名前はまだない②
最初から違和感だらけだったのだ。動かしたつもりの手足に連動して
毛深いものが見えるし、走ろうとすれば私の思考と体の本能的なところが折り合わず、結果的に身体に合わせるように4足走行していたのだから。ぶっちゃけ、低い視界に次々と飛び込んでくる枝やら草やら石やらを避けつ、跳びつ走るのはなかなか冷や汗モノでした。そして油断しているとナ行がニャ行になったりね!
強制的に自分の姿を見てしまった以上、納得はできないが、認識せざるを得ない・・・。あ、そういえば、水面に映った姿ですが、尻尾がとても特徴的でした!!前世において有名なキャラクター、ピカねずみのようにギコギコと折れ曲がったようなかぎ尻尾でした。
それはともかく、いろいろと問題はあるが、まず優先順位として食料の問題があるのです!とりあえず水は確保できたのだが、獲物の獲り方なんてわからないし、「私」の記憶がそもそも狩った獲物をそのまま食べることに強い忌避感がある。「猫」への私の考え方とそれが自分自身に当てはめられるかというのは非常に難解な問題なのだ。例えば、食事の問題も然ることながら、私は犬や猫に服を着せる飼い主というのは、あまりいい印象を抱いていない。しかし私は、「服を着ずにいる」という現状にも困っているのだ。毛皮が服なのだと思えればいいのだろうがそう簡単に割りきれない。他にもトイレとか、全身舐めてきれいにする、とか、絶対に無理!でもたぶん、意味もなく全身を舐めているわけじゃないのだと思う。もしそれが身を守るための知恵なのなら、命取りになる可能性もある。くそ!自称神め!何が便宜を図ってやるだ!どう考えても面倒なことにしかなってニャいぞ!この世界で生きるためのちょっとした力をくれるとかしてくれれば良かったのに!何もチートとは言わんぜよ!
と、しばし頭を抱えて唸り、転がること30分、少し冷静さを取り戻した私は、川沿いに森を下ることにする。詳しくは分からないが、水源の確保のため、川からそう遠くないところに人が住んでいる可能性は低くないと思ったのと、飲み水の確保のためである。獲物が獲れない私には恐らくそれほど余裕はないだろう。無論人里に下りたところで食べ物にありつける保証があるわけではないし、肉体の野生の本能に任せればなんとかなるのかもしれないが、やはり「私」の意識がそれを受け入れないのだ。そんなわけで問題を棚送りにしながら、川の流れに沿って歩き、耳を澄まして警戒しながら歩くのでありました。
古典的名著のタイトルをサブタイトルとしてパk・・・オマージュしている間は半分プロローグが続いているようなものかもしれません。
早くイエネコになりたーい!!