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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第二章「父」少女編 西暦18年 3歳
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第二章「父」第十一話

「ドルスッス様!お久しぶりでございます。」

「おお!ネロくん。こんにちは!」

「ドルスッス様!こんちわ!」

「よう!ドルスス!こんちわ。」


ようやくネロお兄様とドルススお兄様が、ドルスッス様とご挨拶をされていた。私はぐずりながらネロお兄様のそばについた。


「ユリア…。またお母様に叱られたのか?」

「はい、ネロお兄様…。」

「たははは、しょうがないな。」


お守りのブルラをクルクル回しながら、ドルススお兄様は鼻水を垂らしていた。


「そう言うお前もブルラをちゃんとしまってないと、またお母様からゲンコツもらうぞ。」

「あ、やべえ!」


そそくさトゥニカにしまって鼻水を拭いた。するとドルスッス様はお二人の真っ黒な顔に気が付く。


「なーんだ?二人とも。顔が真っ黒じゃんか。どうしたんだ?」

「はい。ガイウスの履くサンダルのカリガを、一晩中二人で皮で編んでたんです。」

「へぇー!そいつはやるもんだな~。」

「靴裏にも鉄鋲を打って、脛当ても磨いてたから真っ黒になっちゃって。」

「弟想いで偉いんだな、お前達。」

「ガイウスのためだけじゃないんですよ。お父様の勝利も願って、一生懸命二人でやってみたかったんです。」

「そっかそっか。」


やっぱりお兄様達は男性だな。

ドルスッス様には実際に着られる胴鎧であるロリカの重さや形状、見栄えの良さや輝かせ方の極意に興味があるみたい。私はというと、未だにお母様から叩かれたお尻がヒリヒリ痛くって堪らない。


「つまり、かたびらの取り付け方が重要なんですね?」

「そうそう後ろ手に持っていくと、この脇の部分で引っ掻き傷ができるから出来るだけ前に寄せるんだ。」

「なるほど~。」


私には全く興味のない話。

でも、さっきお父様がお話してくださった黄金のロリカにはとっても興味がある。いつか絶対に着てみたいと思った。すると泣き止んで親指を舐めてるカリグラお兄様を抱っこしながら、お父様が突然扉を開けて伝えにきた。


「おーーい!クラウディウスがやってきたぞ!」

「え?叔父様が?!」

「クラウディウス叔父様がいらしたんですか?」

「ああ!あやつ、頑張って杖を持って来たぞ!」

「おお!クラウディウス兄さん!って事は、うちのリウィッラと一緒だな?」

「ああ!妹も一緒にきてる。」


クラウディウス叔父様!

ドルスッス様とは対照的なお人だけれども、とてもお優しい方。生来の持病のため、どうしてもギリシャ文字の発音をされると吃音になってしまうのだけれども、とっても博学で好奇心旺盛な紳士。


「本当だ!リウィッラ叔母様もご一緒にいらしてる!」

「うちのユリアは妹が大好きなんだ。」

「そうかそうか!」


リウィッラ叔母様はゲルマニクスお父様の妹で、とってもチャーミングなお話し方をされる叔父様想いの淑女。私にはいつも新しいトゥニカや蜂蜜のいっぱい入った香水を持ってきてくれる。お母様の次に憧れてる女性。


「妹め、あやつかなりめかし込んでるな…。」

「今日はウィプサニアちゃんには負けない!って張り切ってたからな。」

「全く、それに付き合わされたんだな?クラウディウスの奴は。」

「あははは!すまぬ。」


鼻をかんだ後に杖を落としてコケる叔父様。その様子に慌てる叔母様。


「あ…。コケた。」

「あやつ、大丈夫か?」

「いや~立派じゃないか、ゲルマニクス。あの精神は素晴らしい。いい弟を持ったな。」

「ああ…。あやつは自分が不幸である事を、決して悔やんだりしない精神の持ち主だ。」


後ろを振り返ると、ドルシッラを抱きながらお母様が陽射しを手で避けながら何事か?と見ている。私はさっきまでお仕置きされていた事もスッカリ忘れ、お母様に駆け寄っていった。


「お母様!お母様!クラウディウス叔父様が、リウィッラ叔母様とご一緒にいらっしゃいます!」

「本当に?」


私は嬉しくなって今度はお母様の右手を引っ張って、みんながいるところへ連れていった。


「お母様!早く!」

「あっ!ユリア、そんなに焦らせないで。」


そう!

みんなみんな家族や兄弟や姉妹想いで、優しい心の持ち主ばかり。それもこれも、全てゲルマニクスお父様という人柄あっての事。ローマ市民から言われてる以上に私達は幸福という光の中で、互いを思いやる気持ちに包まれながら心の奥から幸せに暮らしていたのだった。


お父様が亡くなるまでは…。


続く

【ユリウス家】


<ユリア・アグリッピナ(15年-59年)>

主人公。後の暴君皇帝ネロの母。


<ゲルマニクス(紀元前15年-19年)年の差+30歳年上>

アグリッピナの父


<ウィプサニア(紀元前14年-33年)年の差+29歳年上>

アグリッピナの母 


<長男ネロ(6年-31年)年の差+9歳年上>

アグリッピナから見て、一番上の兄


<次男ドルスス(7年-33年)年の差+8歳年上>

アグリッピナから見て、二番目の兄


<三男ガイウス=カリグラ(12年-41年)年の差+3歳年上>

アグリッピナから見て、三番目の兄


<次女ドルシッラ(16年-38年)年の差-1歳年下>

アグリッピナから見て、一番目の妹


<三女リウィッラ(18年-42年)年の差-3歳年下>

アグリッピナから見て、二番目の妹


【アントニウス家系 父方】


<アントニア(紀元前36年-37年)年の差+51歳年上>

アグリッピナから見て、父方の祖母


<リウィッラ・ユリア(紀元前13年-31年)年の差+28歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔母


<クラウディウス(紀元前10年-54年)年の差+25歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔父


【アントニウス家系の解放奴隷、使用人および奴隷】


<ナルキッスス(1年-54年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<パッラス(1年-63年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<フェリックス(12年-62年)年の差+3歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<アクィリア(17年-19年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<シッラ(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<リッラ(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<クッルス(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セリウス(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セルテス(紀元前12年-63年)年の差+27歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<ぺロ(17年-30年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの飼い犬


【クラウディウス氏族】


<リウィア大母后(紀元前58年-29年)年の差+73歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の母親。初代皇帝アウグストゥスの後妻


<ティベリウス皇帝(紀元前42年-37年)年の差+57歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟。初代皇帝アウグストゥスの養子、リウィア大母后の長男


<ドルスッス(紀元前14年-23年)年の差+29歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟の息子。二代目皇帝ティベリウスの長男


【ティベリウス皇帝 関係】


<セイヤヌス(紀元前20年–31年)年の差+35歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの右腕。親衛隊長官


<ピソ(紀元前44年-20年)年の差+59歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの親友。シリア属州の総督。


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