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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第四章「大母后と祖母」少女編 西暦18年 3歳
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第四章「大母后と祖母」第四十三話

それは門番のセルテスの叫び声から始まった。


「サリウス様!!そちらです。」


次にペロの物凄い吠える鳴き声。私やアントニア様は、その夜の静けさを切り裂く大声に、飛び上がるほど驚いて目を覚ました。


「何事です?!」


下からは物音が響いて、度々何かが割れる音がしてきた。アントニア様は私を抱きかかえたまま、身体をビクつかせて震えている。シッラが急いで二階の寝室に上がり、アントニア様へ事の成り行きを知らせにきた。


「あー、アントニア様!蛮族の盗っ人です!今、サリウスとクッルスが必死に…。」

「シッラ!アグリッピナをリッラと一緒に!」

「あー、それが…リッラも一緒に!」

「ええ?!」


あの大らかで歌が大好きで、太っちょでいつも笑ってばっかりのリッラが?!私達はアントニア様に連れられ、恐る恐る階段の隙間から下の様子を覗いてみた。するとカッカして怒ってるリッラが、この間買ったばっかりの取手のついた鉄鍋をグルングルン振り回していた。


「あんたね?!いつもウチのパンを盗んでた蛮族は!今日という今日は許しませんよ!!」

「リッラさん!危ないから、そんな物振り回さないで!」

「クッルス!リッラを止めろ!」

「こらーーーー!こっちこいや!盗っ人!」

「だ、ダメだ!サリウス。リッラは完全に我を失ってる!」


本当だ…。

すっごく暴れてる。なんていう人。盗っ人の青年も青ざめた顔で、逃げ回りながら圧倒されている。これじゃどっちが捕まえる人か分からない。


「あー、リッラは普段穏やかですが、料理に関しては人一倍拘りを持っているので、それを盗っ人に奪われて憤慨しているのでしょう。」

「まぁー!」


リッラはドタドタと足音を立てながら、フライパンをクルクル右手で振り回しながら、徐々に盗っ人の青年を追い込んでいく。セルテスも門のかんぬきの長い棒を持って、盗っ人を追い詰めていた。


「サリウス!回り込め!」

「分かった、クッルス。」


すると、リッラが振り回していたフライパンは手元をするっと離れ、勢いよく宙を飛んだ。


ゴン!


クッルスの頭へ見事命中。気を失ったクッルスは地面に倒れ、サリウスとセルテスが心配する。


ガツン!


今度はセルテスの手から離れたかんぬきが、盗っ人の青年の顎へ見事命中。盗っ人の青年もクラクラして床に倒れた。すかさずリッラは盗っ人の身体へ全体重を乗せて取り押さえる。必死に逃げようと足掻いてる盗人であるが、さすがのリッラの体重を跳ね返すことはできなかった。


「もう逃げられないわよ!」

「ハハハ、リッラ。倒す相手を間違ったようだな。セルテス、見事だった。」

「いや…私は何も。」


サリウスは静かに盗っ人の所へ近付いて、リッラと交代して両手首を後ろ手に縛って取り押さえる。未だにクッルスは気絶して倒れてる。ひたいには徐々に大きなタンコブができてきた。


「クッルスの旦那は大丈夫だろうか?」

「そいつは昔から頭だけは頑丈だから平気さ、セルテス。」


だが、倒れたクッルスのそばで様子を見ているセルテスは心配そう。


「しかし、泡吹いてまっせ。」

「どれ?あ!本当だ。こんなの唾つけときゃ治るって、普段は豪語してるくせに…。肝心な時の、それもリッラのフライパンに負けるとは、クッルスもローマの男として情けない奴だ。」

「アハハハ…。すみません、つい手が滑って。」


サリウスはグイグイっと盗っ人立たせて、頬を二三度はたいて素性を吐かせようとしている。


「おい!貴様。クロアカから我らの街にたむろしていた蛮族だな?名前は何というんだ?」

「う…うう。」

「答えろ!貴様の名前は?!」


するとサリウスはその盗っ人に暴力訴えて、素性を吐かせようとする。


「パ…っす。」

「何だ?!」

「ギリシャのアルカディア王の末裔、パッラスだ…。」


その言葉に一同はビックリした。


続く

【ユリウス家】


<ユリア・アグリッピナ(15年-59年)>

主人公。後の暴君皇帝ネロの母。


<ゲルマニクス(紀元前15年-19年)年の差+30歳年上>

アグリッピナの父


<ウィプサニア(紀元前14年-33年)年の差+29歳年上>

アグリッピナの母 


<長男ネロ(6年-31年)年の差+9歳年上>

アグリッピナから見て、一番上の兄


<次男ドルスス(7年-33年)年の差+8歳年上>

アグリッピナから見て、二番目の兄


<三男ガイウス=カリグラ(12年-41年)年の差+3歳年上>

アグリッピナから見て、三番目の兄


<次女ドルシッラ(16年-38年)年の差-1歳年下>

アグリッピナから見て、一番目の妹


<三女リウィッラ(18年-42年)年の差-3歳年下>

アグリッピナから見て、二番目の妹


【アントニウス家系 父方】


<アントニア(紀元前36年-37年)年の差+51歳年上>

アグリッピナから見て、父方の祖母


<リウィッラ・ユリア(紀元前13年-31年)年の差+28歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔母


<クラウディウス(紀元前10年-54年)年の差+25歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔父


【アントニウス家系の解放奴隷、使用人および奴隷】


<ナルキッスス(1年-54年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<パッラス(1年-63年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<フェリックス(12年-62年)年の差+3歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<アクィリア(17年-19年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<シッラ(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<リッラ(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<クッルス(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セリウス(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セルテス(紀元前12年-63年)年の差+27歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<ぺロ(17年-30年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの飼い犬


【クラウディウス氏族】


<リウィア大母后(紀元前58年-29年)年の差+73歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の母親。初代皇帝アウグストゥスの後妻


<ティベリウス皇帝(紀元前42年-37年)年の差+57歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟。初代皇帝アウグストゥスの養子、リウィア大母后の長男


<ドルスッス(紀元前14年-23年)年の差+29歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟の息子。二代目皇帝ティベリウスの長男


<リヴィア(5-43年)年の差+10歳年上>

アグリッピナから見て、父ゲルマニクスの妹の娘。ドルスッスの長女


【ティベリウス皇帝 関係】


<セイヤヌス(紀元前20年–31年)年の差+35歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの右腕。親衛隊長官


<ピソ(紀元前44年-20年)年の差+59歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの親友。シリア属州の総督。


【後のアグリッピナに関わる人物】


<ウェスタ神官長オキア(紀元前68年-29年)年の差+83歳年上>

ウェスタの巫女の長


<セネカ(紀元前1年-65年)年の差+16歳年上>

アグリッピナの盟友


<ブッルス(1年 - 62年)年の差+15歳年上>

アグリッピナの悪友


<アニケトゥス(1年 - 69年)年の差+15歳年上>

後のアグリッピナ刺殺犯

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