6話
文章所々おかしいけど、一章終わるまでは突っ走ります。
19時にもう一本
授業終わりの休み時間になると、必ずといっていいほど、佐藤莉緒がやって来ては白雪さんに話しかけていた。
午前中だけでだいぶなかよくなったようだ。凄いな。
ところが4限目の終わり、つまりお昼休みになると、突然佐藤莉緒は教室を飛び出して、
どこかへ駆けて行った。当然お昼も来るんだろうなと思っていた俺は、ちょっと肩透かしをくらった。
隣をみると、白雪さんもお昼どうしようかと悩んでいるみたいだった。せっかくなので、手助けをしてあげることにした。
「えっと白雪さん、お昼は?お弁当?」
「いえ、今日は食堂を利用させていただこうかとおもってました」
「じゃあ案内するから、ついてきて」
そう促して、二人で教室をでた。
何人かの男子生徒が「あっ」という顔をしていたが、
気が付いてない顔をすることにした。
普段は家から持ってくる弁当を教室で食べている。
だが、今日みたいに朝が慌ただしかった日や、
うっかり弁当を忘れた日には、こうして食堂に来ることになる。
「……すっごい行列ですね」
「でしょ。あそこにメニューのサンプル置いてあるから、見に行こうか?」
「はい、たのしみです」
食堂の入口には飲み物の自動販売機が並び、
その隣に、今日のメニューのサンプル写真や実物が飾られたディスプレイがある。
大抵の生徒は食べるものを決めていて、ディスプレイを素通りし我先にと食券売り場に向かうのだが、今日は俺も足を止めることにした。
白雪さんを誘導するように、ディスプレイの前に立つ。
ほとんどのメニューは、黒マジックで商品名と値段だけが書かれた味気ない札ばかりだが、
今週のおすすめであるAランチとBランチだけは、
実物が置かれている。
「どちらも美味しそうですね。悩みます」
初めてレストランに来た子どもみたいに、
白雪さんは目を輝かせてサンプルを見比べていた。
今週は、Aランチがオムライス、Bランチがエビフライ定食らしい。
近くにいた女子たちが、
「オムライスにしよっかな」
「え、トッピングでチーズあるじゃん」
「うわ、神」
などと言いながら、食券売り場の列へと消えていく。
「相川さんは、もう決めました?」
「まあね。でも、じっくり決めていいよ。今は丁度席もだいぶ埋まってるし。少し時間ずらしたほうが空くからね」
「そうなんですね」
急かすのもよくないと思い、真剣な目で悩む彼女の横顔をちらりと見ながら待つ。
少しして、
「じゃあ……Bランチにします。オムライスも捨てがたいですけど」
「了解。じゃあ、並ぼうか」
食券売り場の列は、さっきとほとんど長さが変わっていなかった。
「前の学校には、食堂なかったの?」
「ありましたよ。でもお弁当の人が多かったのであんまり利用はしてないですね。
あとは、引っ越しの片付けが落ち着くまでは、しばらく食堂かなって」
なるほど、と頷く。
引っ越しの経験はないが、片付けが大変そうなのは想像できる。
そんな話をしているうちに食券を買い終え、提供カウンターへ向かう。
麺類、カレー、そしてA・B定食。それぞれ列が分かれている。
「俺、麺類だから先に取って席確保しておくね」
ラーメンと印字された食券を見せると、
「ありがとうございます」
白雪さんは定食の列に残り、俺は麺類コーナーへ向かった。
回転が早いのが売りなので、思ったよりすぐにラーメンが出てくる。
トレイを持って給水所でお茶を二つ注ぎ、空席を探す。
ちょうど運動部らしい集団が席を立ったところだった。
今だ、と思いトレイを置き、向かいの席にもお茶を滑り込ませる。
二人分、無事確保。
カウンターを見ると、ちょうど白雪さんがトレイを持って出てきたところだった。
「こっち!」
手を振ると、少し周囲を見回してから、こちらに気づき、やって来る。
「お待たせしました。ごめんなさい、遅くなって……あ、お茶まで。ありがとうございます」
「気にしないで」
「ラーメン、伸びちゃいましたよね? 先に食べてくれてもよかったのに」
「猫舌だから、これくらいがちょうどいいんだよ」
「そうなんですか……じゃあ、申し訳ないので」
そう言って、エビフライに箸を伸ばしかけてから、少し躊躇する。
「……エビフライ、一つ食べませんか?」
「あはは、いいよ。それに俺、エビちょっと苦手なんだ」
「アレルギーですか?」
「いや、ただの食わず嫌い。家で天ぷら揚げるときも、エビだけは避けるから、家族に不評でさ」
苦笑しながらそう伝えると、転校生は少し意外そうな顔をした。
「エビ、結構美味しいんですよ?」
「まあ、そう言われるんだけどね」
少し考えるようにしてから、彼女が続ける。
「……そうだ。料理、得意なんですか?」
「得意ってほどじゃないよ。たまにやる、くらい」
「ええ、すごいです」
即答だった。
「いやいや、そんなことないって」
「でも、やろうとするのがすごいです」
そう言って、エビフライを一口かじる。
「Bランチにしてよかかったです。美味しいですよ」
「それはなにより」
気に入ったのか白雪さんはサクサクとエビフライを口に運んでいく。
衣の音が、妙に大きく聞こえた。
◇4話_お昼に誘う主人公と転校生→6話_




