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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第四章「大母后と祖母」少女編 西暦18年 3歳
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第四章「大母后と祖母」第二十八話

アントニアお姉さんは、突然床にあぐらをかいた。トゥニカからすらっとした細い両足が綺麗に整えられてる。


「ユリアちゃんも、私と同じようにあぐらをかいてごらんなさい。」

「はい。」


私もアントニアお姉さんの真似をして、自分の両足の裏同士をつけあわせた。


「そもそもイデアとは何かを自分の中で決めなければ、本当に意味が無くなってしまものなの。」

「イデアを、自分の中で決めるってことですか?」

「そうよ。例えば大母后リウィア様にとってのイデアは、己の可能性を極限まで自分自身の力で引き出す事に意義があると仰ってるわけ。つまり理想や可能性を引き出す為に、イデアを見つめる力を養いなさいってことね。」

「へ~。」

「そしてそれは創り出す力なの。私もそれは習ったわ。でもね、もう一つ私は自分で見つけた力があるの。」

「何ですか?」

「そこに在る物を思う力よ。」


なんだか難しくてよく分からなかった。


「ユリアちゃん、今難しくてよくわかんないって思ったわね?」

「あ、ばれました?」

「顔に書いてあるもの。」


図星。

しっかりとアントニア様にはばれてる。


「つまり今は無いと思ってるけど、実はすでもう持っているんだって思う力の事云うの。例えばお魚。彼らは水の中では平気に泳げるでしょ?でも、水から出しちゃうと、パクパク口をしながら苦しんで最後には死んじゃうわよね?」

「はい。」

「彼らは自分達が水の中にいると意識してなかったのかもしれない。そうなると、私たちも本当は目に見えなかったり意識してないだけで、お魚にとっての水のような物に守られてるかもしれない。」


そっか…。

だからさっき水の中で息継ぎが苦しかったんだ。


「私達には家族があります。でも、目に見える紐で一人一人わざわざ繋げなくても、みんな家族だって分かるわよね?そう云う事を、イデアを意識しながら捉えていきましょうって事。」


アントニア様のイデアのお話は最初わかりづらかったけど、例えを出してくれたので分かりやすくなった。


「では、何をすればいいのですか?」

「別に何もしなくてもいいの。」

「え?何も?」

「ええ、そうよ。ただあぐらをかいて目を閉じ、リラックスして自分の両親や兄妹の事を感じるだけでいいのよ。」

「なんだか、あぐらかいていると行儀が悪そうな気がしますけど。」

「フフフ。その代わり、上半身の背筋はピーンと伸ばさないとダメよ。」

「はい。」

「これはシリアの先に在る国の人が教えてくれた『ヨーガ』という方法なの。基本はこうやって目を閉じて、時折、大きくお腹から深呼吸するのだけれど、余計なことを考えたり邪念が出てきたりしたら、手足を伸ばしたり、身体を大きく横へ揺さぶったりしてね。」


大母后様の教育とはまるっきり違っていた。とっても楽チンで、時折、食べたい食べ物とかが浮かんでくる。


「食べ物が浮かんだ場合、どうすればいいですか?」

「アハハハ。さすがユリアちゃんね。その時は食べちゃいなさい。」

「はーい。」


私は桃やお肉を食べてみた。

そうしたらお腹が空いて、なんと鳴ってしまった。


「あら?お腹空いてるの?」

「えへへ、はい。」

「それじゃこれが終わったら、ご飯の用意しましょうね。」


眼をつぶってイデアを思い浮かべる『ヨーガ』を終えると、アントニア様と料理専門の解放奴隷リッラとシッラと共に夕食の用意を始める。アントニア様はお父様と同じように、解放奴隷の彼女達には料理を作ってもらうが、決して彼らに自分の分の料理の用意や食事の用意はさせない。自分の食べる物は自分で用意して、生き物の命を奪った事をしっかりと噛み締めながら食べるように教わった。


「ゲルマニクスはあの子らしい言い方だけど、私達は誰か別の命の犠牲の下に生かされてるって事。そしてその命は新しい命を生み出すの。そうやってユリアちゃんも私の孫として産まれたの。だから命を軽視したり、驕り高ぶった人間になってはダメ。そうなってはイデアに近づく事すらできなくなるのよ。だから常に感謝をして、自分の手でしっかりと食べる事を忘れないでね。」


アントニア様はとっても自然体に生きてらっしゃった。普段は奔放な発言が多い方だけど、芯はとってもしっかりして、さらに異文化に対しても研究熱心で肩に力が入っていない生き方をされている。


「さぁ!食べましょう!」

「はい!」


大母后様とはとっても対象的だった。


続く


【ユリウス家】


<ユリア・アグリッピナ(15年-59年)>

主人公。後の暴君皇帝ネロの母。


<ゲルマニクス(紀元前15年-19年)年の差+30歳年上>

アグリッピナの父


<ウィプサニア(紀元前14年-33年)年の差+29歳年上>

アグリッピナの母 


<長男ネロ(6年-31年)年の差+9歳年上>

アグリッピナから見て、一番上の兄


<次男ドルスス(7年-33年)年の差+8歳年上>

アグリッピナから見て、二番目の兄


<三男ガイウス=カリグラ(12年-41年)年の差+3歳年上>

アグリッピナから見て、三番目の兄


<次女ドルシッラ(16年-38年)年の差-1歳年下>

アグリッピナから見て、一番目の妹


<三女リウィッラ(18年-42年)年の差-3歳年下>

アグリッピナから見て、二番目の妹


【アントニウス家系 父方】


<アントニア(紀元前36年-37年)年の差+51歳年上>

アグリッピナから見て、父方の祖母


<リウィッラ・ユリア(紀元前13年-31年)年の差+28歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔母


<クラウディウス(紀元前10年-54年)年の差+25歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔父


【アントニウス家系の解放奴隷、使用人および奴隷】


<ナルキッスス(1年-54年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<パッラス(1年-63年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<フェリックス(12年-62年)年の差+3歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<アクィリア(17年-19年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<シッラ(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<リッラ(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<クッルス(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セリウス(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セルテス(紀元前12年-63年)年の差+27歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<ぺロ(17年-30年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの飼い犬


【クラウディウス氏族】


<リウィア大母后(紀元前58年-29年)年の差+73歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の母親。初代皇帝アウグストゥスの後妻


<ティベリウス皇帝(紀元前42年-37年)年の差+57歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟。初代皇帝アウグストゥスの養子、リウィア大母后の長男


<ドルスッス(紀元前14年-23年)年の差+29歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟の息子。二代目皇帝ティベリウスの長男


<リヴィア(5-43年)年の差+10歳年上>

アグリッピナから見て、父ゲルマニクスの妹の娘。ドルスッスの長女


【ティベリウス皇帝 関係】


<セイヤヌス(紀元前20年–31年)年の差+35歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの右腕。親衛隊長官


<ピソ(紀元前44年-20年)年の差+59歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの親友。シリア属州の総督。


【後のアグリッピナに関わる人物】


<ウェスタ神官長オキア(紀元前68年-29年)年の差+83歳年上>

ウェスタの巫女の長


<セネカ(紀元前1年-65年)年の差+16歳年上>

アグリッピナの盟友


<ブッルス(1年 - 62年)年の差+15歳年上>

アグリッピナの悪友


<アニケトゥス(1年 - 69年)年の差+15歳年上>

後のアグリッピナ刺殺犯

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