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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第九章「初恋」乙女編 西暦22年 7歳
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第九章「初恋」第百七十六話

サートゥルナーリア祭七日目 真夜中。


"ねぇパッラス?"

"何ですか?"

"お鼻とお鼻をくっつければ、もう一度できるの?"


モニョモニョする。

今度はとっても気持ちいい感じ。思い出す度に胸がドキドキするから。


"はぁ、パッラス…。"

"あ!アグリッピナ様!ごめんなさ。"

"ダメ。謝らないで。"

"はい…。"


ずっとずっと、あの透き通る綺麗な瞳に、今度は私が虜になっていた。


"ねぇ、もう一回だけお願い。"

"はい…。"


するとパッラスはとっても優しい微笑みで私を包んでくれて、じっと目を瞑って私の鼻を避けて唇を重ねてくれた。とっても柔らかくて、まるで皮を剥いた水っ気たっぷりのぶどうを、唇だけで咥えている感じ。


"はぁ~…。"

"…。"

"ふぅ…。"

"アグリッピナ様、大丈夫ですか?"

"うん。"


いけない。

これ以上一緒にいたらもっと欲しくなっちゃう。ダメだ。ちゃんと寝ないと。あたし何をやってるんだろう?サートゥルナーリア祭の最後の夜は厳粛でいないと…。


"パッラス、あたし、もう寝る。"

"あ、はい…。"

"ありがとう。"


けれど今度はパッラスが全く目を合わせてくれなかった。どんなに追いかけても拒絶されているみたいで。のぼせ上がった身体を恥ずかしいうように。


"す、すみませんでした!アグリッピナ様!"

"なんで謝るの?"

"だって!自分は身分をわきまえないで、でしゃばって、その…。あの…。"


パッラスって可愛い。

年上のくせに、奴隷のくせに、キスしたくせに、でしゃばったくせに、照れてるくせに。


"パッラス、あたしは貴方との口づけ、大好きだよ!"

"アグリッピナ様。"

"お休み…。"


でも、今度はあたしが寝れなかった。

とっても気持ち良かったくせに、ずっと抱きしめて欲しかったくせに、もっと見つめて欲しかったくせに、もっともっと、ずっとキスしたかったくせに。


「はぁ~」


隣では寝相の悪いリウィッラが、ガーガーといびきをかきながら寝ている。あんたに乙女の心が分かる?リウィッラ。とろけるようなとってもすてきな大人の味。初めて黙って葡萄酒を飲んじゃった気分。


「はぁ~。でも、なんでキスしちゃったんだろう?」


あんなにアカエアにある小国の王子アラトス王子にベタ惚れだったのに、ううん、アラトス王子はパッラスと全然違うけど、やっぱり格好イイ。でも、私はパッラスとキスをしちゃった。


「はぁ~…。これからどうしよう?」


思い出すだけでも、唇がむず痒くなってくる。この時ばかりは神々に呪われたのかもって思った。いっつもため息が出て、掌に顎を乗せて、小指の先で自分の唇を触ってないと落ち着かない。


「アグリッピナ姉さん?」

「はぁー…。」

「姉さん?!」

「うん?ドルシッラか。」

「もう、お祭り終わったのに、ため息ばっかりついて寝れないの?」

「はぁー…。そう。」

「もう、またアラトス王子の事考えてんたんでしょ?」

「はぁ~…。」

「明日は片付けがあるんだから、早く寝たら?もう。」


どうでも良かった。

そんなことよりも、私は気が多いのかな?なんで二人も男の子を好きになっちゃうんだろう。そんな冬の空に輝く星々がとても綺麗で、その煌びやかな美しさに心を奪われまたため息。世の中ってこんなに綺麗だったんだね。


「はぁ~…。」

「もう!アグリッピナ姉さん!いい加減にしてよ。」

「何よ?」

「ため息ばっかりでうるさくて寝れないじゃない!」


もう!ドルシッラっていつからこんなに姑じみてたっけ?


「寝ればいいんでしょう?寝れば。」


そして、この初恋は当然叶うこともなく終わってしまう。そうよね?初恋なんてそんなものでしょう?でも、当時の私は真剣にアラトス王子とパッラスの間で悩んでいたのよ。だってどっちも好きだったから。


続く



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