戦場の違和感
エイファさんの目から逃れるのに手間取った私がようやくマーニ君を見つけたのは迷宮の中だった。
連日の駆除により迷宮から外部に出たスリームの数が多くなかったのか、さっさと倒したにせよいきなり内部に入ったにせよちゃんと見つけられたのは幸運だった。
そして発見してからしばらく様子を見ているわけだけど、マーニ君はすごい!ほかの同年代の子を見てないのでわからないけれど、普通小学生くらいの子どもがやることじゃないよね・・・。まぁこちらの世界ではこれが普通とかだったらハイスペックすぎるよ!
魔物がいて日頃から生命の危機が身近にある以上、前世のようになまぬるくはないだろうけどそれでもまぁ子どもにやらせる仕事じゃないと思う。
そんな私の考えに反して5匹、いや6匹を相手にしながらも囲まれることなく位置を替え時々攻撃をしている。お子さまスゲーと思いながらも前回のように目の前に集中して周囲への警戒を疎かにすることがないよう必死に逸る心を抑えている。取り立てて才能はないが、失敗を反省できる女なのだ。しっぽが妙に左右に振れているのは私の自由にならないのでしかたないのである。
しかし、しばらく見ているとおや?と思うことが二つあった。
一つは前回ちらっと見たけどアルルカナンの波動だ。
いくらお子さま超人でも完全に回避できてるわけでなく、腕や足に度々攻撃を食らっているのだろう、シュウと音がしてちょっと嫌な臭いが漂う。鼻が利くのはいいことばかりではない。鼻を押さえて地面を転がりたい衝動を必死に我慢していると、怪我を負ったであろう箇所に淡い緑色の光が蜃気楼のようにして空気をゆがめたかと思うと次の瞬間には怪我ひとつ無い状態に戻っている。
私は必死にそれを解析しようとあくせくしていたがどうもうまくいかない。火・水・土・風の時には”感じ”でつかめたというのに全くひっかからない。これはちょっと詳しそうな人(?)に聞くしかないだろう。
もう一つはマーニ君の攻撃についてである。
自分自身回復できることを知っているためか、多少の攻撃なら当たることを構わずにいる様子には若干眉を顰めざるを得ないが、うまく位置取りして回避しつつ隙をつくり出しているようなのだが、武器を振り降ろす直前にわずかに硬直するようなのだ。
それはほんのわずかだが、時にはスリームの核を外し、分裂させてしまったり、スリームの攻撃を受けることになっている。
武器が重たいのかな?と首を傾げる私。
実はスリームって強いのかな?
今にも飛びかかりそうなスリームの一匹に向かってアルルカナンを燃料にした炎を飛ばすとそれに当たったスリームはあっさりとその身を溶かしてしまった。
「誰だっ!?」
とそんな声がして、ヤベっと思った私はその場を後にした。




