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間章-1

 とある辺境のとあるお城での話。


「シアノシアノー」


 とある部屋にて背もたれのある大きな椅子に座った美しい銀髪を持つ少女が目の前の書類に顔を埋め髪を乱しながら隣の本棚の整理をしているメイド服の女性に話しかける。


「今回の件はどうなったのじゃ? また記憶石メモリアルストーンを破壊されたのじゃろ?」

「ええ…そう聞いております、お嬢様」


 手を動かしていた女性はその手を止め言葉を返す。


「今回の件は向こうの最大戦力となるTTYMSという人物も参加していたようで…サイスン殿では荷が重かったようで…」

「なるほどの…あやつは突っ走るしか能がないやつだし仕方ないのぉ」

「そうは言ってもサイスン殿も4王とは言わずとも有象無象よりは力がある存在ですし…」


 その言葉に、そうじゃのお。 と返す少女は書類から顔を上げ目線だけが虚空をさ迷う。


「まぁ今回は仕方ないから仕方ないのじゃ!」


 ぶーと口を膨らませて女性を見る少女の目はそんなことはどうでもいい暇だと物語っていた。 彼が出て行ってからはいつもの事だった。

 彼女は一息つく。


「そうですねぇ、彼が出て行ってからもう1年と3ヶ月が経つのですね」

「そうじゃ! そのとおりじゃ! あやつはこの城が暇じゃと言いおって…そしたらその日の夜にはもう出ておるじゃと!? どんだけ早いのじゃという話じゃ!」

「あははは……ですねぇ」

「本当にあやつは…」


 と、うんたらかんたらかんたらうんたら……。

 そんな少女をみたシアノはもう一息ため息を吐くと話をそらすために手を打つ。


「さてさてお嬢様? その話は終わりにしましょう。 先日おいしい紅茶の葉をアビス様から頂いたのでケーキと一緒にいかがですか?」

「ケーキじゃと!?」


 紅茶は砂糖いっぱいがいいのじゃ! と言うお嬢様を見てシアノは笑顔で頷く。

 そんな彼女を見て香りを楽しむものですがお嬢さまですし。 という顔で彼女は顔を下げる。

 

「では用意してまいりますね。 失礼します」

「うむ!」


 さてさてお嬢様には一時でもあの人のことを忘れて楽しく過ごしてもらうためには、まずおいしいお茶とケーキでも頂いて貰いましょう! とシアノは腕を捲くるのであった。









■□□■








「ん?」


 誰かが自分の噂をしたような気がしてふと日が落ちた空を見上げる。

 もうすでに自分があの場所を出て1年以上が経った。 どうせ噂と言うよりも暇だとあの姫さんが駄々をこねて侍女になにか言っているのだろうと思う。


「さてさて? どうして此処にいるのかな? 今はパーティーの真っ只中だったはずだが…」

「そうですね…」


 そう言ってベランダから見ていた目線をはずし後ろを向く。


「聞き飽きたんですよ、ああいう言葉に…」

「そうかい」


 そこに立っていたのは綺麗なピンクのショート髪に胸元が大きく開いた白と赤をベースとしたドレスを着た16歳ごろの美しい少女がそこに立っていた。


「それに…あなたとお話がしたかったので…」

「ふーん、そんなことばっか言ってっと嫉妬で殺されちまうぜ? 俺が」


 少女の向こう。 いまだパーティーが続いている部屋からこちらを見ている男性陣の視線を受けそう言う。

 その視線に少女も気付き苦笑いをする。


「すいません…」

「まぁお前が誤ることじゃないさ、カッカッカ」


 そう言ってから笑いし、手で男性陣にむけしっしと手払いする。


「アハハ…」


 その行動を見て流石に苦笑いする。


「こん時ぐらい雰囲気出したほうがいいだろ?」

「あ…」


 そう言って頬を染める少女。


「カッカッカ、可愛いやつめ」

「あぅ…」


 照れる少女の頭をこねくり回す。


「お前はきっといい大人になる、俺が大人にしてやってもいいがそれじゃあお前がもったいない。 俺みたいな人間・・じゃお前らとは合わないんだよ」

「でも!」


 そう言って少女は青年の胸元の服を両手で掴む。

 逃がさないように、逃げてしまわないようにと…。


「お前が望もうと周りがな」


 そう言って目を向ける先にあるのは少女の背中にある美しい二対の白翼。

 少女は人間ではない。 少女が持つその翼の意味は落とされた天子アシットメイヘルと言う名を持つ神々の落とし子とされる癒の種族である。


「そんなことなら! 私は私になど生まれたくなかった…」

「アホぅめ」

「あぅっ」


 そんなことを言うあほたれな子にデコピンをかます。


「そんなことを言うな、そんなことを言ったら俺が君を助けた意味はどうなる? お前がお前でなくてはそもそも俺はここになどいなかった。 この国など救わなかった」

「うぅ…」

「お前はお前の道を歩いていけばいいさ、ここはそのほんの一過程に過ぎない。 それに初恋は実らないってよく言うだろ?」


 まぁこっち・・・の世界でそんな言葉があるのかは知らないが。


「そんな言葉初めて聞きましたよ…」

「ありゃりゃ、まぁそんな言葉があんだよ」

「嫌な言葉ですね」

「こりゃ手厳しい」


 そういって少女は服から手を離し手を掴む。


「なら最後に一緒に踊ってはくれませんか?」


 そう言って微笑む少女の後ろに写るのは様々なご婦人が男性と踊っている姿が、綺麗なメロディーも聞こえてくる。


「喜んで…」


 そういって手を少女の手を引く。


「でもお前、絶対最後とか思ってないだろう?」

「ふふふ…さて? どうでしょうかね?」


 そう言う少女の顔には逃がさないと言う様に満開の笑顔が咲いていた。 いやただ純粋に今を楽しんでいるだけなのかもしれないが…いやはや最初とは比べ物にならないほど成長したなと感慨深く思う青年だった。




 ここは空中の箱庭ソラル。 神の落とし子たちが住まう伝説の空に浮かぶ都。 一度落ちたこの都を救った者がただ一人、彼は重力の支配者グラビティーティアスと呼ばれた。









■■□□

 


 





「それで? 今回の見学はどうだったんだ」

「それそれ! 私も気になるわ! あのTTが気になる生徒を見つけるなんて珍しいもの」


 模擬戦が終了し社長の間を訪れたTTYMSに向かって放たれた第一声がそれだった。


「はぁ…? どうだったといわれても所詮学生レベルとしか……。 というより何でここにいるんですか? ゼクト」

「暇だったからねー」

「まったくあなたという人は…」


 あはははーと笑う少女もまた8英雄の一人であるショートボウ使いテンペストであった。 ボウ使いとは言っても多用するのは蹴り技であり、素早い動きや風を多用するといった身軽な近距離職であり、そして風を愛する民として有名なエルフの種族でもある職業だった。

 緑をベースとしたワンピースのような上半身から下に向けて下半身は動きやすいように左右に開いており前は短く、後ろはなびくように長いといった独特の格好をしていた。

 そんな少女が蛍火の机に座り話しかけてくるのでそりゃ見えるもは見えるのでTTYMSはため息をつく。 エルフは総じて男性も女性も美しいからさらに困る。 彼女は可愛いといったほうが似合うが。


「ゼクト…女性がそんな格好をしてはいけませんよ。 あなたは特にほかより目を引く存在なのですから」

「TTはそればっかだなー」


 とむすーとした顔でゼクトはぶーたれる。


「別にいいじゃんか、ゲームではパンツキャラとして有名だったんだし。 こっちも向こうも格好や見た目に対しても大差ないよ」

「そんなことを言うからお前はあほな奴らに襲われかけるのだ」

「あぁ……」


 蛍火の発言にゼクトは嫌な顔をする。

 それも一度や二度ではなかった、ここに来て初めの頃は見た目もよかったためか、少し力を持ったやつらが自分の欲求を満たすために襲ってくることが多発したのだった。 まぁ全部返り討ちにしたのだが。


「まぁでもだいじょーぶだって」

「そりゃお前の実力からして大丈夫だろうさ」

「ですね。 それで話は最初に戻るのですが、学生レベルといえど特筆した人物はいくらかいましたね」

「ほぅ」


 蛍火が作業をしていた手を止め目線をTTYMSに向ける。


「まずはレベル600、人間族でページのroooo。 彼は類稀なる戦闘センスを持っていまして…まさか私が推薦したLocolocoを600なりたてで善戦するとは思ってみませんでしたよ…」

「roooo…あぁ、ついこの間べべリアと漆黒の霧に稽古をつけてもらってたやつか、そのような申請が届いていた」

「てかTTが押す人ってダンジョン入り確定の人でしょ? それを600なりたての610スキルもないやつがよく善戦で来たね…」

 

 覚えておこう。 と書類になにやら書き始める蛍火を横目に見つつ話を再開させる。


「次は、349レベのアサシン、獣人の隠れ桜という女性プレイヤーですね。 速度だけでいうなれば私より、ゼクトより早いでしょうね。 まさにアサシンです」

「種族補正もあってDEXの極振りかよ…」

「ふむ、使えるようになるのは?」

「単体では使えないでしょうが…600後半の魔法使い、魔戦士とペアなら間違いなく実践レベルで使えますね」

「極振りこわ…」


 体を抱きしめるゼクトは嫌な思い出でもあるのか…とりあえず放置しておく。


「まぁ以上ですかね? 目に付く生徒というのは」

「お前が気になったという生徒はどうだったんだ?」

「……私が先ほど言った中に含まれているとは思わないのですか?」

「…なに、感だ」


 はぁ…とため息をつくTTYMSは正直な話を言うと異例な二人を提示したくはなかった。 こっちも感だが何かめんどくさそうなことになりそうな予感がしたから。


「まったくあなたには適いませんね。 私が気にしていた生徒はアルという獣人族の334レベ魔法使いでありながら防御スキルが苦手…と言うよりあれは習得していませんでしたね」

「習得していない…? PT専用キャラだったと言うことか」

「わかりません。 そして彼の相手をしていた人間族のルサルカも魔剣士でありながら放出系の攻撃スキルが皆無と…こちらの理由は見当が付きませんね」

「魔剣士でスキルが使えないって致命的じゃない」

「しかし彼らにはそれを補う技術があった」

「…なるほどな」

「前世で培った類稀なる戦闘センス…か。 引きこもりの私には縁のない話ねー」


 前世で培った戦闘センスはこちらでは大きく生きた。 剣道をやっていたものが戦士をやればその技術はスキルとキャラクター補正種族補正をあわせ凄まじいものとなる。 これは何かに精通していることでなくともある程度運動やスポーツをしているものにとってはほかのものより大きなアドバンテージとなったのだ。


「それに、魔法使いの彼は攻撃特化のFUフォースユーザーでしたしね」

「FUですって…?」

「こんなところにそんな逸材が眠っていたか…なるほどTTYMSが目をつけるだけあるな」


 ゼクトは目を見開き、蛍火はなにか思ったのか嫌な笑顔をしていた。


(はぁ…だから私は言いたくはなかったのですがね…。 ゼクトはFUに深い思い入れがありますし…蛍火は何を思っているのか分かりたくもないですしね…)


 もう何度目になるか分からないため息をつくTTYMSであった。





_to be continued.


キャラの名前はほぼ今までやってきたオンゲのフレからとってますwwww

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