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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第十二章「落命」乙女編 西暦23~24年 8~9歳
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第十二章「落命」第二百三十話

「ティベリ、このオケに暖かいお湯を貰ってきて。」

「はい、リヴィアお姉様」


叔母様の寝室から出てきたリヴィアは、実の弟であるティベリを早速使いっ走りにしてる。


「ああ、リヴィアさん、それはあたし達やるから、ティベリちゃんにはゆっくりしてもらっていいかしら?」

「どういうこと?ジュリア」


ジュリアの考えを察したドルシッラは、続けてリヴィアに提案を出した。


「つまり、ティベリちゃんはアグリッピナ姉さんが相手するの」

「ええ?アグリッピナが?」


喋るなとさっき二人に言われたから、不機嫌そうに両手を腰に乗せて態度で高慢ちきに示した。でも、リヴィアは何も乗ってこらず、ただあたしの全身を眺めているだけ。


「うん、分かった。今のアグリッピナなら、ティベリを預けても大丈夫そうね」

「へ?」


気が抜けた。

というか意外だった。あいつなら、いつも何かと難癖つけるくせに、今日は大人しくしている。そっか、そうだよな。ドルスッス叔父様にゲルマも亡くなったんだから。長女のあんたがしっかりしないとね。


「ついでにあんたの汚いオムツも変えてもないな、ティベリ」

「はい、お姉様」


何だよ~。

感心したあたしがバカだった。っていうかティベリは四歳になるっていうのに、まだオムツしてるのかよ。


「ほら、こっちおいでティベリ」

「はい、アグリッピナさん」


ティベリは子供のくせに愛想が無かった。もちろん、この時期だからというのもあるかもしれないけど、何だかいっつも眉間にシワを作ってそうな顔をしている。そして抑揚の無い喋り方も気になった。確かに前にあった時は、言葉も喋れないほど幼かったけど、それでも双子の中では一番いい笑顔をしていた。


「アグリッピナさん、手を繋いでもいい?」

「うん?ああ、いいよ」


そうは言っても子供だな。

きっとリヴィアの手伝いをさせられていたから、寂しかったのかもしれない。


「どれ、庭の井戸であんたのオムツ変えてあげるよ」

「いいよ、恥ずかしいから」

「生意気言って。そのオムツん中には、ヤバイもん隠してるんだろ?」

「……。」


ほれ見ろ、ガキンチョなんてこんなもんよ。偉そうな態度したって所詮お漏らししてたら見栄も無いって。そういえば、ここのお庭では、ジュリアの婚約をリウィッラ叔母様に伝えるために、パッラスやナルキッスス達と、略奪されたサビニ人女性の劇をやったけ。


「ほら、ここの椅子に寝てご覧、ティベリ」

「はい、アグリッピナさん」


それでも眉間にシワを寄せるように愛想がない。そのくせ布のオムツを取ると、こんもりと自己主張してる奴が見事に滞在していた。


「あんた、トイレぐらい自分一人で行かないの?」

「いつもならお母様の奴隷がやってくれた。でも、今は無理」

「男として、こんな物を抱えて恥ずかしくないのか?」

「別に」


そうそう、この言葉がこいつには似合うかもしれない。だが、お前の下半身で起きてる災害には、いくら無関心決め込んだって無駄だって。


「ほら、足をあげるよ」


全く、何であたしがこいつの尻拭いをしてやらないといけないの?井戸まで下半身を出したまま、綺麗に水で洗ってあげていると、ジュリアが犬のような笑顔でオケを持ってきてくれた。


「これ何?ジュリア」

「ミョウバン水です。子供のかぶれ・湿疹対策に布おむつに使うと、皮膚を保護してくれるんです。」

「ミョウバンって、髪の毛だけじゃないんだ」

「そうですよ、アグリッピナ様。消臭効果だってあるんですから」

「へぇー」


洗い流した後のティベリのお尻に、マッサージするようミョウバン水を塗って、後はジュリアの指示に従いながら

オムツを取り替えていた。気が付くと、一回だけであっという間に覚えてしまったのだ。


「アグリッピナ様、意外とお上手ですね」

「そう?」

「はい、とっても丁寧ですし」


それでもティベリは不機嫌な顔をしている。感謝すらしない。ったく、あたしがわざわざやってあげているのに!


「あんた、感謝ぐらいしたらどうなのさ?ティベリ」

「別に」


っんとに、こいつはリヴィアと違って、違う意味で高慢ちきだ。仕方ない、そんな時はアントニア様直伝のコチョコチョ刑だ!


「アッハハハハ!やめてよ、くすぐったい!」

「どうだ?少しは感謝する気になったか?」

「キャハハハハ!分かった、分かった!ありがとう!」

「ありがとうだと?普通は、ありがとうございますだろ?」


さらに私の口で、ティベリのお腹をブー~っと鳴らす刑にも処した。さすがのティベリもキャッキャと笑い転げて、私から逃げ出した。駆けっこなら負けないぞ!


「待て!ティベリ!」

「やーだよーだ、こっちまでおいでー!」


結構すばしっこいティベリ。横目で高慢ちきのリヴィアとドルシッラの会話する姿を見ながら、ワザと負けたり驚かせながら、何度も何度も追いかけていた。


「ドルシッラ、ティベリはゲルマが死んでから一切笑わなくなってたの」

「え?」

「別に無理して笑う必要もないけど、泣きもしなくなってどこか無関心を決め込んでる感じだったの」

「それは大変でしたね」

「それが今じゃ、ほら、あんなに元気になって。悔しいけど、あたしには出来ないわ。」

「あははは、リヴィアさん。アグリッピナ姉さんは単純だから、ティベリと同じようにムキになって遊んでるだけですよ」

「確かに。だけど元気にさせるのも得意なんだよ。昔、お母様が元気無くした時も、あいつがやってきて元気にさせてくれたんだよね。」

「そうだったんですか……」

「だから悔しいけど、今のティベリを元気にさせられるのって、やっぱりアグリッピナしかいないのよ」


決して本人から直接聞けたわけではなかったが、リヴィアはドルシッラを通して私に感謝をしていたようだった。


続く





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