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紺青のユリ  作者: Josh Surface
第一章「私」少女編 西暦17~18年 2~3歳
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第一章「私」第一話

ここに、『紺青のユリ』という名の回想録がある。


著者は、古代ローマ皇帝ネロの母親であり、そのネロによって亡き者とされた、ユリア・アグリッピナその人である。


この本は、今までたった一人の人物にしか触れられなかった、世界最古の女性による回想録だそうだ。 昨夜、私はこの本を読み終えた。 遥か彼方の国、それも遠い昔の話であるにも関わらず、心から彼女の辿った生き方に恋をしてしまった。今夜、私はこの本を皆さんに、そのままお伝えしようと思います。


コーヒーカップや紅茶を片手に、いや、ワイングラスを片手にでも、いやはやバーボンでもウィスキーでも構わないかな?この彼女自身の素直な回想録を、優雅なひと時の中で、くつろぎながら愉しんで欲しいです。


さて、今回この回想録を発表するにあたり、協力してくれた世界中の友人達へ、この場を借りて、心から感謝の言葉を述べさせて頂きたいと思います。


まずはイタリアに住むジョルジョ・チェリくん。君の緻密なまでの分析と探究心が無ければ、本日こうやって実を結べなかったと思う、ありがとう!次に、彼の同僚である古代文書研究家のアドルフォ・ナポリターノくん。クラウディウス文字で書かれたこの回想録を、最後まで諦めずに解読してくれたこと、本当に喜ばしい限りです!ギリシャに住む女性心理学者であり、古代ローマ研究家のイレーネ・バルツァさん。貴女の女性らしい観点と感性、それを上回る情熱無くしては、きっと、これ程まで素晴らしい回想録はできなかったでしょう!そして、スロベニアに住むラテン語と日本語にも堪能なフーゴ・シュテファンくん。君の実にわかりやすい翻訳が無ければ、私はきっと人生の半分を損していたに違いありません。ありがとう!


その他、多くの手伝って頂いた世界中の友人達に、最後まで付き合って頂いたこと、心から感謝します。


本当に、本当に、ありがとう!


では、そろそろ、この『紺青のユリ』の表紙を、貴方と共にめくることにしましょう。


西暦2011年01月31日 月曜日

Josh Surface



第一章 「私」第一話


それは、百合の雫が教えてくれるのだから、目を閉じる事よりも目を開く事のほうが、きっと容易いのかもしれない。 一番最初の想い出として、私の記憶の中に残っているのは、優しい陽の光を浴びた大草原。 何歳の頃かは正確に憶えていない。けれど、その場所はきっと、私が生まれたゲルマニア州のオッピドゥム・ウビオルム(現在のケルン)にある何処かだと思う。お昼寝から起きた私は、目を擦りながら眺めてた。


遠くの方でお父様とお母様、そして三人のお兄様達が、ポツンポツンと、のどかにそれぞれ散歩していた。生まれたばかりの妹は、私の隣で幸せを一人占めするように、安心してスヤスヤ寝ている。 お兄様やお母様の話によると、小さい頃の私は、寝起きは常に泣いていたそうだ。とにかく不安を泣き声で訴えてたそうで、両親があやしにこなければ、泣き止む事はなかったらしい。


でも、なんでだろう?

その時の私は、不思議と不安じゃなかった。とても落ち着いてて、ずっとずっと両親と兄弟の姿を眺めていた。時折、プクプクした短い自分の足を、クロスさせたり、足の指を触ったり。そばにある草を、自分の指で遊んだりしたけど。でも、やっぱり遠くにいるみんなを眺めていた。


感触は今でも残っている。

冷んやりと柔らかい土と、青々しく茂っている草の茎。そばにあったいい匂いの百合の花に、澄み切った瑞々しい空気。遠くの方まで誘われる青色の空と、それらを小魚が渡るように流れる雲。


そしてその記憶は、百合の雫を一滴浴びた妹が目を覚まし、キャッキャと笑ってる所でいつも終わる。


後々、お母様にも三人のお兄様にも尋ねた事があったが、(妹はさすがに赤ん坊すぎて憶えてないだろうけど。)みんな口を揃えて憶えていないと言う。


これが私の最初の記憶で、大切な大切な想い出。


続く


【ユリウス家】


<ユリア・アグリッピナ(15年-59年)>

主人公。後の暴君皇帝ネロの母。


<ゲルマニクス(紀元前15年-19年)年の差+30歳年上>

アグリッピナの父


<ウィプサニア(紀元前14年-33年)年の差+29歳年上>

アグリッピナの母 


<長男ネロ(6年-31年)年の差+9歳年上>

アグリッピナから見て、一番上の兄


<次男ドルスス(7年-33年)年の差+8歳年上>

アグリッピナから見て、二番目の兄


<三男ガイウス=カリグラ(12年-41年)年の差+3歳年上>

アグリッピナから見て、三番目の兄


<次女ドルシッラ(16年-38年)年の差-1歳年下>

アグリッピナから見て、一番目の妹


<三女リウィッラ(18年-42年)年の差-3歳年下>

アグリッピナから見て、二番目の妹


【アントニウス家系 父方】


<アントニア(紀元前36年-37年)年の差+51歳年上>

アグリッピナから見て、父方の祖母


<リウィッラ・ユリア(紀元前13年-31年)年の差+28歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔母


<クラウディウス(紀元前10年-54年)年の差+25歳年上>

アグリッピナから見て、父方の叔父


【アントニウス家系の解放奴隷、使用人および奴隷】


<ナルキッスス(1年-54年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<パッラス(1年-63年)年の差+14歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<フェリックス(12年-62年)年の差+3歳年上>

父方の祖母アントニア及びクラウディウスの解放奴隷


<アクィリア(17年-19年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<シッラ(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<リッラ(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<クッルス(紀元前15年-59年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セリウス(紀元前15年-60年)年の差+30歳年上>

父ゲルマニクスの親友


<セルテス(紀元前12年-63年)年の差+27歳年上>

父方の祖母アントニアの解放奴隷


<ぺロ(17年-30年)年の差-2歳年下>

父方の祖母アントニアの飼い犬


【クラウディウス氏族】


<リウィア大母后(紀元前58年-29年)年の差+73歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の母親。初代皇帝アウグストゥスの後妻


<ティベリウス皇帝(紀元前42年-37年)年の差+57歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟。初代皇帝アウグストゥスの養子、リウィア大母后の長男


<ドルスッス(紀元前14年-23年)年の差+29歳年上>

アグリッピナから見て、父方祖父の兄弟の息子。二代目皇帝ティベリウスの長男


【ティベリウス皇帝 関係】


<セイヤヌス(紀元前20年–31年)年の差+35歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの右腕。親衛隊長官


<ピソ(紀元前44年-20年)年の差+59歳年上>

二代目皇帝ティベリウスの親友。シリア属州の総督。


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