基礎と馬鹿といつもの事
「疾っ」
「よっ」
「覇っ」
「ほ」
「ハァ!」
「とっと…」
姿勢を低くした隠れ桜が地を縦横無尽に駆け巡り対象である狐を狙い討とうと手に持つ刀で斬撃に打撃、その鋭い脚から蹴りを放つがアルはそれを紙一重で避けるのを繰り返す。
「いい加減…ッハ、…当たれこの駄狐」
「なんちゅう横暴な…」
一度距離をとった隠れ桜が地面擦れ擦れに屈みスキルを放つ。
「疾速」
発動。 【アクティブスキル:ダッシュ】
ただ発動プレイヤーの速度を上げるスキルは一度アサシンが使えば別のものに変わる。 ショートカット言語キーで発動したスキル効果は瞬時に現れ隠れ桜の姿をその速さで消す。 DEXの高いアサシンが移動スキルを使うと早すぎるのだ。
「くっ…」
バックステップを踏んでも意味がないと判断したアルはすぐさま伸ばした棒を前に構え防御体制に入りスキルの発動のために構える。
-ザッ-
「右か! 壁ぇ!」
発動。【アクティブスキル:マジックバリア】
アルの言語キーにより発動した半透明な魔法障壁が現れると同時に、
-ガァン!-
金属と金属のぶつかったような音がし右手で刀を振りかぶった状態で停止している隠れ桜と目が合う。
「…」
「…」
その体勢のまま数秒のまま停止した後、
「あなたの反応速度は魔法使いの枠を逸脱してる……チート…」
「チートじゃねえよ!」
そう言って刀を下ろし首元までずれた赤いマフラーを口元まで戻すと刀を仕舞う。
「ん…」
隠れ桜は視線を落とし小さくアルに指示する。 いつものを出せと、早くしろと言わんばかりに主張したその尻尾を見てアルは一つため息をつく。
「ん、て…まぁいつものことだからいいけどさ。 創造」
発動。【アクティブスキル:クリエイトディメンション】
そう言って発動したスキルはアルと隠れ桜の足元に空間が歪んだようにエフェクトが現れた後には大きな厚いござが現れる。
「これだから魔法使いは私に優しい」
「なにがだなにが」
そう言ってすでに座りインベントリから出したであろうお茶を啜りながら言う隠れ桜にアルは苦笑いするしかなかった。
「よっと」
隠れ桜のとなりに腰を下ろしたアルもインベントリから飲み物を出して口につける。
「いつものことながら周りはがんばってらっしゃる」
「あなたがだらしないだけ」
「桜も大差ないけどな」
「…ふ」
「てめぇ…」
このフィールドに広がったよいうにあちらこちらにいる生徒は2人もしくはそれ以上のチームを組んで基礎練習やスキルの動かし方、発動の潤滑さや速度を速める練習などを行っている。 アルたちも当然参加しているのだが場所はいつもフィールドの端により練習していた。
「おーおー、柿ピーのやつⅣクラスの…たしか435相手に善戦してやがるぜ」
「んー」
どうでもよさそうに目を細めながらお茶を啜る隠れ桜にお前は…と思わずにはいられなかった。
「そういえば狐」
「ん」
「朝、八英雄のTTYMSと一緒に来たの? 噂してた」
「あー…やっぱ噂立ってんのか、此処の奴らレベ上げ以外暇つぶしねぇからってそういうの広めるの早すぎだろ…、めんどくせぇ」
「人気者は絡まれちゃうかもね」
他人事のように言う隠れ桜にやめてくれと嫌な顔をする。
「フラグ立てんなよ、お前のそれはよく当たる」
「ふ…アサシンの直感さすが」
「義理堅いアサシンなら何とかしてくれ」
「あなたに立てる義理はない」
「……」
「落ち込まない落ち込まない、噂をすればほら」
「えぇ」
お茶を啜っている隠れ桜の目線の先にはⅤクラス、つまるところ500レベ台のプレイヤーであった。
「よう、落ちこぼれとはぐれ猫」
ニヤニヤした顔で近づいてきたそいつはアルと隠れ桜を見てそう言うが、
「またてめーか暇人」
「暇人乙」
反撃を返される。
「てめぇら…まぁいい今はそんなことを言い合うために来たんじゃない、用があって来たんだ」
隠れ桜がアルを指差し、アルが首を振り隠れ桜を指差す。
「私か…!」
「お前じゃねえ!」
「しょんぼり」
隠れ桜が表情も変えずにしょんぼりというのをスルーしつつ。
「んで何かようか?」
「ネタ振りされてこの仕打ち」
「あぁ、お前TTYMSさんに会ったんだろ? どうだった?」
「どうだったといわれてもなぁ…とりあえずは気さくな人だったよ」
おぉ…とそんな情報に感動するそいつことroooo、アルや隠れ桜はローと呼んでいるこいつは戦闘馬鹿だった。
「武器は!?武器は持ってたか?」
「いんにゃ、持ってなかったぜ。 先のダンジョンの攻略の結果を持ってきただけらしいから武器はいらないだろうってさ、目立つのもあるし」
「あー目立つよなぁ確かに。 くぁー! それにしても戦ってみたいぜ!」
カンストキャラ相手になに言ってやがると思いながらアルは言葉を返す。
「とりあえずお前は600レベになるしかない、500台で600に勝てるのはすげえが、そのうちスキル性能やステータス性能に差が出て負けるぞ?」
その言葉にrooooは自信気に胸を張る。
「はっはーん、悪いがアル、俺は一足先に先日600台になってしまったのだ! どや」
そう言ってステータス表をオープンにするroooo。 そこには、
名前:roooo
Lv:600
職業:ページ
「んなあほな…」
「なにそれ怖い」
お茶を啜って話を聞いていた隠れ桜もさすがに驚き表を見る。
「いやーババリアさんと漆黒の霧さんに訓練つけてもらったときは死ぬかと思ったが結果がでたぜ!」
その言葉を聞いてアルと隠れ桜の顔が引きつる。
「おいおい…お前馬鹿だろ」
「戦闘馬鹿乙」
「なにその600に達した友人に対する反応…」
「お前だし」
「お前だし」
そんな友人もって嬉しいですよ!と分け解らない事を言うrooooを片目にまじまじとステータス表を見る二人。
「そういや、お前らレベルいくつになったんだ?」
ステータス表を消しrooooが問いかける。
「334だ」
「349」
「え」
「…ふ」
「お前ら仲いいな…」
まぁそれにしてもとrooooは続ける。
「アルはほんとレベル上がらねえな、1年間平均50レベでお前はまだ14だっけか?」
「そのとおり」
「私はあなたと一緒の訓練で1年で64上がった」
「…ちっ」
「ん?何か言った?駄狐」
「うるせえよ、駄猫」
「334の雑魚ちゃんがねぇ…」
「あ?」
「なに?」
唐突に始まる短い言葉の応酬にrooooも苦笑い。
「おいおい喧嘩するなって…」
と言うが、rooooの発言でこうなったので、
「手前が元だろうが」
「あなたが原因」
「黙ってろ!」
「黙れ」
二人から罵られることは必然だった。
「ああ、俺が悪いの…」
まったくもっていつもの事だった。
_to be continued.
さて書いてみて何ページだ?4ページから5ページ目指してけど雑魚い私にとってはそれも苦難、3ページしかいかねえw。誤字が多いのはいつもの事、見直してるんだけどね!