はじめてのたんさく!
一般に、嗅覚の優れた動物、と言われれば"犬"を想像する人が多いことは考えるに難しくはないだろう。
だが、"犬"には及ばずとは言え"ねこ"も人間と比べれば圧倒的に嗅覚が優れているのである。そしてその優秀さは必ずしも利点であるとは限らない---。
地下へと伸びる、石造りの階段。地下迷宮への入り口である。湿度の増加、かび臭さと微かに混じるすえた臭いが洩れ出ていて、アリスは早速"回れ右"しそうになるのを必死でこらえねばならなかった。すぐに鼻がバカになったのが若干の救いだったが、そんあ臭いが身にまとわりつくのはゴメンだった。地下へと踏み込む小さな一歩には、前世を含めても最も多くの勇気が必要だった。
思ってたよりもキレイなのね・・・。石造りの壁が周りを覆い、幾重もの出入り口を作り、そして迷路を作り出していた。まぁ、地下迷宮なんだからそれほど想像とかけ離れた様子ではないが、圧倒される光景には違いない。
「壁は結構高いのね。上を行くのは無理か」
さっそく姑息なことを思いつつ様子を伺う。入り口の近くだからか、モンスターの姿はまだ見えない。通路の幅はそれなりに広く、どう考えても地下にこんなものがあるのはおかしい。"異世界"を実感しつつ、恐る恐る歩き出す。目的は"マジックバッグ"、迷宮の踏破ではない。が、そのほうが困難かもしれない。どこか引き気味にヨタヨタと探索中である。耳はひっきりなしに前後左右に向けられているし、カロリーの消費についての心配はいらないだろう。
なんて考えていたら、前方より地面の擦れる音が聞こえてくる。ズルズル、ズルズルと。その分、動きは早くなさそうだ。私は周りをキョロキョロして小さな小路に忍び込み、先の音が通り過ぎるのを待つことにした。壁に手を添えて顔だけひょこっと出して様子を伺う。もちろん耳は全力で周囲を警戒中だ!・・・来ない、まだ来ない。スローボールを投げられたバッターはこんな気持ちだろうか、じれったい。そんな思いを身体に表さないようにジッとしながら様子を覗う。ゲームの、デフォルメされたのとは違う、現実のスラ・・!実際に目の前を通り過ぎて行ったのは、ナニアレ?プリンの形のゼリーの、ここまではまぁ想定内、左右が抉れてる?括れてる??パルテノン神殿の柱をもうちょっと極端にしたような?どれだけ呆けていたのか、気づいたらスライム?は大分遠くに行ってしまっていた・・・。
手に汗握るバトルシーン!なんてものはないです^^;




