プロローグ
「…どういうことなんだ?」
高梨真昼は自分に起きた現象に思考が追いついていなかった。 なぜなら答えは簡単、つい先ほどまで目の前でやっていたオンラインゲームの自キャラの格好をしている自分が暗くなったディスプレイに薄く写っているのだから。
数秒の時間を有し思考が少しだけクリアになる。
「はあぁぁぁ!?」
「どうしたのお兄ちゃん!」
彼の声を聞いて部屋に突入してきた妹に一言。
「あなた誰?」
そして彼の非現実的な現実は幕を開けた。
Lillian Online、それは一般的なMMO型ゲーム。
内容は簡単、聖女リリアンが魔を封印したという大地を目指す冒険者たちの物語、その目的は簡単聖女リリアンの封印が解けかけ、魔があふれ始めている…それを倒し封印しに行くというシナリオの元のアクション型RPGだった。
このシナリオは会社側が製作したファンタジー小説を基にしており(税込み1540円全3巻)、今から1500年前、魔が蔓延り大地が統一されていない無法地帯だったその舞台にそれぞれの過去を持った冒険者が集まる、その中の一人が聖女リリアンである。
彼女たちは魔を駆逐し民を集め村を作りその村はやがて町へ国へと変化していく、それがゲームでの始まりであり、経過であり、最後の町となる王都であった。
その一方主人公たちは魔の発生点である此処の中心を発見し魔を統べる王の存在に気づき討伐を試みる、何度の敗退と仲間の死別、裏切りなどを体験し聖女リリアンは魔を統べる王を封印することに成功する。
そして時代はすぎ1500年後、その封印が解け始め新たの冒険者たちが過去の過ちを繰り返さぬため、リリアンの思いを守りため立ち上がるというところからオンラインゲームが開始される。
最大レベルは700、職業は大まかに別け、戦士、魔法使い、聖職者、狩人に別れ、そこから個別に専門職へと分かれていく流れであり、職業とは別に種族値と言うものがあり、人間なら全能、獣人なら戦闘、森精霊なら敏捷、などといったようなそれぞれの使いやすく職にあったものというものが存在しゲームバランスを保つものとされていた。
そんなありふれたオンラインゲームが突如として日本の一部のプレイヤーたちの仮想キャラを自身として実体化させたことはあまりにも世界には衝撃が大きすぎ1ヶ月たった今でもその熱は収まることを知らず当の本人たちも慣れない体で四苦八苦しているのであった。
例外にもれず高梨真昼その人物も…。
「浮かない顔してるな?真昼」
それは本当に浮かない顔をして中学へと登校している真昼に友人から投げかけられた言葉だった。
「憂鬱なんだよ、陣。 もう家に引きこもらせてほしいもんだ、うちの親と妹も馬鹿ばっかり言いやがって…」
「ははは…」
何が引きこもりだこの変人が!だ…こっちの身にもなれと言う呟きを零す友人にその友人も苦笑いしか出なかった。
つい1ヶ月ほど前に起きた前代未聞の超ミステリー事件、話を聞くだけなら信じられないほどファンタジーでご都合主義な事件の内容は簡単、ゲームの世界の住人が外に出てくると言うものだった。
信じてはいけないはずのものをこうも簡単に信じるのは目の前にその被害者がいるからだろうと友人は内心でため息をつく。
こうもなぜこいつは巻き込まれやすいのか…と、目の前に写る友人は、友人が言うには獣人という種族らしい、頭のてっぺんにはきれいな黄金色の耳が生えており、お尻のほうからはふさふさ尻尾が1本、髪は金髪、目は銀と言うまさにファンタジーな存在で、そんな存在が普通に学生服着て首に桜色のマフラー巻いて今年で卒業というのだから現実味を帯びまくっている。 納得せざる終えないと彼は内心で思う。
そしてふと目が合う。
「なに見てんだよ…珍しいのはわかるがもう1ヶ月だろ?いい加減慣れろよ、俺みたいな獣人はさほど珍しくはねえだろ、翼やら角やら生やしたやつらもいるんだからよ」
「いやまぁそうだが…お前も負けちゃいない」
「ぬぐ…」
「そういや真昼はそのゲームのスキルとか使えるんだろ?」
昨日テレビのニュースでやってたと言う彼の言葉に使える、と言うと陣は空を見上げて、
「いいなぁ!俺もそのゲームやっとけばよかったぜ!そうすれば真昼みたいに鞄持たなくてもアイテムボックスにしまえるのに!」
「インベントリーな」
「そんなことはどうでもいい!」
そんな真昼の反応にくわっと反応した陣は豪語し始める。
「魔法はみんなのロマンだろ!?」
「あーそだね」
そんな陣を適当に流しながら登校していく真昼はもう慣れたものだった。
そしてその日のお昼過ぎ学生が昼休みを楽しんでいる中ひとつのクラスは男女関わらず溢れていた。 真昼のクラスである。
「いっつも見てもかわいいよね!狐耳!手入れしてるの?」
や、
「魔法使って魔法!」
や、
「ペットになってください!触らせてください!」
など、男女関わらず1ヶ月前からこんな感じになっているのである。 まったくもって面倒と真昼は言い、まったく持って羨ましいと陣は語った。 そんな恒例とかした時間に一つの変化が現れ、それは全体へと広がった。
「みんな、自分の携帯を見て!後誰かテレビつけて!」
誰が言ったかわからないがその声は響きクラスに1台あったテレビがつき目線が集まる。 そこには、
『こんにちはおはようございますこんばんは。 Lillian Onlineのキャラクターが自身に投影されたあなたたちは不幸に幸運にも選ばれ選んでしまった人間たちだ、そしてそんな君たちには突然だがやってもらわなければ…いやいや、やらなくてはいけないことがある』
そんな声が幾重にもなって響いた、それはテレビと最初の声で携帯を開いた生徒の携帯から発せられるもの、だが真昼はそんなものは微塵もどうでもよかった。 目に映るのはテレビ画面、そこに写るのは、Lillian OnlineのGMヴァニスタその人だったから。
『君たちがこちらの世界に生まれ変わってから1ヶ月窓が開きっぱなしでようやく閉まったところだ、世界が違うところに異世界人がたつと言うことがどういうことか教えてあげよう。 それは簡単に言えば君たち自身が環境破壊の一端となる…といえば言いかな?君達も知っているものもいると思うが君たちは酸素を吸って生きているわけではない、魔力を吸って魔素を吐いている。 向こうがそうだったのだからこちらもそうだ、どちらもリアルなのだからね?』
そこまで言われて真昼はとある公式に思い当たる。
「魔力はどこにでもあり万物の元となるもの、魔素はその残りかすであるが…その存在は害をなす…」
テレビの声と真昼の回答にクラスも静まり何もかもが停止したようになる。
『今ので解った人もいるかもしれないが、正解発表~。 魔力はどこにでもあり無害なもの魔素は異世界人から吐かれ微量ながら人体に有害な性質を持つ…こちらで言えば…そうだね、麻薬と一緒かな?向こうでは魔素を吸収し吐く幻想世界樹があるがこちらにはない、それがどういう意味を持つかなど簡単なはずさ』
その言葉と共に真昼へと視線が集まる。 なぜ黙っていた?なぜ知っていたのに…と言うものが。 だがそれすら相手にしない真昼は画面を見続ける。 少しでも多くの情報を得るために、これはなにかもっと大事なことがあると言う確信を胸に秘めながら。
『だからこそ君たちにはやらなければならないことがある。 そう、それは簡単、3ヶ月そちらに現れるアルスダンジョンの攻略だ、ダンジョンといってもそのものが現れるわけではない、扉が現れるだけだ。 そして朗報、その地には幻想世界樹がある、もちろん魔物も攻めるのはこちらだ、ならば後はわかるだろ?』
つまりそのゲートは一方通行ではない、向こうもこちらを侵略しようとやってくる…というわけであり、なぜプレイヤーたちが実現したかと言うことも向こうに行けば何かしらの理解は得れると言うことだった。
『居場所を追いやられたもの同士の争いだ…3ヵ月後の奮闘に期待しているよ』
その言葉と共に写っていた画面は砂嵐となり携帯画面はいつもどおりの待ち受けへと戻っていた。
「居場所を追いやられたもの同士…?」
そして数日後、早くもその言葉の意味を理解することができた。
テレビでの臨時ニュース。
『君たちの国民権はなくなった、君たちはフィクションへと帰るのだ、ダンジョンというものを攻略してな』
国で発表されたそれは甘くも後に痛い目を見ることとなるものだった。
_to be continued.
設定増やしすぎて自分でわけのわからんことに
というかほって置いた小説を全部変えて書き始めた小説初回掲載日が結構前に・・・