表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紺青のユリ  作者: Josh Surface
第四章「大母后と祖母」少女編 西暦18年 3歳
58/300

第四章「大母后と祖母」第五十八話

次の朝、石を削る音から始まった。ガリア人でありながら、シラクサで王族の石工職人セリヌンティウスを先祖に持つ門番のセルテス。アントニア様から許可を頂いて、アクィリアを表した骨壷の代わりとなる石像を作っている。


「セルテスの集中力って凄いのね。」

「ああ、アグリッピナ様。気付きませんで、すみませんでした。」

「いいのよ、それにしても本当にアクィリアそっくり。」

「一度見たものは頭の中に刻み込まれて、後はどうすればできるかを考えるだけなんで。」

「アントニア様も凄く感心されていたし。」

「あはは… 。まさか自分の石工技術がこんな時に役に立つなんて、何か皮肉に感じますよ。アクィリアにブルラでなくとも、お守りの一つでも持たせてやればよかった…。」

「お守り…。」


お母様からもらったブルラを握りしめ、自分が恵まれている環境に生まれた事を感謝した。


「セルテス、アクィリアの右手に桃を持たせる事できる?」

「桃ですか…。」


セルテスは顎を摩りながら、しばらく考えを巡らせて頷いた。


「やってみましょう、なかなか良いアイディアです。」

「ありがとう、きっとアクィリアも喜んでくれるわね。」

「ええ、私もやり甲斐が出てきましたよ。」


再びセルテスの石を削る音がなりだした。一つ一つ優しく、命を生み出す音が。


「ただいま帰りました。」

「クッルス!フェリックスはどう?」

「はい、だいぶよくなってきましたよ。後二日くらいですっかり元気になりますでしょう。」

「良かった。」

「アグリッピナ様、他の皆さんは?」

「セルテスはアクィリアの骨壷用の石を削ってて、サリウスとパッラスはアントニア様と一緒に宮殿へ。」

「宮殿へ…ですか?」

「ええ、アントニア様はこのドムスを引き払うそうよ。」

「そうなんですね…。」


クッルスはアトリウムをぐるりと見回し、感慨深い表情を見せている。


「今回の事で、お亡くなりなられた旦那様との大切な思い出がつまったドムスへ戻られるみたい。」

「という事はパラティヌスへお戻りに?」

「ええ。でも、みんな一緒よ。その事を大母后様へ懇願されに行ったの。」

「ガッハハハ!そりゃあ良かった!」


私はクッルスの笑い方がお父様そっくりで本当に心が和んだ。


「そうそう、セルテス。その石像ができたら、我が街のインスラにあるタヴェルナにみんなが飾って欲しいとよ!」

「ええ?本当ですか?」

「ああ、あそこの街の人間はアクィリアの事を知ってたんだってよ。だから是非ってよ。」

「それは本当に嬉しいです、分かりました。」


ペロが私のそばにやってきて、またペロペロつま先を舐めてくれる。私はそんな姿を見ながら、もう哀しんでるだけではいけないんだってふっと湧いてくる感じがした。


「ペロ、アクィリアは本当にみんなから愛されてて良かったね。」


セルテスの石を削る音が再び鳴り出すと、ペロがクーンと鳴いて、私の顔にペロペロしてきた。綺麗な毛並みを摩りながら、澄み切った空を見上げ、私はアクィリアの為に最後の涙を笑顔で流した。


続く

【ユリウス家】


<ユリア・アグリッピナ(15年-59年)>

主人公。後の暴君皇帝ネロの母。


<ゲルマニクス(紀元前15年-19年)年の差+30歳年上>

アグリッピナの父


<ウィプサニア(紀元前14年-33年)年の差+29歳年上>

アグリッピナの母 


<長男ネロ(6年-31年)年の差+9歳年上>

アグリッピナから見て、一番上の兄


<次男ドルスス(7年-33年)年の差+8歳年上>

アグリッピナから見て、二番目の兄


<三男ガイウス=カリグラ(12年-41年)年の差+3歳年上>

アグリッピナから見て、三番目の兄


<次女ドルシッラ(16年-38年)年の差-1歳年下>

アグリッピナから見て、一番目の妹


<三女リウィッラ(18年-42年)年の差-3歳年下>

アグリッピナから見て、二番目の妹


【アントニウス家系 父方】


<アントニア(紀元前36年-37年)年の差+51歳年上>

アグリッピナから見て、父方の祖母


<リウィッラ・ユリア(紀元前13年-31年)年の差+28歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔母


<クラウディウス(紀元前10年-54年)年の差+25歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔父


【アントニウス家系の解放奴隷、使用人および奴隷】


<ナルキッスス(1年-54年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<パッラス(1年-63年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<フェリックス(12年-62年)年の差+3歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<アクィリア(17年-19年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<シッラ(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<リッラ(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<クッルス(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セリウス(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セルテス(紀元前12年-63年)年の差+27歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<ぺロ(17年-30年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの飼い犬


【クラウディウス氏族】


<リウィア大母后(紀元前58年-29年)年の差+73歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の母親。初代皇帝アウグストゥスの後妻


<ティベリウス皇帝(紀元前42年-37年)年の差+57歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟。初代皇帝アウグストゥスの養子、リウィア大母后の長男


<ドルスッス(紀元前14年-23年)年の差+29歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟の息子。二代目皇帝ティベリウスの長男


<リヴィア(5-43年)年の差+10歳年上>

アグリッピナから見て、父ゲルマニクスの妹の娘。ドルスッスの長女


【ティベリウス皇帝 関係】


<セイヤヌス(紀元前20年–31年)年の差+35歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの右腕。親衛隊長官


<ピソ(紀元前44年-20年)年の差+59歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの親友。シリア属州の総督。


【後のアグリッピナに関わる人物】


<ウェスタ神官長オキア(紀元前68年-29年)年の差+83歳年上>

ウェスタの巫女の長


<セネカ(紀元前1年-65年)年の差+16歳年上>

アグリッピナの盟友


<ブッルス(1年 - 62年)年の差+15歳年上>

アグリッピナの悪友


<アニケトゥス(1年 - 69年)年の差+15歳年上>

後のアグリッピナ刺殺犯

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ