The rainy day Ⅱ
慌てて村へと戻った僕が向かったのはギルドである。
最も頼りになる大人(唯一頼りになると同義)と言えばギルドマスター、エイファさんだったからだ。
隠すためと少しでもあったかいようにと思い、上着で包んで抱えながら今にも扉をふっとばすようにして入ってきた僕を見て、溜め息をついているのが僕の探し人だった。
「この仔を助けてっ!!」
今にもお説教を始めそうなエイファさんを勢いと大声で制したのだった。
めくった上着からのぞいたソレを見たエイファさんの顔が七変化する。
怪訝そうだった顔が驚きに、そして今にも飛びつきそうなほどの喜色を見せ、ハッと別の意味で驚きぐぬぬとでも効果音をあてるべきか、眉間に縦線を結ばせる。
もしかしてねことかかわいいものが好きなのかな?
そして恐らく、ねこにしては…もしかして魔物?という思考に行き着いたのだと思う。
僕がギルドに飛び込んだのはエイファさんがいるから、というのが大きいのは間違いないが、このねこ(?)が魔物かどうか、どう対処するべきか、もっとも正しく判断できるのがギルドだと思ったからだ。
まぁギルドマスターがエイファさんである以上、エイファさんがいるから、という理由から外れるものではなかった。
「マーニ君、ヨルガン先生を呼んできて!私の名前を使ってもいいから!」
恐らく僕の表情が強張ったのだろう、一言付け足されて、僕は慌てて
駆け出した。
後ろでも慌てて動く気配がした。
案の定、村医者のヨルガン先生は僕を見て表情を曇らせたが、エイファの名前を出すと、渋々準備をして駆けつけてくれた。
と言っても、ギルドであの仔を見た瞬間には再び表情は曇ったのだったが。僕が呼びにいっている間に身体を温めると同時に身体を洗ったのだろう。銀箔の毛はメラメラっとやわらかく、月の光を受けて輝く露露を思わせるその身は一介の仔ねこで済む存在では納まらなかったのだ。
エイファさんが責任を持つということでようやくヨルガン先生は容態を診てくれたが、助かる見込みは相当低いだろうとのことだった。
なんとか僕が一晩看病しますと押し切ると、牛乳は良くないから山羊の乳を人肌に温めて飲ませてやれと言ってヨルガン先生は帰宅し、エイファさんもギルドを放り出すわけにいかないのでやむを得ず帰っていった。
僕はエイファさんの力を借りて山羊の乳をもらってくると言われたとおりに暖めたが、どうやって飲ませたらいいのかわからなかったのだ。
目覚める気配はないし。
エイファさんに聞きにいくか思案していると、暖めた山羊乳の臭いがしたのか、スンスンと鼻を鳴らした。このあたりはねこと同じだと思った。
指をつけて鼻先に近づけると再び鼻を鳴らして僕の指を前足で掴むと、垂れる雫をんくんくと飲む。
さっき弱々しいと思ったばかりなのに、同時に生命力の力強さを感じるという不思議な気もしたが、どちらも間違いようのない本心である。
指をつけては鼻先にもっていくということを何度か繰り返した。
時々爪と牙が痛かったが、けふぅと音がしたので何かと思えばどうやらゲップのようだった。いい気なものだ、と思いながらもなんか安心して
眠たくなったのは、仕事で疲れていたのもあるだろうが、目の前のねこ(?)の寝顔のせいもあるだろう。
途中ギルドを抜け出してきたエイファが顔を並べて眠る一人と一匹を見て、微笑みながら毛布をかけたりしていったのである。
そんなわけもあって、僕はアリスを僕が守らなきゃ、という意識を持っている。
お転婆というかやんちゃな妹をもって苦労している、といった具合だ。
「まったく、今頃はどこで何してるんだか」
アリスは家を改造して、出窓風に張り出させた石壁と結晶を薄く延ばしたガラスもどきで作ったテラス風の部屋で日向ぼっこをしながらお昼寝中だった。魔法を覚えてからは割とやりたい放題である。




