カノの事情 中
スランプで成長が止まっていたものの、依然私の力は強かった。
だから問題ないと思っていたらよりにもよって御使い様に呼び出された。
周囲に当り散らしたりしたことで叱責されるかとか不安だらけで逃げてしまいたかったが、そういうわけにはいかない。
御使い様がどんな方なのか知らなかったけれど、大精霊様ですら頭を下げなければいけない方らしい。本来私なんかがお目見え適う相手ではないのだ。ふん、いい機会だわ、その面拝んでやろうじゃないの!
ビビる足を暴言で叱咤して私は御使い様のお社へと連れられていった。
御使い様のお姿は・・・思わず敬語になってしまうほどの圧倒的な存在感だった。この人?の前では自然と頭が下がってしまう。
「あなたがカノね。もう話辛いったらないわ。もう顔をあげなさい。」
そして一瞬で台無しに。
思わず見上げた先にいらっしゃったのはお狐様だ。
銀の体毛に妙に太い尻尾が九つ。
「大精霊達がちょっとは威厳というものを示してくださいって言うんだけどそんなの肩が凝ってしかたないってのに。私の名前は九十九尾。名前の通り99本の尻尾があるのだけれど面倒くさいので11本ずつまとめてあるの。火の大精霊があなたのことを次の大精霊に推してきたのだけれど、確かにいうだけのことはあるわ。力強くもどこかやさしい暖かみのあるアルルカナンね。でも最近妙に猛るような爆ぜるような不安定さが見られて気になっていたの。遅くなってしまってごめんなさいね。」
そう言って一介の精霊風情に頭を下げられて、周りの大精霊様方は溜息をつき、私はあんぐりと口を開けて次の行動が起こせない。
御使い様が私なんかを気にしていらっしゃった?
大精霊?なんで誤られてるの?御使い様って何なの?
絶賛混乱中である。いっそ叱責を受けたほうが納得がいったというものだ。
目の前で一束の尻尾がふさふさと左右に揺れる。
「大丈夫?なんか時が止まっちゃってるけど。」
御使い様の声で現実に戻ってきた私は
「一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか?」
頭を下げて訪ねる。
「うん、いいよ。私に答えられることならね。なんでもは応えられないけど」
そして最近の悩みをぶちまけたのだった。
「うーん、なるほどねぇ。小難しいこと考えてるな。でもあれだ世の中に疑問を持つってのはいいことだね。大精霊も見習ったほうがいい。」
御使い様、私が大精霊様ににらまれるのでその辺で・・・
「火の精霊が普段なにしてるかねー。言われてみりゃわからんね。火を意図して使うのなんか人間くらいだしな」
私は気落ちしていく。自然界に置いて私達は必要とされていないのか。
「でもよ、人間には必要とされてんだろ?いいじゃん、別に人間でもさ。人間だってこの世界の1部なんだぜ?。カカぅ見たか。一発でお悩み解決だぜこの手腕。いやー自身の才能がおそろしい。」
ふふっ、何よソレ、何にも解決してないじゃない!なのに心は打って変わって軽やかだ。
「おう、久しぶりにカラッといいアルルカナンだな。」
狐の顔なのにニヤっとしたのがわかる。どうなってんだろな。
御使い様は思っていたより粗野で言葉遣いは悪くて、でも居心地の良い方でした。




