一撃必殺
倒れたrooooが担架で運ばれていく中でも収まらない歓声。 それほどまでの試合だった。
お互いが意地をかけてぶつかった結果の決着。
これならばrooooがダンジョンへ誘われるのもそう遠くはないだろうとアルは考える。
そしてrooooの姿が消えLocolocoもステージを降りていく姿が目に入り、ふとこっちを見る。
「…?」
そして納得したような顔をするとそのまま控え室へと消えていった。
「ん? どうしたの?」
「いや…なんでもない」
「ふーん。 あ、私試合だ行ってくる」
「お前控え室とかで準備しなくてよかったのかよ…」
だいじょーぶだいじょーぶと言ってそのままステージへと向かっていく隠れ桜を見て、はぁ…と今日何度目になるか分からない溜息をつくアルだった。
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正直なところ大して自身の心配はしていなかった。 負ける気なんてしないし攻撃を受ける気もなかった。 場所さえよければrooooにだって負けることはないと自負している隠れ桜だった。
そしてステージに立ち目の前の敵を見る。 女性を包むのは軽装備、腰には刀。 つまるは戦士の斬り型、速さを重視し中距離を意味し近距離を苦手とする上級職。
だけど…、
「関係ない…」
首元まで下がったマフラーを口元まで戻し、ぼそっと呟く。
「…」
相手に聞こえたのか無言の殺気が飛んでくるがそ知らぬふり。
「? 試合を開始するぞ。 両者いいか?」
その言葉と共に刀を抜く相手と腰に挿してある刀に手を添えるだけの隠れ桜。
「では! これより第13試合、xマナx対隠れ桜の試合を開始する! 始めっ!」
その合図で先に動いたのは対戦相手のマナのほうだった。
「その余裕、潰してあげる! 先手!」
発動。【アクティブスキル:見敵必殺】
「ふーん、疾速」
発動。【アクティブスキル:ダッシュ】
相手がスキルモーションに入るか否かの瞬間。 隠れ桜のスキルが発動する。
「がっ!?」
「ふっ」
「く…」
一瞬で詰められ、抜いた刀の柄でボディーに強い一撃を入れられるマナ、ヒットアンドウェイのように一撃いれるとその場を離れる。
「どうした? …なぜ続けない?」
「…そんな挑発にはのらねーですよ」
「……」
「軽装備の斬る型の戦士職には近距離に対する唯一のカウンタースキルがあることぐらい知ってます」
「く…」
「なので私はヒットアンドウェイをさせてもらいますね」
そう言ってその場を消える隠れ桜、次の瞬間にはマナの左横に現れその刀を振りぬく。
「く!? しゃべっている途中に!」
うまく篭手で攻撃を流す。
「戦場でそんなこと言うなんて甘いですね」
次に聞こえる声は右から。
「どうしたんですか」
後ろ。
「攻めてこないんですか?」
後ろ。
「戦士の名が泣きますよ」
「く……黙れ!」
一拍あけて数メートルの距離を開けもとの位置に戻る隠れ桜。
見据えるのは怒気を放つ戦士へ。
「でも、そうなったら終わりです」
「終わるのは貴様だあ!」
刀に手をかけ体勢を低くする隠れ桜。
「瞬激にて敵を…」
「瞬殺」
発動。【アクティブスキル:暗殺】
マナが最大の技を放とうとするがそれは続かなかった。
「そんな大振りな技、こちらに隙が出ない限り当たるわけないでしょう」
倒れ付すマナの隣に忽然と現れる隠れ桜。
「私が負ける筈がないじゃないですか」
そう言ってステージを降りる隠れ桜の背に審判からの勝利の声が届いた。
だがそんなことは彼女にはどうでもよかった、一番に伝えたいことがあるのはあの人へ。 そして言ってほしいことがある。
その人の場所まで行きずれたマフラーを定位置に戻し一言。
「終わった」
「そうかい、お疲れ様」
そう言って彼はほしい言葉をくれて優しく微笑んでくれた。
_to be continued.