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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第八章「暗雲」乙女編 西暦22年 7歳
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第八章「暗雲」第百四十六話

「アグリッピナ!」

「?!」


この声は?!

ヤロウ…来やがったな。


「高慢ちき!」

「はぁ?」

「あ、いや、リヴィア。お、ホホホ…。どうしたのよ?」

「いやね、最近アグリッピナどうしてるかなって思ってさ~。」


ったく、馴れ馴れしい。

いや、よそよそしいかな?高慢チキのリヴィアが来る時は、敢えていうなら表立って裏がある時。なんか変な言い方だけどまあいっか。分っかりやすい性格なのよね、彼女って。


「はい、これあげる。」

「え?」

「この間、誕生日だったでしょ?」

「へ?誰の?」

「目の前の、おバカさんの。」


えええ?!

高慢チキがあたしの誕生日覚えててくれたの?!嬉しい!!笑顔でおバカさんってのは、相変わらず余計な一言だけど…。


「首飾り?!」

「そう。ストラを着る時に、一緒に着けたら?」


嬉しい!!!

これを着けて恋に励める!悔しいけど、リヴィアにしては良いセンスしてるじゃん。


「ねぇ、毒なんか入ってないよね?」

「あのさ~。いつまでアグリッピナは私の幼い頃の記憶を引きずるわけ?!」

「だって、リヴィアだったらやりそうだもん。」

「しないって!」

「だって、あんたインチキばっかりしてたじゃん。あたしに透明の桃あげるとかさ。」

「アグリッピナだって!水泳の時、本当は足着いてんでしょ?」

「あのね、あの頃はリヴィアよりあたしの方がチビだったんだよ。それに海の沖で足なんかつけるわけないじゃん。」

「あ、そっか。」


高慢チキのリヴィアは、どっかトボけて、自分が納得するとすんなり素直になる。お互い憎まれ口を叩き合っても、やっぱり同じ大母后リウィア様のスパルタ教室で学んだ曽孫同士。二人して微笑んで、昔話に花を咲かせた。


「でもリヴィア、プレゼントありがとう。」

「いいえ、どういたしまして。あ、そうそう、今日もアルテミス・ゲームでもしない?」


はは~ん、やっぱり。

今日こそ私を負かすつもりで来たのね?受けて立つわよ。私達は私の寝室でアルテミス・ゲームをやることにした。まぁ、絶対に私は負けないんだけどね。


「リヴィアさん、こんにちわ。」

「あらー!大きくなったわね!」

「いつも姉のアグリッピナがお世話になっております。」

「まぁ、とてもお行儀がいいじゃない、ドルシッラちゃん。どっかのがさつな女とは大違い。」

「あのさ…リヴィア。ネロ兄さんがいないところで、狼になるのやめたら?」

「何よ?あたしがお淑やかを演じてるって言いたいわけ?」

「いいや、むしろ騙してる。」

「まぁ!本当にあんたって私には口の利き方悪いわよね。」

「アグリッピナ姉さん!リヴィアさんに失礼ですよ。本当に、うちの姉ががさつですみません。」

「あははは、別にいいのよ、ドルシッラちゃん。アグリッピナ、少しは妹を見習ったら?」

「っべーっだ!」


結局なんだかんだ、仲が良かったのは確かかもしれない。さてっと、今日もアルテミス・ゲームでリヴィアを負かしてやるか。


「リヴィアが先手?」

「うーん。」

「それとも後手?」

「うーん、どうしようかしら。」

「もう、早く決めてよね、リヴィア。」

「ちょっと待ってよ。この間あんたが先手だった時に私が負けたから、今日は先手にする。」

「後手じゃなくていいの?」

「うーん、やっぱり後手にする。」

「はいはい、どうぞご自由にリヴィア様。」


ゲームをしながら、いつの間に最近の話になってきた。やっぱりお互いに成長してきたのか、話し好きになってきた。


「へぇー。あんたってあの火事の時に大母后リウィア様と一緒に消化活動してたの?!」

「うん。本当はセイヤヌスん所の長女のジュリアを探しに行くだけだったんだけどさ。」

「あの火事って、結構凄かったんでしょう?」

「凄いなんて物じゃないよ。みんなススだらけで水浸し。アクア・リレーして一生懸命やってたんだから。」

「アグリッピナってがさつだから、消防隊とか似合ってそう。」

「うっさいな~リヴィアは!はい、アルテミス。」

「あああ!ちょっと待って、なんでアグリッピナが勝つわけ?」

「だってしょうがないじゃない。」

「あんた、ズルしたでしょ?」

「してないって。」


嘘。

っというか絶対に負けない必勝法を知っているだけ。しっかし、たまには負けてやらないと、後々まで呪われそうだから、たまには負けてやるか。


「ところで、アグリッピナ。」

「うん?何?」

「あんた最近うちのお母さんと会ってる?」


それは高慢チキのリヴィアには珍しく、悲壮的な表情を浮かべた深刻な悩みだった。


続く

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