昔話 上
「まったくもう、強情なんだから!」
エイファさんが物申すもマーニ君は了承せず、説得は諦めたようだ。
お願いです、もうちょっとがんばってください。多分、彼女もそろそろ村に帰らないといけないんだろうな。背を向けて村へと歩き出す。
歩みに合わせてピョコピョコ揺れる・・・ポニーテール。気になってしょうがないです。見上げるの顎痛いけどね。いくらか進んだところで私がついて来てるのに気づいたエイファさんは屈んで私を抱っこした。
「お見送りありがとうね、それともあのご飯で嫌気がさしたのかしら?このまま私の家にくる?」
コロコロと笑うエイファさんを間近で見ることになったが、ワーオ!美人さんですよ!目が寝てるの?ってくらい細いけど、整った顔が冷たく見えないふんわり系。
「マーニ君ね、本当は名持ちの、貴族なのよ。」
唐突に語られた内容に思わず耳がピクッと動く。
「私も村に着たばっかりだから詳しくは分からないんだけどね、マーニ君のお父さんは偉大な功績を残したらしく、国から苗字を与えられて名誉貴族になったそうよ。国王様からも気に入られてとても重要な土地を任せられるほどだったそうよ。ところが、マーニ君のお父さん、セグルダさんは土地の管理なんてできないからって、こんな田舎くらいしかない下級貴族の所領をもらったみたい。セグルダさんは貴族らしくない人で、村にもよく来て一緒に畑仕事をしたり、お酒を飲んで潰れてたり。それでも不作の時には国と交渉して減税を認めさせたり、村人にとってはとてもいい領主だったようよ」
ふむ、立派なお人だったのだな。それでどうなったんだろう?
「国王様は、セグルダさんを気に入っていて、あれこれとしていたみたい。そのうちの一つがマーニ君のお母さん、シグノーさんとの婚姻の仲立ちだった。シグノーさんは元々病弱だったらしいけど幸いセグルダさんとは中睦まじく悪い縁談ではなかったみたい。ただ、シグノーさんの実家ロゼナリア家では、国王からのほぼ命令といっても過言ではない要請に表面上したがっていたけど、こんな田舎の下級貴族とっていうので反発してたみたい。セグルダさんには相当無理なことを言って困らせたりしてたんじゃないかっていう話ね。義理の親からの無茶な要望にもなんとか応えてたセグルダさんも村からもっと税金を搾り取りなさいなんて言い分にだけは決して首を縦に振らなかった。」
私は夢中になって話を効いていた。こんな身でなければ思わず拳を握りこんでいただろう。つかさ、国王様とかいたんだね・・・。