ウォータージェット
「ねぇ、ラグズちょっと聞いてみたいんだけど、あなたの魔法でどういうことができるの」
「ええと?例えば水を生み出したり、それを操作したり、でしょうか?」
私の質問が半端なせいか、ラグズの返事もどこか曖昧である。
「見ての通り、この家ボロッボロでしょ?なんとか直してあげたいんだけどあなたの魔法で木を切り倒して加工することはできないかしら?と思って。」
「えっと私の魔法は水なんですけど?」
私が想像しているのはウォータージェットによる切断である。
「それとも風の魔法でスパッと切れたりするのかしら?」
「アリス様の命令なら私がんばるよー!」
とはスヴィプル。
「ありがとう、でも命令じゃないわ。お願いなの。力を貸してくれないかしら。」
「アリス様、いったいどのようなお考えでいらっしゃるのかもう少し詳しく教えていただけませんか?」
アルルカナンを通じての会話は空気を振動させて会話するのと似ている。
だが決定的に異なる点もある。言葉にして伝えるだけでなく、自分の思考なども波に乗せて伝えることが出来るらしい。
彼らはこれを「想話」と呼ぶ。
言葉だけで説明するよりも深く伝え合うことが出来る利点がある。
アルルカナンの操作の練習も兼ねて想話を行う。
魔法の練習の初期段階なのだとか。
私も具体的に知っているわけではないので、
水を圧縮させて、一方に勢い良く放つ、水圧で削り切るというように伝えた。
ラグズとしては、そんなことを考えたことがなかったのだろう。
想像し、実行可能かを検証しているようだ。
粘土なんかを魔法で見つけてもらえたらレンガなんかも作れるだろうか?
一介の女子高生の領分じゃないよね?
細かいところは分かりません。
実験したいということなのでラグズに開けたところに一本だけ生えている木に向かって撃ってもらう。
最初の一発目は水の塊をぶつけただけって感じだった。
十分破壊力あったけどね!
もうちょっと細くしてとお願いする。
今度は水の棒が刺さったような感じだ。
私のイメージが間違ってるのかな・・・。
なみなみと張った水槽をイメージする。
水の量を変えないままに箱を縮めるように圧力を左右上下から加えつつ、箱の前方に小さな穴をあける。
四方から押し出され、勢い良く放たれた水がまず表面を、そして中を削り穿つ。
こんな感じ?
空中に巨大な水の塊が浮かび上がる。
それは球体の形に整えられると中央に向かって収束していく。
腕で抱えられるほどの大きさになったところで、一閃。
抵抗すら感じさせず支えを失った大木が倒れこんでくるわけで。
「みんな、逃げろー!♪」
実験成功である。




