飼主達の心、ねこ知らず
エイファの持ってきた薬液を手に塗られて涙目になっているねこが一匹。無論、アリスです。
怪我の様子を確認したエイファは慌てて何種類かの液体が入ったビンを持ってきてお馴染みのはかりで量を揃えて混ぜると、スポイトで数滴私の手に垂らし、問題ないことを確認した後本格的に塗り始めたのだ。
酸によって焦げたあたりの毛を切って薬液を塗り、包帯をクルクル巻いて
「よし、できたわ」
といって無駄に蝶々結びが手の甲に存在を主張している。
フリフリっと動きに制限がかからないか試す。大丈夫そうだ。
くしゅんっとかわいい音がして、エイファさんは自分の今の姿に気づき、お風呂へと服を着に駆けていった。
先に服を着てください!
という私の声は無情にも種別の壁に阻まれたのだった。
だいたい、一応は業務時間のはずである。エイファさんは実は好き勝手やっているのだろうか。
「スリームは一応最低辺の魔物ってことになってるけど、あんまり長時間さらされていたら体が溶かされちゃうこともあり得るんだからあんまり、お痛しちゃダメよ?普通は魔物を見たら動物は逃げるものなんだけどね」
と、後半は苦笑気味のエイファさんである。
もっともアリスがただねこではないのを察しているので仕方ないかな~と思いつつ、こう言っておけば次からは逃げてくれるんじゃないか、と本当に心配してもいる。
一方アリスは何それ怖い、考えを改めている。
「それじゃあ私は仕事だからここでちょっと待っててね」
そう言ってエイファさんは執務室へと戻っていった。
・・・さっき仕事中にお風呂入ろうとしてたよね?と少し刺々しい視線で見送るアリスだった。
ドテンっとお尻を地面につけて顎に手をやり考え込む。
痛っ。そういや、手は怪我してたんだっけ。
マーニ君のあのアルルカナンはなんだったのかと。
これまでは一回見ればなんとなくわかったものだが、さっきのはさっぱりだった。
まだ見ていない光か闇に関する魔法だろうか。
火や水に比べて上級っぽい感じなのでわかりにくかったのか。
状況から見て回復とか、応急手当をしようとしたとみるのが妥当な状況だった。そして発言を聞いた限り、失敗したのだろう。
しかし、光や闇でそもそも怪我が回復するものだろうか?
植物なら、光合成で栄養を得る、と無理くりだますのも可能だが。
ーーこの辺は、前世において香澄はゲームにハマり込むタイプではなかったので、光=神聖な力で回復=僧侶と言った認識はなく、比較的現実的に検討しているーー
もう一度マーニ君の仕事ぶりを拝見するしかない!
こうして飼い主(仮)とかわいいもの好きギルドマスターの思惑はハズレ第2次初めての職場体験が計画されたのだった。
夕方近くになって、飼い主(仮)に引き取られたアリスが帰り道で散々怒られたのは言うまでもニャい。




