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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第四章「大母后と祖母」少女編 西暦18年 3歳
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第四章「大母后と祖母」第三十三話

リッラとシッラから蛮族の歌を教えてもらった私は、アントニア様と一緒に楽しくサラダ・ドレッシングを作っている。アントニア様は蛮族の歌を大はしゃぎで歌っていた。


「リッラ、これは料理の時にはとってもイイわね?」

「そうでございましょう?アントニア様。アッハハ。」

「あー、アントニア様、あんまりリッラをお褒めにならない方が、宜しいかと思いますです。この子は調子に乗るくせがありますので、はい。」

「あら、シッラもやってみなさいよ。」

「あー、大丈夫です。」

「アッハハ。アントニア様、シッラは歌に自信が無いのですよ~。」

「そうなの?!シッラ。」

「恥ずかしながら…。」


今日のお食事はギリシャから届いた豆と、エジプトから届いた香辛料のソース。パンとチーズと卵、そしてアントニア様のドレッシング。さてさてどんな味がするのか…。


「さぁ、いただきましょう。シッラとリッラ、それからセルテスもいっらっしゃい。みんなで食べましょう。」


それにしても、さっきの兵士達の様子が変だったけど、アントニア様はどんなお話をされたんだろう?私達は御祈りをした後に早速サラダを食べた。ゔ…。アントニア様…。辛い。


「うーん、これは…。」


みんな黙ってる。

アントニア様も無理しながら食べてるご様子。しかし、段々大粒の汗が流れてきた。


「辛い!!!ユリアちゃん、食べちゃダメ!」

「もう…食べじゃいまぢだ。」

「シッラ、お水と葡萄酒!」

「あー!はい。只今。」


今日のアントニア様の実験は、残念ながら失敗に終わってしまったが、その他の料理はさすがシッラとリッラの手だけあって美味しく頂いた。


「ユリアちゃん、これは貴女のお母さんから届いた物よ。」


さっきの兵士2人組がシリアから届けてくれた物だった。中には珍しい布でできた橙色外衣のパルラが入っていた。


「まぁ、素敵ね。ウィプサニアは本当に貴女の似合う色を知ってる。」

「はい…。」


更に木箱に入ってあったのは、ドルススお兄様が鳥の羽根で作ってくれたブレスレットと、ネロお兄様が作ってくれた踵を留めないサンダルのソックルを送ってくださった。その横には、小さな土の塊が一つ。


「これは何かしら?」

「さぁ、何でしょう?アントニア様。」

「幼子の…手形がいっぱいついてあるわね?」

「あ。それは多分、妹のドルシッラが果物を作ったんだと思います。」

「あっはっはっは!可愛いわね、ドルシッラちゃんは。」


私はドルシッラもいよいよ大きくなってきたんだと感じた。しかし、相変わらずガイウスお兄様からは何も無い。カリグラとかお父様の兵士達から呼ばれて調子に乗ってるんだ。


「良かったわね、ユリアちゃん。」

「はい。」


私はネロお兄様が書かれた手紙を見つけた。アントニア様のお顔を拝見して伺ったら、イイわよっと笑顔で答えてくださったので、早速お庭に向かってクルクル巻かれた手紙を開いて読むことにした。暫くすると足元にはペロもやってきた。


「ペロも一緒に読む?」


ユリア・アグリッピナ。


アントニア様のところで元気にやってるかい?一人で寂しくないか?こちらはとっても熱くて凄い所だ。お母様はやはりお父様と一緒にいられることで、とっても調子が良い様子だよ。これも全てお前が大母后様の所で、スパルタ教室に通ってるおかげだな。僕とドルススはお父様のお力で、先日やっと修復作業が終わったアレキサンドリア図書館で、いっぱい本を読ませてもらってるんだ。ここはいっぱい本があって、本当に勉強になるよ。お母様には法律の本を読むように勧められてるけど、目を盗んで大好きなギリシャ発明の本を読んでる。あらゆる知識が学べるんだ。ドルススは芸術の本から鳥の羽根のブレスレットを、僕はサンダルのソックルを作ったよ。ドルシッラはどうやら、林檎を作ったみたいだ。暫くしたら元の属州に戻って、そっちに家族で帰るから、そしたらみんなで遊ぼうな。


「暫くしたら元の属州に?」


私は少し不思議に思った。

お兄様達は、今はカッパドキアやコマゲナを攻略する為に、小アジアにいらっしゃるはず。別の属州にいるってこと?何か変なの。


「?!」


私のそばに突然黒い影が天井から飛び降りてきた。ペロは直ぐにキャンキャン吠えて私を守ってくれたが、痩せこけてボロボロのトゥニカを着た素足の青年が、恐ろしい形相で私を立ったまま睨んでいる。私は余りにも恐くなって、声も出ないほど怯えてると、その青年は私のそばに近付いて呟いた。


「騒がなければ、命だけは助けてやる。」


青年は素早く庭にある井戸から水を汲んで、木筒で出来た水筒に水を入れてる。ペロが大きく吠えてくれたので、その異変に気が付いた門番のセルテスがやって来た。


「おい!!貴様何をやってるだ!?」

「チッ!」


セルテスが掴まえるよりも早く、青年は素早く庭の円柱から屋根へと登って逃げてしまった。私は心臓が止まりそうなくらい怖かった。


「ユリア様、お怪我はありませんでしたか?」

「あわわわわ。」

「どうしたのです?!」


アントニア様が駆け寄って、私を自分の我が子のように抱きしめてくれて、喋れるまで落ち着かせてくれた。さすがに温厚なアントニア様でも、今回のセルテスによる警備の不備は許せず、警備を増やすように一喝した。


「いいですか?!今度このような事があったら、貴方を即刻奴隷へ戻しますよ!分かりました?!」

「分かりました…。」


しかし、これが、後に私を皇妃へと導いてくれる、奴隷から官僚まで登りつめたマルクス・アントニウス・パッラスとの出会いだった。


続く

【ユリウス家】


<ユリア・アグリッピナ(15年-59年)>

主人公。後の暴君皇帝ネロの母。


<ゲルマニクス(紀元前15年-19年)年の差+30歳年上>

アグリッピナの父


<ウィプサニア(紀元前14年-33年)年の差+29歳年上>

アグリッピナの母 


<長男ネロ(6年-31年)年の差+9歳年上>

アグリッピナから見て、一番上の兄


<次男ドルスス(7年-33年)年の差+8歳年上>

アグリッピナから見て、二番目の兄


<三男ガイウス=カリグラ(12年-41年)年の差+3歳年上>

アグリッピナから見て、三番目の兄


<次女ドルシッラ(16年-38年)年の差-1歳年下>

アグリッピナから見て、一番目の妹


<三女リウィッラ(18年-42年)年の差-3歳年下>

アグリッピナから見て、二番目の妹


【アントニウス家系 父方】


<アントニア(紀元前36年-37年)年の差+51歳年上>

アグリッピナから見て、父方の祖母


<リウィッラ・ユリア(紀元前13年-31年)年の差+28歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔母


<クラウディウス(紀元前10年-54年)年の差+25歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔父


【アントニウス家系の解放奴隷、使用人および奴隷】


<ナルキッスス(1年-54年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<パッラス(1年-63年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<フェリックス(12年-62年)年の差+3歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<アクィリア(17年-19年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<シッラ(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<リッラ(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<クッルス(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セリウス(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セルテス(紀元前12年-63年)年の差+27歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<ぺロ(17年-30年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの飼い犬


【クラウディウス氏族】


<リウィア大母后(紀元前58年-29年)年の差+73歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の母親。初代皇帝アウグストゥスの後妻


<ティベリウス皇帝(紀元前42年-37年)年の差+57歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟。初代皇帝アウグストゥスの養子、リウィア大母后の長男


<ドルスッス(紀元前14年-23年)年の差+29歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟の息子。二代目皇帝ティベリウスの長男


<リヴィア(5-43年)年の差+10歳年上>

アグリッピナから見て、父ゲルマニクスの妹の娘。ドルスッスの長女


【ティベリウス皇帝 関係】


<セイヤヌス(紀元前20年–31年)年の差+35歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの右腕。親衛隊長官


<ピソ(紀元前44年-20年)年の差+59歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの親友。シリア属州の総督。


【後のアグリッピナに関わる人物】


<ウェスタ神官長オキア(紀元前68年-29年)年の差+83歳年上>

ウェスタの巫女の長


<セネカ(紀元前1年-65年)年の差+16歳年上>

アグリッピナの盟友


<ブッルス(1年 - 62年)年の差+15歳年上>

アグリッピナの悪友


<アニケトゥス(1年 - 69年)年の差+15歳年上>

後のアグリッピナ刺殺犯

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