初―小さな訪問者―夢
昨日いい忘れましたが、初夢編は番外編です。
読まなくても本編にはさほど影響がないです。
どたどたとどこか壊しいリズムの振動が響き目が覚める。
耳がピクピク動かすのにもすっかり慣れている。
なんとなく聞き覚えのある声が耳に届きキョロキョロとあたりを見回すも
冷静でない私はありえない選択をしたのだった。
「おや?炬燵がついてるぞ?出る前に確かめてったんだけどなぁ?」
「消すのとつけるのを間違えたんじゃないの?」
ビビる私はどうか気づきませんように、と手を合わせて祈るのみである。
「おや?」
と言う低めの声とともに炬燵の掛け布団が取り払われるとまぁ私がいるわけでした。
うちの両親はねこ嫌いですぐに追い払うような感じではなかったと思うけど・・・。
「頭かくして尻をかくさず、実際に見ることがあるとは思わなかったよ、ちっちゃな侵入者さん」
とそう言って私を抱き上げた父は私の鼻をつんっと突いたのだった。
「母さん、ねこが入り込んでいたよ。昔に比べ雪が降らなくなったとは言え、外は寒いからね、うっかり炬燵がついてたから入っちゃったんだろうね」
「あらら、まぁ、首輪がついてるし飼いねこよね。お正月からいなくなったんじゃ飼主さんも心配してるんじゃないかしら。名前は書いてある?」
そういって、首輪のキャット・タグを覗き込むが、向こうの世界で書かれているため、読むことができない。
「外国から来ていらっしゃるのかしら?それともただの飾りなのかしらねぇ?お隣の笠原さんにちょっと聞いてみるわ」
笠原さんは、このあたりのママさんたちの取りまとめ役っていうか人気者?とにかく町内の名物おばさんで、笠原さんに聞けば町中の≪情報網|ママさんネットワーク≫を通してありとあらゆる情報が集まるといっても過言ではない・・・くもない。ちょっと言い過ぎかな?
ともかくお伺いをたてるのだろう。
「きっと飼主さんが見つかると思うからそれまでゆっくりしているといいよ」
父はそういうと私にこたつ布団を被せてくれた。
父も母も最後に見たときよりふけて見えた。
私は私で異世界で生きるのに精一杯だった。
言い訳ではなくそう思っているけれど、父や母のことを思いやったことはなかった。
自分のことであるが、ねこになって転生した私にはどうにも実感がないのだが、彼らにとっては唐突に娘を失ったのだ。
さっきの言葉を思い返すに今は正月らしい。
それにしてはおめでたい、という感じではないのは喪中だからではないか。
母は御節をはりきって作るタイプだったし、父は普段仕事人間だからかお年末年始のような休みでは率先して家のことを行う人だ。
このどんよりと緞帳のような影を落とした空気は私の胸をきゅっと締め付けたのだった。
向こうの世界とは時間の流れがずれているようだが、そこは考えてもシカタナイとして、どんな因果かこちらの世界に戻ってきている。
何か意味があるんじゃニャいか、そう思った。




