The rainy day
雨の日だろうと仕事に休みはない。
迷宮から抜け出したスリームは定期的に狩らないと異常な速度で分裂増殖し、その酸の体で作物を枯らし、動物を怪我させたり殺したりしてしまうからだ。
ある程度ランクが上がった冒険者はスリームは弱いといって相手にしなくなるが、普通の村人たちにとってはそれなりに被害が大きい相手で
僕は継続的に狩るという契約をギルドと結んでいる。
エイファさんがギルドマスターとして村の人と相談・調整してくれたおかげでこの仕事で定期的に少なくない収入をもらえているわけで、エイファさんには頭が上がらない。
それでなくとも食事や家のメンテナンスなどでお世話になっているのだ(多少違和感を感じつつもマーニはそう思っている)。
そういえば、あの日もこんな雨の日だった。
無駄に分裂させてしまったことで駆除が長引き、いつもより遅めの帰宅となり、おまけに雨も降っていたため、うんざりとしながらも帰宅を急いでいた。
そんなわけだから、気づかなかったとしてもおかしくはなかっただろう。
アリスはもっと僕に感謝しても良いと思う。
最近はその日中に帰らなかったりして僕に気を揉ませるのだ。
話を戻そう。
ふと何かを感じてそちらへと意識を向けると、
何かが落ちている?のが見えた。
無性に意識を反らすことができず、恐る恐る近づいて見ればくすんだ灰色の獣のようであった、但しまだそれほど大きくなかった。
それでも油断することなく、警戒しながら近寄ってみれば、暗さも相まって相手を大きく見てしまっていたのだと気づく。
ほんの子ねこサイズだった。
しかし、毛並みは思っていたより綺麗そうで、洗ってやって光の下に連れ出してやれば月明かりに照らされる雪のようかもしれないと思ったが、それはこの状況に置いては決していいことではなかった。
魔物ではないか、と思わざるを得なかったからだ。
ようやく手に触れるほどまで近づいて、弱々しいながら、微かに体が動いているのに気づく。
散々悩んで、結局助けたいと思ったのは、たまたま今日遅くなった自分がこれまた偶然倒れているのを見つけたこと、そして瀕死の状況で他の動物・魔物に襲われていなかったことと言った様々な幸運に後押しされたこともあるが、それ以上になんらかの不思議な力がこの仔を助けなければならない、と僕に訴えかけたのだ。
雨に濡れたから、だけではないだろうやせ細った体は表面は濡れて冷たかったが、体はまだ温かかった。体温としては大分下がっていたが。
慌てて持ち上げようとすると、ぐにゃっとなんか柔らかくて、力が入ったら壊れてしまいそうな危うさを感じて、恐々と抱き上げながら上着で包むと慌てて村へと駆け戻ったのだった。




