カノの事情 前
私の名前はカノ、火の精霊だ。
精霊っていうのは、自然の、根元の力を見守り、調整する存在だ。
それ自体が神秘を抱える物質が長期間に渡り、もしくは異常ともいえる濃度のアルルカナンにさらされることで奇跡的に生まれるのだそうだ。
かくいう私も火山の側のちょっと変わった石ころだったのがあるときの火山の活性化による小規模な溶岩にさらされて生まれたのだと聞いている。
そうして生まれたのが準精霊と呼ばれ、特定地域で精霊の下で自然を見守るのだ。
そして長期の年月を経て、アルルカナンに触れ、「格」が上がることで、準精霊→精霊→大精霊となっていく。
私も最初は何よソレ!と思っていたけど、いざ自分が精霊へと格上げされてみると、ああ、違うんだなって分かる。
口で説明するのは面倒くさいのだけれど、世界を受容できる能力の差が段違いなのだ。
準精霊では村一つか二つが精一杯といったところで、精霊になると幾つかの村や町を含めた領地っていうの?を2~3は軽く見守ることができるようになったのだ。
私はどうも才能があったようで、アルルカナンの操作は私が一番うまくできるんだ!とかいうつもりはなかったけど、自分の力がだんだんうまく使えるようになるのが楽しくて訓練なんてつもりもなく、純粋に遊んでいるつもりだったのに自然とアルルカナンが高まっていった。
準精霊として生まれてからとんとん拍子に成長した私であったから、他の精霊にやっかまれることも多かった。
同属の火の精霊はもとより、他属の精霊たちからもだ。
基本的にひとつの属性の精霊だけがいる土地というのはない。
土も水も火も風も単体で存在していることはほとんどないからだ。
空の上や海の深いところはあるが、それでも光の精霊様や闇の精霊様がいらっしゃるのだ。
ようするに私たちも共生しているってこと!
だから、
「火の精霊なんて普段何をしているのかしら?どんなに才能があったって山火事や噴火でもなければ活動なんて殆どないんじゃない?」
と言われた時、それが嫌味だと思うより先に考えてしまった。
大地や川、大気がある他の属性の精霊と違い、火の精霊には依って立つものがないということを。人の手による火はある。だが自然界において私達は何を守護し、されているのか。
私はこの時からスランプになった。
理由もなくイライラしてしまい周りに当たってしまうことも増えた。
そんな時に私を支えてくれたのが同属ではなかったのは皮肉であるが、だからこそというべきか3人の異属の精霊たちと、先代の御使い様は特別な存在だ。
生まれ方が生まれ方なので、家族、というものは私達にはない。
だからこそ、私にとって彼らは大事なのだ。




