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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第五章「パラティヌス生活」少女編 西暦19年 4歳
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第五章「パラティヌス生活」第六十二話

「アルテミスゲームってどうなってるの?!大体水泳ばっかりしかできないアグリッピナが、何で毎回勝つわけ?」

「へへ~んだ!」


リヴィアとは毎回こんな調子。

普通ならもう諦めるのに、一つの事に拘り出したら、一気にそっちへ傾いてしまう。


「ユリア!」

「え?お兄様?!」

「お兄様って誰?」

「ネロお兄様!!」

「ユリア!」

「ドルススお兄様!!」


その時はあまりの嬉しさに、我を忘れて桃も放り投げて、一目散に駆け寄った。長男のネロお兄様と次男のドルススお兄様が帰ってらしたから。二人は前よりも幾分背も伸びて、凛々しいお顔になられていた。


「元気だったか?ユリア!」

「はい!ネロお兄様。」

「ユリア、お前少し背が伸びたんじゃないか?」

「ドルススお兄様も、お鼻は平気なようで。」

「あははは。お父様が僕らをアレキサンドリアまで連れてってくれたお陰で、ドルススの鼻水は治ったみたいだよ。」

「ところで、あの子はだれ?」


いけない!すっかりリヴィアの事を忘れてた。高慢チキだから紹介しないとうるさいんだった。


「あ、お兄様。あの子はリウィッラ叔母様とドルスッス叔父様の長女でらっしゃる…。」

「リヴィアです!リヴィア・ユリアでございます!ネロ・カエサル様~!」


痛っ!!

リヴィアは私とドルススお兄様を突き飛ばした。ネロお兄様の両手を、あああああ。目がウルウルしてる!これが世に聞く…。


「愛の神クピードー様の仕業だな。」

「ドルススお兄様。」

「あの子、ネロ兄さん惚れちまったようだよ。」


時に私は神様を恨んだ事がある。

他愛ない事ならこれが生まれて初めてだけど。しかもよりによってリヴィアが?それはネロお兄様はとっても素敵なお方だけど…。


「ネロ様、とっても素敵な髪型ですね?長旅はお疲れではなかったですか?」

「あははは、ありがとうリヴィアさん。」

「リヴィアさんだなんて!そんな呼び捨てにしてくださいな~。」


ダメだ…。

クピードー様の矢で完全にやられてる。リヴィアの舞い上がった姿は初めてだった。あんな高慢チキでも乙女の心は持ってるんだ…。


「これじゃ、どっちがアポロ様でどっちがダプネー様かわかんないや。」

「どういう意味なのです?ドルススお兄様。」

「その昔、アポロ様がクピードー様の矢を馬鹿にして、クピードー様が怒って黄金の矢をアポロ様に、そして鉛の矢をダプネー様に打ったら、すっかりアポロ様は理性を失ってダプネー様に求愛し続け、ダプネー様は拒絶した末に月桂樹になったのさ。」

「ヘェ~アポロ様ってそうだったんですか~。」

「でもこれじゃ逆パターンだよ。ユリア…お前が間違えて黄金の矢をリヴィアさんに打ったんじゃないの?」

「いいえ、ドルススお兄様。所詮リヴィアさんは、バックスの女性信者のマイナスですよ。」


リヴィアなら自分で黄金の矢を自分に打ってそう。とにかくベッタリとネロお兄様にくっ付いて、終いにはアントニア様の所に一緒に住むと言い出す始末…。


「えええ?!」

「という事で、今日からリヴィアと同じ部屋になるから、アグリッピナ、いいわね?」

「……。」

「よろしくね、ユリアちゃん!」


うげ。

ネロお兄様の前でのぶりっ子だ!今までアグリッピナって呼び捨てだったくせに!まぁアントニア様からしたら、同じ孫だから可愛かったのでしょうけど、そうと決まったら、あっという間に自分の衣服を持ってこさせて、ネロお兄様のそばでおべっかばっかり。


「ウフフ…。本当にネロ様はご発明がお上手。妹さんの、ユリアちゃんが羨ましいですこと。」

「ありがとう、リヴィア。僕も今回の満更じゃないと思うんだ。」


ありゃ、ネロお兄様?

お顔を赤らめてらっしゃるの?お兄様ったら、まんまとゴルゴン三姉妹の一人、メデューサの罠にはまって…。翌年、リヴィアはまんまとネロお兄様と結婚する事に成功した。


続く

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