15話
短いですが、16時頃一本追加
「――あれっ、先輩。珍しいっすね。今日も食堂っすか」
聞き慣れた声に、横をみると、トレイを両手で持ったミクが立っていた。
トレイの上には、湯気の立つカレー皿。
だが視線はこちらに向けず、大きな口を開けて俺の前へと視線を向けている。
「まあな。どうした、そのアホ面」
「アホとは失礼な。てか先輩誰っすか、その美少女。
めちゃくちゃ美人じゃないですか?その辺でナンパしたんすか?」
「アホ。昨日うちのクラスに来た転校生だよ」
そう言うと、ミクは「へーそうなんすか」と言いながら、
そのまま俺の隣の空いていた席に腰を下ろして、左手に持ったスプーンで
カレーを勢いよく掻き込む。
……こいつ文芸部だよな?動きだけ見たら完全に運動部だ。
「はじめまして! 一年A組の佐藤ミクって言います!先輩の飼い主やってます!」
「おい、飼い主ってなんだ?」
「だって先輩、私が呼びに行かないと部活来ないじゃないですか」
「それは顧問が来る時だけ顔出す条件で、文芸部に入部した結果だから。
しかもその連絡係やるって言ったのはミクだろ?」
「違うっすよ。次期部長に任命された結果っす。呼ばないと来ないなんて、
うちのペットと同じじゃないっすか」
「誰がペットだ」 白雪さんがくすっと笑い、オムライスを食べ始める。
「白雪先輩さんのオムライス美味しそうっすね。 今日A定食オムライスだったの、カレー頼んでから気づいたんすよ。私、オムライスには目がなくて」
「ふふ……えっと佐藤さんでいいのかな?よかったら、少し食べますか?」
「だめだって。こいつ甘やかしたら調子乗るから」
「大丈夫っす。こっちで我慢するんで。あ、佐藤さんって呼ばなくていいっすよ。年下なんで。
そのうち『こいつ』とか『お前』になりますから。気軽にミク呼びで可っす」
そういって俺の弁当箱からハンバーグをひょいと摘まむ。
メインのおかず勝手に取るなよ。自分のカレー食ってろ。
「じゃあ……ミクちゃんで」
「まさかの“ちゃん付け”! なんか照れるっす!」
顔を両手で覆うオーバーな表現をしながら、続ける
「大丈夫っすよ。丁度、今日の晩御飯はオムライス作ろうと考えていたので」
「ミクちゃん、料理得意なんですか?」
「はいっす。お店開けるレベルっすよ。先輩も自分でこのお弁当作ってるんですよね」
「そうなんですか? 」
「まあね」
「先輩、格好つけてますけど、本当はお金なくて、お小遣い欲しさに家事手伝いしてたんっすよ」
「……おい、わかってるならバラすな」 白雪さんがまた小さく笑う。
「でもそのおかげで、お弁当作れるようになったからいいじゃないっすか。
このハンバーグも冷めてますけど、まあま美味しいっすよ」
どうもありがとうよ。
「それでも凄いですね。私、あんまり料理得意じゃなくて……」
そう呟くと、ミクがぱっと顔を上げる。
「それなら家庭科部おすすめっすよ。料理苦手でもめちゃくちゃ上達するらしいっす。
友達のまきちゃんが、前は包丁すら握れなかったのに、今じゃ巻き寿司作れるんで。
…まきちゃんなだけに」
「それ話盛ってない?」
「ちょっと盛ったっす。でも調理実習の時、普通に手際よかったっすよ」
「……普通にうらやましいです」
少し考えてから、白雪さんはつぶやく。
「私、家庭科部に入ろうかな」
「いいと思うっす。いつ活動日かまきちゃんに聞いておくっす」
「そういえば、話変わりますけど、さっきの話。ミクちゃん、ペット飼ってるんですね?」
スプーンを一度脇に置いて、口元をぬぐいながら、白雪さんが問う。
「そうっす! 母と私と姉とポチ、あと父親で、愉快な五人家族っすよ!」
指を一本ずつ丁寧に折りながら数えているのを見て、思わず口を挟む。
「お父さんをポチより後ろに数えてやるなよ。かわいそうだろ。そういえば、お前、姉さんいたのか?」
ミクはこちらを一瞥し、わざとらしく「はぁ」とため息をはきながら、
「前に言いましたよ? 先輩の記憶力、うちのポチ以下っす」
やれやれ、と両手をあげて、首を左右に振る。外人か。
「ポチって言うのね? 何犬かしら」
「あ、ポチは猫っす」
「いやおかしいだろ。名付け親は誰だ」
「私っす」
「だと思ったよ。」
なんだか、喉と頭が痛い。




