閑話 教習
この話は本編よりちょっと先の話になります。
なぜこのタイミングで入れるのか?
わかりません。ごめんなさい><
魔物ではないにしろ、アリスがただのねこでないことは認めざるを得ない。遅まきながら、飼い主であるマーニは純然たる事実をようやく飲み込んだ。なにしろ、いや、そもそもねこらしいしぐさが少ない。起きてからの伸びとかちょこっとくらいはそれらしいところがあるにせよ、あまり鳴かないし、毛づくろいもしているのを見たことがない。
べつにそれ自体はいいのだが、親ねこが教えるべきところを親ねこがおらず、そのせいなのではないかと心配しているのだ。ましてや仕事に行くときにアリスが手を振っていたり、(何か考えているのかは分からないが)手を顎にやって首を(むしろ身体全体を)傾げていたり、自分を見て育っているのでは!と思うと悩んでしまうのであった。
そんなある日のこと、ギルドで依頼を受け、ボロボロになりつつもなんとか達成して帰宅してみると、地面に葉っぱが敷かれており、魚が積まれており、誰かが持ってきたのかとも考えられたが、その横でドヤァと誇らしげにしているアリスを見る限り、アリスが盗ってきたのだと思った。客観的に見て、村から魚を持ってきた場合、積まれている魚ほど鮮度が良いはずがないのだが、マーニには分かっていなかった。ちゃんとアリスを躾けないと!
「アリス!他の人のものを許可なく持ってきちゃダメだ!その人が困るだろう!!」
そう言ってちょっと強めに頭を指で叩いた。反射的にアリスは目を瞑り、続いて大きく見開いて見上げるとご機嫌ナナメになって不貞寝をしてしまう。悪くなると思ったのでとりあえず魚屋さんには明日謝りに行くとして、とりあえず食べようとして自分の分を焼いたところ、アリスはさっきの仕返しか、焼いたほうの魚を銜えて僕から離れたところで食べ始める。ねこと暮らす、その難しさにため息をつくのだった。
マーニ君がお仕事(冒険者って何してるんだろう?)に行き、見送りをしてからいつものように鍛錬というなの食材探しへ行くあ、逆でした。マーニ君も成長期だしタンパク質を摂取すべきだ。お肉は無理としても魚くらいはなんとか食べさせてあげたい。お肉に比べて淡白だが。タンパク質だけに。プクク。とくだらないことを考えつつ、最早馴染みの・・・但しうまく獲れたことはない川へと辿りつく。
そして相変わらず空振りが続き疲れきってバタンQするまでにそう時間はかからなかった。そしてこれこそが私のアドバンテージ、反省である。どこか根本的なところがおかしいんじゃニャいかなー。幾つかプランを考え、再び川に向かい合う。失敗と惜しいっを繰り返して・・・魚の軌道を予測して、無駄なく最速で打つべし!打つべし!疲れた身体は余計な力を手放し、一見かる~く見える一撃が、魚の側面を捕らえる。跳ね上がった魚が再び川に飛び込まないようにジャンプきゃっち!って余計に滑りましたがなんとか陸地へ乗り上げました。
まだマーニ君が帰ってくるまで時間が時間があるので、悪くならないよう石を集めて作った小さい生簀?に入れておきます。そしてその後なんとかもう一匹獲ったものの、それ以上は無理でした。まぁ二人(?)で食べられるからよしとしよう。
マーニ君が帰ってくるかな?という頃に、それ以上傷つけないように甘噛みで銜えてきたんだけど、ねこが銜えたの嫌かな?まぁいいや。言わなきゃ分かるまい。とりあえず葉っぱの上に並べて、疲れてたけど達成感を感じて上機嫌でした。だけに、ひとん家から盗ってきたと思われてフンガーってなり怒りを逆立てた毛にこめてそっぽを向いていました。しかし、しばらくするといい匂いが漂ってきて思わず焼かれたのをとっちゃったんだよね。純粋に飛びついちゃった。最も刺身でもない生魚を食べようなんて思ってなかったけど。はっ、夢中で忘れてたけど、頂きました、ご馳走様。まあるいお手手を合わせて軽く頭を下げます。久々のお魚美味しかったよ、とキレイに骨と頭だけが残っていました。
ねこらしくないアリスの行動の中で、印象に残っている姿の1つ。ご飯の前に手を合わせて頭を下げ、食べ終わったらもう一度。他のねこもあまり見たことないから、ねこの一般的な行動かはわからない。ただ、なんとなく心に残っていて、マーニ君も真似をする。それが後に食事の際の礼として広がっていくのだが、それはまだ遠い先のことである。




