御使い 2
「この星の廻りを正すのが表の使命とするならば、その妨げとなるものを排除することが裏の使命。いや、表も裏も関係はないな。アプローチの仕方が異なるだけで、どちらもこの星の営みを守るための仕組みに他ならないのだから。そしてそのためにこの星の森羅万象を見定め、評価するのが我らの役目」
ねこの表情が分かるわけではないが、クロエは自らの務めに真剣なような気がする。
「アンタがそういってるだけでしょうう!?それが真実だっていう保証はないわ。そもそもアンタとアリスが戦う理由はないじゃない!」
カノは精一杯反論を試みるが、表情に余裕がない。
「生環の儀によりアルルカナンを均した後先代の残滓と共に次代の御使いが産まれる。その際にそういった情報もまた引き継がれるのだ。四精に我らへの極力不干渉が代々いい遣わされているのは、我らに下手な先入観を与えないため、我らの判断への介入を防ぐためだ。その掟こそが何よりも雄弁に語っている」
「アリス様、そうなの~?」
スヴィプルの疑問に私はフルフルと頭を横に振って答える
そんな記憶または記録は私にはない。
「歴代の御使いはこの星の生物・・・主に人間だが・・・に対しこれ以上人間達の増加を許してはならないと思いつつもそれを実行に移さなかった。その意思を生還の儀の際に放ったならば、奇病が発生するのか天災に見舞われるのか詳細まではわからないが、人族減少という結果は揺らがなかっただろう。故に"悪意の波動"は巡らせないよう、次代の御使いを為すために使った。だがそれはとるべき行動を歪めた結果として現れた代々の"悪意の波動"が御使いを通して蓄積していったのだ。そして先代の御使いはそのことに気づいた。このままでは"悪意の波動"の量が溢れたならば未曾有の危機となることに。毎回少しずつ人数を減らしたとして人が途絶えるまではいかなかったろう。だが、積み重なった悪意によって一度人族が滅べば無論それまでだ。先代は解決のために相当悩んだ。そしてある種の賭けに出た。人族の発展にともない、御使いの交代のサイクルは短くなっていったが、それにしても先代は短命過ぎた。まだ世界のアルルカナンの補充がそれほど必要でないうちに生還の儀を行い巡らせる量を搾り、代わりに御使いを2匹創造したそれが俺とお前だ。元来、御使いは完全な生態として産まれるにも関わらず俺達は2つに分けられたことで不足を抱えてしまった。お前が"記憶"を持たないのもそのせいだろう。」




