月明かりの大浴槽
なんでも聞いたところをまとめれば、私が浸かった後の残り湯をノワーロさんが真似して使ってみたところ、ハマってしまい森の動物達も釣られて入るようになったが一部の大きな動物さんが足を入れるのもギリギリなのだとか。
言われてみれば納得のいくところもある。
いくら野ざらしとはいえ、毎回汚れすぎだと思っていたのだ。
というか、残り湯ってなんだか恥ずかしい。
あの温泉は私にぴったりのサイズに調整してあるのでそのままにしておきたい。
「別の場所にもう一個作るのでもいいですか?」
「ホー。そのほうがありがたいかもしれませんな。となると場所は・・・あこが逆にちょうどいいかもしれんですな」
そういうノワーロさんの後についていきながら、検討地について聞くところによると、ここからそれほど離れていないところらしいのでそこまで湯脈を引けばいいかな?
目的地は開けたところだった。
四方に獣道がつながっており、交通量?は多そうだが、いっそ気持ちがいいくらい、すっきりと何もいない。
私やノワーロさんが来たからだろうか。
頭を傾げる私を見て、何を考えているかおおよそのことを察したのだろう。
「ここは森の四方に繋がる重要なところでしてね。そこを巡って2頭の群の頭が争ったのです。無論無関係な小動物等も巻き込んで。自分がここの管理者として派遣されたのもそのような事態を受けてのことだったのです。しかし、その事件以来ここは森の禁忌としてみられるようになりましての。この有り様と言うわけです。」
確かに言われて見れば地面に生える草花を見るに、今だけ、と言うよりはずっと誰もこの地を踏まなかったと見る方が納得がいく。
「しかし、あれからもう大分時間が流れました。アリス様が別の場所にと仰ったとき、ここを争いの跡ではなく皆の憩いの場となってもよいのではないかと思ったのです。」
ふむん、思いがけずシリアスな話になってしまったがそういうことなら力を貸そうではないか!
月の下で動物達が集まってくつろぐ様子、というのも絵になりそうだし!と実は結構獰猛な動物がいたりするのだが、アリスは狐とかリスとかかわいい動物のことしか考えていない。
入浴の対象となる動物たちのことを聞いて、こめかみのあたりがひきつり、受けなきゃよかったかも・・・と思ったのは仕方のないところであろう。
このくらい?と手でまるを描くようにしてみればノワーロさんは左右90度ずつ首を振り、その4~5倍はありますぞと言う。
やっぱりやめていい?
というか大きすぎるんですよね。
これを許容するだけの大きさを粘土で作るとなると集めるだけでもなかなか苦労しそうだし、そもそも煉瓦はまだ研究中である。
かと言って穴を掘っておしまいというのでは耐久性に問題がある。
むぅと久しぶりに"考えるねこ"ポーズになっていると、ノワーロさんに何を悩んでいるか聞かれたので、正直に現状について話す。
「ふむ、アリスさまは土の魔法が使えるのですから石のたぐいを変形させることはできませんかな?依然土の大精霊様が使っておられるのを拝見したことがあるのですが。それから今のうちに森の動物達に声をかけてこの辺りの整備を手伝わせておきましょう。」
ニャんとっ!そっけなく言ったけど重要な情報ゲットですぞ!
あ、うつりました。




