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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第五章「パラティヌス生活」少女編 西暦19年 4歳
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第五章「パラティヌス生活」第六十四話

「あ、小鳥。」

「本当ですね。」

「…。」

「アグリッピナ様…また、物騒な問題考えてません?」

「もう!酷いなフェリックスは。お兄様のゲンコツ痛いから、もう、考えないようにしてるよ~。」


嘘だった。

今度はどうやったら、ゲンコツをもらわないで、上手くドルススお兄様とパッラスの2人を、奇想天外な問題で困惑させるかしか考えてない。そういった意味では私もあの高慢ちきのリヴィアとあんまし変わらないのかも。


「あ、あっちの方へいった。」


ちょっと待って、今逃げられたら、せっかくの案が消えちゃう。


「フェリックス!追いかけるのです。」

「分かった!」


私達2人にとって、このパラティヌスは広大で贅沢な遊び場だったと思う。本当はいけないんだけど、ある人とある人の銅像の頭に、どっちが先に鳥のフンがかかってるか賭ける、ロムレスゲームというのをフェリックスと私は考案した。とはいうものの、フェリックスはあんまりにも賭け事が上手いから、ものの見事にカモにされていた。


「あ、あそこに止まった。」

「え?」


私はその光景を見てビックリした。

パッラスと同じくらいの男性が神殿脇にある緩やかな階段に腰掛け、さっきの小鳥達と戯れながら会話していたのだ。その笑顔はとっても優しくて、謙虚で聡明な顔つき。小鳥達は一切怯えず、その者の人差し指に止まったり、肩に止まったり、時には頭の上に止まったり。


「うん?」


私達は呆然としながら、口をポカンと開けたままでいた。気が付いたその男の人は、優しく微笑んでこっちへおいでと手招きしてくれた。


「私はコルドバ出身のルキウス・アンナエウス・セネカ。君達は?」

「私はユリア・アグリッピナ。それと、こっちはアントニア様の奴隷フェリックス。」

「こんにちわ。」

「あなたは、ルキウスさん…でいいの?」

「セネカでいいよ。ここでは、ルキウスって名前は多いからね。」


するとセネカは再び人差し指を伸ばして、頭の上に乗ってた小鳥を誘導した。まるで意思疎通が出来てるかのように、小鳥はセネカの言う通りに動いてる。


「セネカ、あなたは鳥占官のアウグルなの?」


するとセネカは目を見開いて大きく笑った。その笑い声に反応するかのように、周りにいた小鳥達もチュンチュンと笑ってる。


「僕がアウグルに見えるほど、年取って見えるかい?」


するとフェリックスは即答で答えた。


「見える…。だってジジイくさいもん。」


フェリックスは歯に衣着せぬ発言でも有名だった。素直といえばそうなのだが、私は奴隷らしくありなさいと静止した。


「あはは、全然構わないよ。"何であれ伝え方や行い方次第で、その事柄の価値そのものが大きく変わってくる。これは人の世話をする場合によく当てはまる。"」

「?」

「さっき思い付いたんだ。」

「あなたは一体何者なの?」

「僕は、そうだな…学生とでもいっておこうかな?ストア学派の哲学者アッタロスさんの所で色々な勉強をさせてもらっているんだ。」

「へぇー。」


多分、私は哲学者が何なのか?さっぱり分かってなかったと思う。きっと鳥使いの名手ぐらいにしか考えてなかった。本当に鳥占官のアウグルと関係があると思い込んでいたから。


「ユリアー!」


ドルススお兄様がやって来た。

私達をずっと探していたみたいで、走って来た。


「お前達、勝手に離れちゃ駄目だろう。うん?」

「やぁ、こんにちは。」


セネカは鳥に囲まれながら、ドルススお兄様に挨拶をした。ドルススお兄様も不思議に思いながら、挨拶する。


「セネカです。」

「あ、僕はこいつの兄のドルスス・ユリウス・カエサルです。」

「ユリウス?って事は、君達はユリウス家のものなのか?」

「はい。父はゲルマニクスで、母はウィプサニアです。」

「おおお!ゲルマニクス様のお子さん達か。」


セネカは喜ぶように起き上がって、ドルススお兄様へゲルマニクスお父様の事を褒めちぎっていた。でも、鳥のフンが肩や頭にあった。


「フンばっかりでばっち~。」


フェリックスの言った通りだと思った。これが後の盟友となる哲学者セネカとの初めての出会いだった。


続く

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