にゃん生甘くない
私はスライム’sの前に飛び出すと、右(前)足を突き出し、肉球を見せ付けるように天に向けると、クイクイっと動かしてみせる。関節とかの関係でこの動きちょっときついんですけど!いわゆる、かまーん!の挑発というやつです。それにノせられた、というわけではないだろうが、3匹のスライムは獲物めがけて動き出す・・・。とても遅いけど。この挑発は人間相手に有効に働くかもしれない、本来の意味でではなく、可愛さに釣られて、ではあるが。
アリスは必死で走っていた、走っているように見せていた。彼らの追いかけてくる速度はひっじょ~うに遅く、本気で走ればすぐさま見失われてしまうだろう。手加減に手加減を重ねて走る、という苦難を強いられながら目的地へと走る。なんかもう、普通に回り込んだらあっさり取れたんじゃなかろうか?という疑問、誘惑と戦いながら。
見失ったら、元の場所に戻っちゃうかも知れないので、ある程度宝箱から距離をとらせないと!度々後ろを振り返りつつ、コーナーを蹴った
アリスは目的地に目を向けた。
スライムたちがどのように思考しているのか、そんなことを考えた人はいるのか?もし考えていたなら、視界に入った獲物に歓喜していたかもしれない。ほんの数メートル先に追いかけっこの相手が止まっている。あの小さな身体では走り続けるのに体力を使い果たしたのだろう。
スライムたちはわずかに速度を上げたように思えたが、小さな獲物を捕らえることはなかったのである。ガコン!という音と共に落下していく感覚を感じることができるのか、それも定かではない。
ふぅ。安堵の息を吐いて、走ってきた道を戻り始める。上手く罠にかからなかったら全速力で回り道して宝箱の元へ行こうと考えていた。とは言え、宝箱に鍵がかかっていないとも限らない。やはりゆっくりと時間をかけられるほうがいい。テクテクとのんびりと歩いていく。好き好んで冒険者になりたいとは思わないが、やはり宝箱の存在にワクワクさんである。保証もないのにお目当てのものが出る!という気になっている。そしてとうとう目の前に宝箱があるわけでして。両(前)足をフタのほうにかけてグググっと体重をかける。ふぬー。ゼイゼイゼイ。幸い鍵はかかってないもののちょっと重たかった。中にあったのは・・・小ビンである。中に液体が入っている。・・・どう考えてもバッグじゃない。
耳と尻尾がシュンと垂れた。とは言え、時計がないので分からないが、結構時間が経っているだろう。唯一の戦利品を銜え、トボトボと帰途に着いたのであった。
小ビンの中身は・・・?




