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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第九章「初恋」乙女編 西暦22年 7歳
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第九章「初恋」第百五十三話

そういえば、このサイコロ賭博を通して、いつの間にかにローマ通貨の価値も勉強もしてたっけ。これはいつもの如く計算の得意なパッラスに教えてもらった。硬貨の高い順から、金貨のアウレウス、銀貨のデナリウス、青銅貨のセステルティウス、青銅貨のデュポンディウス、そして銅貨のアス。


「イイですか?アグリッピナ様、1アウレウスを得るには銀貨のデナリウスが25枚必要になります。」

「パッラス、その下の1デナリウスだと?」

「デュポンディウスが8枚、もしくはアスが10枚になります。」

「なるほどなるほど、パッラスの説明は分かりやすいね~。」

「では...2デナリウスだとデュポンディウスは何枚必要ですか?」

「えっと、8枚で1デナリウスだから16枚!」

「正解!アスだと?」

「20枚!」

「大正解!」


どうやら私は通貨の勘定になると途端に頭が冴えて計算が早くなるみたい。ちなみに次の下の1セステルティウスを得るにはデュポンディウスが2枚必要で、1デュポンディウスを得るにはアスが2枚必要となる。


因みに、昨日のサイコロ賭博の勝敗は、私が圧勝で127アス。ドルススお兄様は85アス。パッラスが68アス。そしてビリっけつのフェリックスが256アス私に借金している。


「だいたいフェリックス、お前は減った賭け金を取り戻そうとして、前回の倍の数を賭けるだろ?それじゃ、どんどん負けるに決まってるよ。」

「でもさパッラス兄ちゃん、アグリッピナ様って侮れないんだよ。いっぱい儲かってるのに突然賭け金少なくしたり。」

「まぁ、それは勝負だからしょうがないさ。」

「くっそ~。昔やったロムルスゲームでは絶対に負けなかったのに。」

「しかも、このサイコロ賭博をやるようになってからのアグリッピナ様は、一枚も硬貨のズレがないようにみんなの賭け金を暗算して賭けているんだよ。」

「えええ?!マジで?」

「お前気付かなかったか?必ず勝者が決まると、賭け金の合計金額を言った後に、みんなの財産の総額を確認してるだろう?」

「あああ!確かに!」

「さすが大母后リウィア様の元でお勉強されただけあるよ。あの人自身気付いていないだろうけど、その場の状況把握と流れを見逃さない。昔はすっごく計算苦手なはずだったのに、お金になると楽々と計算して答えてるしさ。」

「さすが、現金なアグリッピナ様だ…。」


私はパッラスとフェリックスの二人を目掛けて飛んで行くように走った。


「さぁ!今日もサイコロ賭博やるよ!!」

「えええ?!また今日も?」

「嫌とは言わせないよ、フェリックス。あんたは256アスの借金、私にあるんだからね!」

「何でそんなに細かい所まで覚えてるの?」


パッラスは少し微笑んでいる。


「忘れてたフェリックス。アグリッピナ様は、八十一通りの掛け算も一日で覚えてしまうほど、記憶力と暗記力は誰にも負けない方だった。」

「くそ、借金の金額チョロまかすつもりだったのに…。」

「あははは、あの人には無理だな。」


結局、二日目のサートゥルナーリア祭は、アントニア様とお母様の来客が多くて、楽しみにしていたサイコロ賭博はできなかった。私はいつものようにリウィッラとペロジュリアを引き連れて遊んでいた。パッラスもフェリックスもまだまだ解放奴隷ではないので、来客の給仕で忙しく働いてる。


「ドルシッラお姉ちゃんは?」

「さぁ。」

「さっき神棚のララリウムで献酒とお香をあげてました。」

「はぁ~。相変わらず働き者だ。」

「イッシシシ。アグリッピナお姉ちゃんが怠け者だからだよ」

「なんだと~?」


私は大股を開いて、両膝の上に肘を乗せ、儲けた硬貨でジャグリングをしていた。すると、ヘンテコな仮面を被ったカリグラ兄さんがやって来た。


「おい!アグリッピナ!お前は女のくせに股なんか広げて、だらしないぞ!」


っんと面倒くさい兄貴。

あたしは無視して、そのまま硬貨でジャグリングを続けていた。


「おい!聞いてんのか?それにお前がサイコロ賭博で巻き上げた金は奴隷達のものだろう?大体女のくせに賭博なんかやって、お母様が知ったら怒るぞ!」


私はカチンときた。


「だから何よ?!」

「お姉ちゃん…。」

「リウィッラは黙ってな。ガイウス兄さんはいっつもそうやってあたしばっかりにいっちゃもんつけるけど、口ばっかりじゃない。それにこれはちゃんと相手の了承を得て、勝負して、勝って手に入れたの。それをいくら兄さんだからといってもとやかく言われる筋合いはないわ。」


私の勝気な性格は誰から見ても分かりやすいものだったかもしれない。とにかくカリグラ兄さんとは性格が合わない。


「黙れ!奴隷からなけなしの金を巻き上げるだなんて、ローマ人として恥ずかしいから、全部よこせ。俺が返してやる。」

「やだ!どうせ兄さんの事だから、全部自分の物にするんでしょ?それにあたしが勝って羨ましくて欲しいだけでしょ?ったく、心が幼いんだから!」


すると一瞬にして私の目の前が、真っ白になった。気が付くと私は床に倒れて、目の前に硬貨がいっぱい広がっている。どうやら私はカリグラ兄さんが被っていた仮面で不意打ちを喰らって倒れたみたい。


「お姉ちゃん!?」

「アグリッピナ様!?」

「黙れ!リウィッラ!ジュリア!」


私は気が付くと頭から血を大量に流していた。不思議と痛みはない。けれど、カリグラ兄さんは私の髪の毛を掴んでは唾を吐いて脅してきた。


「いいか、アグリッピナ!今度男の俺にそんな態度を取ったら、これだけで済むと思ったら大間違いだぞ!」


すると誰かが、私の髪の毛を掴んだカリグラ兄さんの手を払いのけた。


「ガイウス!やりすぎです。」


仁王立ちして兄カリグラを制止したのは、母ウィプサニアだった。


続く

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