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私はねこになる!?  作者: 夢辺 流離
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似た何か別のもの

 今回のお話はクリスマススペシャルに見せた何か。

私はねこに衣服を無理やり着させるのは反対なのですが、

小説の中でならあらかわいい、と思うくらい赦してくださりますよね。


 私は遠い目をしながら、なされるがままになっていた。


今日は村に伝わる催事の日なのだ。





「は~い、アリスちゃん、身だしなみを整えるわよ」


 朝食を終えると、悪魔は甘い声でそう言ったのだ。

突然のことにわけもわからずフリーズしていた私をするっとねこ掴みして捉えると、私は手足をバタつかせてもあまりにも無力となる。


 嫌な予感がして(野生になって感は結構大事なのだとわかった)、

幾度か逃げだそうとするのだが、その度に悪魔の手がどこかしかからスルスルっと伸びてきて私の首根っこを摘んでしまう。


    ええぃ!ギルドのマスターは化け物かっ!


 そんなやりとりを数回繰り返してどうにでもなれっとばかりに諦めた私はまず、お風呂に連れて行かれて(これは悪くなかった)、毛並みをブラッシングされた。


「ふ~んふんふ~ん♪ふ~ふふ~ん♪」


 悪魔エイファさんはホントご機嫌さんでブラシを往復させていて、今回は気のせいだったのかな?と思うほど、私も気持ちがよかった。ちょっと長めの毛がファサッとしていてツヤツヤで、たぶん前世の私よりも女子力?がある有様である。



 そして次いでエイファさんが取り出したのは・・・ねこ用服であった。

思わずビクっとなった。


 それは真っ赤な生地をメインに白のレースでところどころ飾られていた・・・いわゆるサンタ服、に酷似していた。

鼻歌交じりに私にそれを着せていく悪魔エイファさん。


「さっきからときどき変なこと考えてない?なんか前髪がピンってなるのよね・・・」


      あなたは片目の下駄妖怪ですかっ!?


 そして最後に真っ赤なとんがり帽子(赤地に白レース、とんがった先が折れていて白いボンボンがついている)を私の小さな頭にのっける。


「いや~準備が間に合わないかと思って焦ったわ~」


 なんて言うんだけど、ちゃんと耳だし穴がついているあたり、しっかり準備済みだったんじゃないか、と思っている。



 最早諦めて人形のような私の脇を抱えて膝に乗せるエイファさん。


「今日は、雨が降らなくて村が困っていたときにフラッと立ち寄って助けて行った旅人さんの命日なんですって。旅人さんは雨を降らせ、雷を轟かせたことで一時恐れられたけれど、その後生物の実りがよくなったことから畏敬の念をもって迎え入れられたらしいわ。なんで旅人がこんな派手な格好してたのかわからないけれど、その人に模した格好の人を一人選出して、その人を通じてその旅人さんに感謝を伝える行事なんだとか」


 なんで、私やねん!村から誰か出せよ


「今なんで自分が?って思ったでしょう?フフフ。なんでかしらね、村の人みんなが全会一致でアリスちゃんを選んだそうよ」


 私を人・・・ねこ柱にしやがったな!おのれ



 「まぁ、みんな悪気があったわけじゃないのよ?だから大目に見てあげてね」


 なんて言うけど、エイファさんもその一人だろう。

ムスっとふてくされるのも仕方ないよね?


「フフフ、そんな表情もかわいいわ♪」


 ああ、駄目だ、この人。この程度の抵抗じゃなんの影響もない。




 そして宴が始まった。


 私は”守護樹”と呼ばれる村の中央に立つ、巨大な木の根本に席を用意され、村人一同がその周りに並び、目を瞑って厳かに祈りを捧げる。


 ちょっと耳の後ろを掻いてもいいかな?ちょっとかゆいんだけど・・・。


 そして儀式が終わると、並べられたテーブルや椅子、そして盛られた料理(鶏の丸焼きなど)をめいめいが手に取り、談笑しながら静かな時を過ごす。


 私も平皿に盛ってもらったごはんをいただきます、合掌。


「あ、ねこちゃん、いた~」

「銀露の実、食うかな?」

「今日こそ、逃がすな!各自、回り込め~」

「おー!」


 せっかくのご~は~ん~!


 もみくちゃにされるのはごめんなのでしゃ~ニャしに逃げます。

テーブルの下を全力疾走すれば子供たちは動きが鈍り、大人たちの叱る声が響きわたります。


 しつこい子どもたちをなんとか撒いて、

一息つくと鼻の上に何かが触れました。ニャんだ?

思わす顔を上げるとふわゆらと真白い綿のような雪が漂っていました。


       おあふ!雪!雪ですよ!!


 目の前を舞い降りる雪片に、意識はフェードイン!

パンチパンチ!ワンツーもといにゃんツー!そいやぁ!




ぜぇぜぇ、はぁはぁ。

疲れた。


           危険。雪危険。



 目の前をチラチラされたら追わずにはいられないんだわ。

でも火照った体に雪が気持ちいい。

ああ、良いことも悪いこともどちらか一方だけってこともないんだな。


 村の方からは子どもたちの歓声があがり、


「こりゃ、ちょっとは積もりそうだな」

「お~い野郎ども!明日は村中の雪かき、雪下ろしだ飲み過ぎようが全員参加だ。」


「言うのおせーぞ」


 なんて言葉も聞こえてくる。


ふむ。サンタさんからのちょっとしたプレゼントじゃよ?


ぬぅぅううん、はっ!まぁ、かけ声とかいらないんだけどね


「おや、守護樹の様子が・・・・・・!?」


 Bキャンでもするんかい?


「守護樹様が輝いてる、綺麗~。」


 ふふふ、やっぱりここまできたらイルミネーションは必要でしょう。

アルルカナンで火を光へと変換しているのだ。


 その輝きが、エイファさんの顔色が悪いのを照らしていた。



 あ、この珍事の火消しに苦労させちゃう?ごめんねー。

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