ず動けずにいたところに幼子の少し高い声が響いた。
「僕、いきます。ここにはそれなりにお世話になったのでそれなりに便宜を図ってください」
そういってペコリと頭を下げていく幼児を捕まえようとした私を留めると重めの小袋を掴ませて使いのものは帰っていった。
囮となって子ども達を逃がしたマーニを偶々見かけた司祭が、その力を使い御子として祭り上げ、自身の出世をもくろんだのだが、マーニの力は他人を回復させることが出来ないとわかり、教会内の争いに敗れ命を散らす。
放り出されたマーニは他人を信じず、自身の力でいきることを決意したのだった。




