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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第九章「初恋」乙女編 西暦22年 7歳
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第九章「初恋」第百五十七話

サートゥルナーリア祭三日目 夜。

頭に傷口一つ、心にかすり傷、そしてスッカリ立ち直って冒険心一つ。


「あちゃー…。」

「やっぱり、アントニア様は出しっぱなし。」

「お姉ちゃん、台所めちゃくちゃじゃん。」


案の定、台所は嵐が吹き荒れた後のようにしっちゃかめっちゃか。アントニア様は昔から料理を作る方は大好きなのだが、後片付けはどうも苦手らしい。


「これって、後でリッラとシッラが片づけるんですよね?」

「うんそうね。まぁ、ちょうど痕跡を残してもばれバレないだろうし、いいんじゃない?」

「バレないって?」

「意外にリッラはあんな大きな図体しているけど、とってもきめ細かくて料理人の鏡だから。パッラスがその昔盗賊だった頃、台所から色々盗んでた時も、何盗まれてたか全部把握していたからね。」

「ええ?!あの陽気のリッラが?」

「うん、フライパンまで振り回して、すばしっこいパッラスを追い詰めて凄かったんだから。」


それにしても、どこに何があるのか検討がつかない。とりあえず私達は二手に分かれて漁りまくった。牡蠣、牡蠣、牡蠣はどこかな?


「うぎゃーー!」

「どうしたのリウィッラ?!」

「頭!!」


駆けつけると、豚の頭がいっぱい入ってる大きな容れ物の前で、リウィッラは腰を抜かしてた。


「なんだ、豚の頭じゃない。おどかさないでよ。」

「だって~目ん玉がこっち向いてるんだよ、お姉ちゃん。」

「あんたのお気に入りのレムスに護ってもらえばいいでしょ?」

「あ、そうだった!」


リウィッラは落とした人形抱きしめて、あたしのトゥニカの裾にガタガタ震えながらついてきた。


「もう、リウィッラ。腰紐取れちゃうでしょ?引っ張らないでよ。」

「だだだだだって、こここここ怖いんだもんん。」

「此処は台所なんだから、色々あるに決まってるじゃない。」

「うぎゃ!」

「今度は何?」

「さささ魚の、あたあたあた頭踏んじゃった…。」


もう、リウィッラは怖がりなんだから。その点、ジュリアは年上らしくテキパキと探してる。しかも器用に片づけなが…ら?


「ってジュリア!駄目だって。」

「え?なんでですか?だって、やっぱり出しっぱなしは良くないかなって思って…。」

「片づけしたら、あたし達が来た事すぐにバレるでしょ?」

「あ、そっか…。」


どこかトボけて天然入ってるんだよね、この娘って…。


「アグリッピナ様!見て見て!可愛い!」

「何?」

「ジュリアさん、何見つけたの?」

「ほら、カタツムリ達。」


そういうと、ジュリアは両手にいっぱいカタツムリ達を抱いていた。リウィッラはカタツムリも駄目らしく、そのまま気を失った。


「リウィッラ?」

「ありゃありゃ…。」

「この娘って、性格は勇ましいけど、意外にビビりなんだよね。」

「はぁ…。カタツムリ、可愛いんだけどな。」

「そう言えば、この間、蝿を見ただけでも泣き出すくらい騒いでたな。」

「そうなんです?」

「うん。とにかくしばらく寝かせておこう。ギャーギャー騒がれてもうるさいだけだから。」

「ですね。」


それにしても、リッラとシッラは、一体牡蠣をどこにしまったのだろうか?


「た、大変だ~!!」


え?

宴会の間から大きな声が聞こえてきた。やたらと騒がしい音が聞こえる。この足音は?ヤバイ、リッラとシッラだ。


「ジュリア!リッラとシッラがやって来るから、逃げるよ!」

「ええ?!」

「ほら!もう、カタツムリなんか腕に付けて遊んでないの!」

「は、はい!」


私はリウィッラと彼女のお人形を抱いて、台所から脱げ出した。カタツムリを外したジュリアも、床に滑りながら一緒について来くる。入れ違いにリッラとシッラが台所に入って来た。その後に、アントニア様も青い顔してついて来てる。何事だろう?


「もう、アントニア様!どうして食べさせる前に、一言相談されなかったんですか?」

「だって、媚薬の効能があるって聞いたし、生で見てたらおいしそうだったし…。」

「あー、それは本当に洗浄してから、炭火焼にしてからじゃないと、危ないんです。」

「でも、孫のガイウスに勧めたら、美味しい美味しいって食べるからつい…。」


ガイウス?

まさかカリグラ兄さんの事?


「カリグラ様もどうしてあんなにいっぱい食べたのでしょうか?!」

「あー、やっぱり調子乗ってたのでは?」

「でしょうね。」


やっぱりカリグラ兄さんの事だ。

しかし何を食べたんだろう?


「あああ、どうしよう?ガイウス死んじゃう?ねぇ?リッラ。」

「死にませんって!ただ、牡蠣は本当に生のままだとっても危険なんです!」

「魚醤のガルムを混ぜても?」

「あったり前です!」

「あー、ただ、お腹が当たったのでしょうから、二三日は寝込むでしょう。」

「二三日も?!」

「大丈夫ですって。シッラ!温かいお湯もってくから容器を用意して!」

「あー、どこにあるの…?」

「あ!!もう!アントニア様!台所めちゃくちゃじゃないですか!」

「だって、後片付けが、つい面倒で…。」


カリグラ兄さん、まさかアントニア様から生牡蠣食べさせられたとか?すると、横でジュリアが目を細めてコッチをジッと見ている。あたしは気まずそうに目を外した。


「アグリッピナ様…。」

「よ、良かったよ、ジュリア。やっぱり生牡蠣は危なかったんだね~。」

「ですね…。」


すると、リウィッラがムクムクっと目を擦って起き出した。


「お姉ちゃん?」

「リウィッラ?目が覚めた?」

「リウィッラちゃん?大丈夫?」

「あ、ジュリアさ…。ぎゃ!!!」


またリウィッラは気絶した。

それは、慌てて出てきたジュリアの腕に一匹だけ、カタツムリが残っていたからだった。


続く

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