ソーサルポリシク・レフィノック
本年最後の更新です。
つたない文章ですが、皆様のお暇をわずかでも楽しく出来ていたなら幸いです。
どうか来年もよい年であられますように(ー人ー)祈り・・・
ノワーロさんにその存在を聞いた翌日の夕方、今私達は一緒に入浴中である。
もちろんお互いの大きさが違うので私は中サイズの、件の眷属さんは大きなお友達(意味深)用のサイズの中ほどの段に陣取っている。
まぶたを閉じたその様子はとても気持ち良さそうだ。
この身になってわかったけど、動物にも感情とかちゃんとあるんだね、きっと。
私は、川辺で集めてきた石ころを鞄に大量に詰め込みお家へと持ち帰ったのを魔法を使ってお皿や茶碗、おわんといった食器から、テーブルやイスといったものを作り始めた。
「魔法」という前世になかったものが楽しくて本当に必要なのか考えもせずひたすら遊んでいたという感じだったけど。
そして次は何をつくろっかな~と思っていたところに小さな訪問者が現われた。
まごうことなきウサギさんである。
ティディ・ベア座りをしていたところにひょこひょこやってきて、額を私の背中にくっつけた。
うさぎさ~ん♪とほっこり背中や頭を撫でていたら、気持ちよさげにしていたウサさんが、ハッと・・・マッタリしてる場合と違う!とばかりに私のギザしっぽを甘噛みして後ずさるので、どこかへ連れて行こうとしているのがわかった。
ああ、きっと例の隣人が来るので使者をたてたのだ、と気づいたのはもうちょっと後だ。
寝床の下の隠し通路を通り、急いで入浴場へと向かった私が見たのが、まぶたを閉じて微動だにしない「鹿」だった。
彼?彼女?の隣になる浴槽に浸かり様子を伺って30分が経った。
温めとは言え、ちょっとゆだってきた私は、お風呂から上がって身体を乾かしていた。
ふと大気の揺らぎのようなものを感じて振り向いてみれば、例の隣人が目を見開いてこちらへと視線を向けていた。
綺麗な緑色の瞳だった
思わず見惚れてしまったソレはかつて見たどんな宝石よりも美しく、生命力と知性に満ちていた。
「こんばんは、御使い殿」
私が意識を取り戻したのは彼女の声が耳を通り抜けた後だった。
声のしたほうへ顔を向けてみればとても綺麗な雌鹿だ。
今の私にはちょっと背が高くてコワイのだけれど。
「申しわけない。どうもあのオンセン?に入っていると気持ちがよ過ぎて何も考えられなくなってしまう。オンセンは今までに見た何よりも魅力的で何よりも魔性を帯びている。」
語感は軽く、うっすらと笑っているようにも感じられて、どうやら文句をいっているわけではなさそうだ。
「挨拶が遅れたな。私はこの先の、レフィノックの森を預かっているソーサルポシリク・レフィノックだ。最もソーカの森とは地続きで、植生が変わると言うだけなのだが。」
私はポカーンとなっていた。そーさ・・・
「私の名前、長いだろう?だれも1度では覚えてくれないんだ。呼びにくいからレフィといってくれたらいい。」
彼女は苦笑しつつ、そう言う。
「私はアリスです、ソーサルポシリクさん。綺麗な瞳ですね、見蕩れてしまいました。湖と森を閉じ込めたようです」
私は感じたことを率直にいうと、彼女はとても驚いていたようだ。
「ありがとう。呼びにくいケドこの名前は大事な友人がつけてくれたものでね、なんでも透き通った緑の石なのだそうだ。そんなわけでこの瞳も実はちょっと自慢で。御使い殿に左様にいわれて正直誇らしい。スーカによると何か私に聞きたいことがあるとか。」




