森の管理者
「アリス様、一つ伺いたくて本日は参りました」
それまでのいいお天気ですねレベルの話とは打って変わって真剣な表情でーーいや、フクロウの表情なんてわかんないですけどねーーノワーロさんが話し始める。
「なんでしょうかノワーロさん」
「うん、ええとアリス様があの廃墟の周りを魔法で拡張されているのは拝見していたのですが、今後も広げていかれるつもりでしょうか?」
なるほど、よく考えてみれば、何も考えずに好き勝手してたな。
「ごめんなさい。誰かの管理下にあるとは思っていなくて。」
ここは正直に謝る。
「いえ、立場上、"御使い様"がそのようにされるのでしたら、先ほどの答えにもなりますが、われわれは口を挟むことができません。"御使い様"とはそれほどの存在であると考えていただいて構いません。ただスーカの森を預かる身としてはあまり、不用意に開拓されるのはお控えいただきたい、とお願いするだけでございます」
「えっと、うん、ごめんなさい。何か必要になったら相談してもいいでしょうか?ん?そういえば昼日中って活動できるんですか?」
私が考えたのは鳥目のことだ。一介のフクロウと同様に扱っていいのかわからないのだけれど。
「ホー。アリス様は物知りでいらっしゃるようですな。確かにわれわれの一族は明るい中で生活するのが苦手なのですが、その、自分は一応闇の精霊様の様の卷属ですからな。視界を暗くする魔法を使ったりすれば問題ないのですじゃ。」
私からすればなんて無駄なって感じだけど、あれだ、暗い中でも明るく見える装置みたいなものなんだろう。
「それからですな、これはできればなのですが銀露の実を一カ所からではなくいろんなところから収穫するようにしていただければありがたいです。その代わりに、ほかにも色々な果実が採れるところをお教えしましょう。」
なるほど、確かに一カ所から取りすぎればそのあたりに住む動物たちが困るかもしれないな。
「でも、森の中をうろつき回って危なくない?」
私は魔法を使えるとは言え、他の動物とバトったりしたくはない。
しかし、ノワーロさんにとってはとっても意外なことだったらしく、
「森の中で御使い様に手を出すものなどおりません!」
ひどく焦った様子でそう叫んだ。
「本当に"御使い様"についてご存じでないのですね」
そう言うとノワーロさんはうーん、しかし私の一存では~とか四精に怒られる~とか一人ごちている。
とりあえずその辺は今度カノ達が来たら聞くことにしますと言って無理矢理話題をストップさせ、森の中を案内してもらう。
まぁ、万が一何かあっても魔法でどうにかできる・・・よね?
いつも銀露の実をとる場所の近くにもいろいろと食べられるものがあった。木イチゴに近い檎樗、レモンのようにすごい酸っぱい悶澪、桃のような鶯紋。季節の関係上今ならないものも含めていろいろ教えてもらう。まぁ、暗くて見て回れないから口頭で聞いただけなのでまだ味わうのは先かな。悶澪って名前でどんな食べ物か想像がつくわけだけど、ちょっと気になる私でした。
そんな話しの最後に、申し訳なさそうにノワーロさんが話しを切り出した。
「その、ですな。あの湯を溜める施設を大きくしてもらえんでしょうか?」
「は?」
間抜けな音が私の口から飛び出した。




