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私はねこになる!?  作者: 夢辺 流離
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ねこでもできる、簡単なお風呂の入り方♪

  温泉施設(ねこ専用)ができてからというもの、私の日課に入浴がプラスされたのは言うまでもない。

夕食の後、満腹になった満足感(美味しいとは言ってない)に浸りながらのんびりと庭を散歩しつつ森との境まで行く。

 

  コポコポと湧き出る泉水を虹をかけるように空を渡らせて煉瓦造りの浴槽へとそそぎ入れる。

浴槽の中でお湯を勢いよく巡らせると、一塊の湯玉にして排水用の川へと捨てる。

 そして再び泉水の虹をかけると縁へと屈みこんで前足を入れる。

 何度か入って温度は知っているのだが、恐る恐るのばしてチョンッと触っては引っ込めながら温度を測る。


 ぬるめにしたいときは川の水を混ぜて。

 理由はわからないが、どうもねこ仕様になってからは人間のように長湯は禁物だ。すぐのぼせてしまう。

 

 おっと、湯に浸かる前にまずは一杯。

 再び泉水を湯玉にしてふよふよと頭上に浮かせると前足で耳を押さえながら湯玉の魔法を解除、重力に従ってパシャンと私の体を濡らす。

 ふわもこだった毛がぬれて心なしかスマートになった気がする。

 風を私のまわりにまとわりつかせるようにして体の水滴と一緒に汚れを吹き飛ばすイメージで。

 どれだけきれいになったかはわからないけど、ここまでしてようやく念願の入浴である。

 

  縁にあごをのっけて、目を細めながらくつろぐ。

 体の関係上、そうすると手(前足)が窮屈になってしまうが、頭って意外と重いからこうすると非常に楽なのだ。

 手は器用に折り畳むようにしている。

 

  ちょっと早めに湯から上がると、再び泉水を巡らせて、私の体を覆うようにする。

 勢いよく体の周りを高速回転するお湯。

 そう、ドラムのない洗濯機という感じだ。

 でもねこを洗おうとして洗濯機に入れちゃだめだよ!

 おねえさんとのお約束なんだからね☆


  頭部は耳もあるし、シビアなので全魔法洗濯機は使えない。

 耳の後ろを掻くように後ろ足でこすったり、顔を洗う要領でごしごしと洗う。うーん、ボディシャンプー、いや石鹸でもいいのでほしいところだが作り方なんかわからないし。

 ああ、罪深きこの身(好み)を許したまえ!


  再び湯に浸かる。

 慌てて作ったこの浴槽、2回入った位でひび割れが見つかった。

 高温で一気に焼き上げたからだろう。

 ただ、それにしては案外いい出来のような気がする。

 慌てて砂利やら草が混じってしまったけど、もしかしたら粘土単品で

焼くのではなく、何か混ぜるのがデフォルトなのかもしれない。

 イメージはテッコンキンクリートだ。ん?なんか違うようニャ。

 あるいは日本刀の柔らかい心鉄とそれを覆う硬い玉鋼だろうか?

 あれ?なんかこれも違う気がするぞ?

 そんなことを考えてたらまたのぼせそうになった。

 

  閃きとかけまして、お風呂のお湯とときまする、その心得はっ?

 気づいたら沸き、放っておいたら流れていってしまう。

 お後がよろしいようでっ。


 浴槽からあがったらせーの、でブルブルっと体を震わせて全身の水気をとる。

 それでもまだ濡れた毛が張り付いているのでアルルカナンを常時燃料にして保っている火種をちょっと強くして風と一緒に"お願い"すれば

即席のドライヤーである。くすぐる温風がこちょ気持ちいい。

 そうして2分くらいで再びふわもこねこのできあがりである。

 簡単でしょ?


 そして家への帰り道。

 「せっかくの風呂上がりに足が汚れるの嫌だから今度道を舗装しようかな?」

  


  魔法を覚えたアリスは自重しない。




 アリスが姿を消してから15分ほど経った頃。

 温泉に一つの陰が忍び寄る。

 その陰が温泉へと近づいて尚、その身は陰であった。

 月のない夜をそのまま切り抜いたような漆黒の体は月の光に照らされて尚、陰。

 チョンチョンっと湯面を叩くその足は、お茶目な動作とは裏腹に鋭い 爪を持ち、それ以外を魚のように鱗で覆われていたーー梟である。

 金色に爛々と輝く双眼は漆黒の体と相まって双子の月のようである。

 「うむ、ちょうど冷めた頃である。はじめは何をしておるかと思ったものだが、流石は御使い様である。なんとも気持ちのよいものであるな。」

  彼の場合足と下半身が湯に浸かっているだけなので半身浴だろうか。

 それでも心地よさげに目を閉じれば月が雲に隠れた隠れたように彼の姿は夜に紛れ込んでしまう。ただ、輪郭線のみ。

 

  それからまたしばらくして、にわかに辺りが騒がしくなる。

 ゆっくりと梟が目を開くとリスなどの小動物から狼といった中型の動物、果ては・・・大型の猪まで様々な動物が辺りに集まっていた。

 「ここでは争いごとは御法度。皆で仲良く順番に入ろう」

  という梟の落ち着いた声でめいめいが動き出す。

  草食動物も肉食動物も襲う様子も逃げる様子も見せず、中には小型の動物が沈まない程度に湯の中に入れてやる猿なんかもいたりする。 それなりの深さなので、小型の動物は浸かりきらずばた足の練習をするように縁に手をかけている。

 中型の動物は足湯の形で、大型の動物は自身が入るとお湯が流れてしまうからか、皆がでるのをじっと待っている。 

 最初に浴する権利を得ている梟はこの森のトップであり、毎日アリスが出ていった後に足を浸かるのが気にっていた。

 それが習慣化するうちに他の動物に知られていき、多くの動物が集まるようになって、争いが起こったため梟がルールを決めたのだ。

 梟としても、入浴の邪魔はされたくなかった、という本音があった 

が。

 

  皆が各くつろいだのを見計らって小型の動物から順に時間をおいて森へと返していく。

 梟がいる間はこの温泉周辺で争いをしてはいけない。

 皆が去ったのを確認した後、梟は自らの巣である森の奥の立派な銀露の気にとまると、どこか威厳を感じる「ホー、ホー」という鳴き声を響かせる。それを合図に森は夢から覚めて≪弱肉強食|現実≫の世界へと戻る。


 「これは、御使い殿に頼み込んであれを大きくしてもらったほうがいいかの?」


 梟はちょっとオーバーに首を傾げて一人つぶやいたのであった。 

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