大人の鬼ごっこ(鬼Lv:MAX)
あれから数日、私の鬼ごっこ、彼らにとってはかくれんぼ、もしくはだるまさんが転んだの鬼の状況が続いた。
マーニ君だけならチョロイのだが、エイファさんは鋭すぎるのだ。
私は早々に気づきながらも、繰り返した。
そう、今のこれは仕込みなのである。
昔、偉人がいうに
「兵は詭道なり」
一回の成功のための布石を打っているのだ。
今日も今日とてエイファさんにつかまり、マーニ君と帰宅である。
そして翌日から、以前のように食料を集めたりして、すっかり諦めたかのようにふるまった。夕食も豪華になり、マーニ君の機嫌も上昇させる効果もある。まぁ私が獲ってきているとは思ってないようなのだがそれはいいや。
それを3日ほど続けたあくる日、
「機は熟した」
いつもはする見送りもせずに遊びにいった、と思わせて木々の間を駆け抜けてかろうじて後を追える距離を保って歩く。
マーニ君はもう私が飽きた、とか怒られ続けてようやく反省したとでも思ったのか後ろを気にする様子はない。
それでも全方向に気を配り、過剰と言っていい程耳をあちらこちらに向けながら追跡する。
――敵はエイファさん一人。
無論、うらみつらみはないが、今は馴れ合うわけにはいかないのだ。
今回見つかってしまえば警戒はより厳しくなるだろう。
この一回で決めねばニャらぬ。
ギルドに入るのを見届けた後、地に伏せた私は必死に自分を押さえ続けていた。
思えばエイファさんが出てくるときにビクっとするその気配を読まれていたのではないかと失敗を通して気づいたのだ。
できればエイファさんも諦めたのだと思ってほしいところだが、彼女は甘く見ていい相手ではない。
耳と、くるんと丸めた尻尾を必死に抑えてその時を待つ。
こんなに長い時間を感じたことはない。
揺れる木の葉の音も気にならないくらい、鼓動がはげしい気がする。
ピリリとした空気が全身を撫でていった後、バタンと扉がしまった音がして、それでも動けずにしばらく伏せていた後、身を起こした私は初速から全力で走り出す。
そして安心してペタンとお尻をつけたのは迷宮入り口へと着いたのに気づいた後だった。




