名前はまだない①
重いまぶたをなんとか開けると、視界に広がるのは木!、木、そして木である。木が三つで「森」とはよく言ったもので・・・って、流石に三つじゃ不足でしょ!なんて野暮はお言いでない、と。
妙に視界が狭い・・・ニャんでこんな自然味あふれるところで私は寝てるんだ?とまだボケボケの頭で考える。・・・ああ、そうか。言われたことを鵜呑みにするニャら、私は事故で死んで?あまりにも気の毒だからという建前で、本音は向こうの管理ミスの償いに、出来る限りの便宜を図ってできるのが異世界転生であるとのことだった。
え、何?つまり・・・ここって異世界・・・?
いや、確かに近場にこんな森ニャかったけどさ・・・そもそもこんニャところで寝た記憶ないし。できるかぎり便宜を図る・・・でこの放置っぷり?ありえニャくニャいですか?今度会ったら絶対シめる。そんな機会くれニャいんだろうニャ、ニャろう・・・。
いつまでもこうしていても仕方ニャい。とりあえず現状を認識しニャいと・・・後は人里を探さニャいと・・・。そんなことを考えながら体を起こす・・・ってあれ?視界狭すぎじゃニャい?
いや、正直に言います、ちらほら見えているんですよ。ただ信じられニャいだけで・・・。先ほど考えたことなどまるでなかったかのように私は森の中を走り出す・・・もちろんこの時点で違和感しかニャいですが、ひどい混乱に見舞われている私は気づいていませんでした。むしろ現実放棄していたというか。集中故かいつもより良く音が聞こえるようニャ気がします。しばらく駆け回っていると水の流れる音がしたようで、進行角度を修正しつつ、走り回ります。
あれ?私運動苦手だったんだけど…息は荒げているものの、まだまだ走れそうだし、何よりこの速度少なくとも自転車並には出ているはず。ニャんて考えてるうちに小さな川辺に辿りつきました。幸い、ペットボトルの水じゃないと飲めニャい、ニャんてことのない私は(一度沸騰させたくはあるけど)覗き込んでみれば今まで見たこともないくらい純んでいて、夢中にニャって飲みました。ピチャピチャ。うん?波紋が落ち着いた水面には一匹の子猫が写っていました。かわいい。猫派じゃなくてもかわいいと思ってしまうんじゃニャいでしょうか。微かに銀交じりの白地に黒のトラ模様。耳はピンッと細めのが天を突いています。口元は幼いなりにしまっていて、イケニャンです。って私じゃないですかヤダー!少なくとも水を飲んでいる「私」はこの子猫しか映っていないのでした。思わず両手(前足)で顔を覆った(肉球気持ちイイ!)私は呻きながら地面をゴロゴロするのでした。
もしもこの森に人が来ていたなら、あたふたする子猫に悶えたことでしょう。