第九
第九
今年も年の瀬が近づいてきたのは前篇「大掃除」でも述べたが、大晦日が近づくにつれてベートーベンの交響曲第九番、いわゆる第九が流れる頻度が上がる。
今年は別の意味で流れている第九もあるようだが、やはり年末には第九が似合う、と思う。
ちなみに、数回第九の演奏会に出演したことがある。もちろんコーラスだ。高音域が大変なソプラノパートを自分では楽しみながらやっていたつもりだが、さすがに本番前のリハーサルなどの連日練習には堪えた。
当時大学院生だったのだが、学校に行くのと練習会場の移動でくたくたになった。しかし、本番の舞台で歌いきったあの感動は忘れられない。 その感動をまた味わいたいと思い、もう一度募集のあった第九の合唱団に応募した。
しかし、みなさん目的が多少ずれていてもある一つの目標にむかって練習しましょうという方針であり、さらに指揮者と違和感を感じたこと、練習会場が毎回違って完全に疲れきってしまった。
本番の舞台に乗ったときにもあの感動はなかった。ただただ、やりきった、という感覚だった。
やはりいる場所、目的、重ねた回数、様々な要素の違いがあって感じた思いは違うのだろう。それでも第九はまた歌いたい、また舞台に乗りたいと思う曲である。
コーラスももちろんいいのであるが、ソリストになってみたいなとか、オーケストラの最高音域を駆け上がるピッコロを吹きたいなとかも思ってしまう。
ただ、一度目には暗譜できた楽譜が二度目は無理だった。記憶力はやはり落ちるものかとがっかりするものである。




