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10話

あと一話で…

ミクと2人並んで駅前を歩く。ミクはあっちにいったり、こっちにいったりと忙しそうだ。

ふと俺も気になるものを見つけて「ちょっとお店寄るわ」と断りをいれて、一軒のお店に入る。

そこはガチャガチャばかりを扱ってる店舗だった。

昔はスーパの片隅にかれて誰にも見向きされていなかったものだが、

最近ではこやってガチャガチャだけで一つの店舗を構えるお店も珍しくない。

実にいいことだ、と考えながら、俺は昨日ネットでチェックしていた今日から発売の新作をさがす。

実は昔からガチャガチャを回すのが好きで、なんだかんだで今もこうやって新作が出るたびにお店に足を運ぶようにしている。

さて新作はと‥。店内は決して広いわけではなく、所狭しとガチャガチャの筐体が並んでいるので、

この時間は近隣の高校生や小学生たちが筐体の前に群がっている。

少し懐かしくて、胸の奥がきゅっと痛んだ。


お目当ての筐体へと向かう。だが新作の筐体の前には他校の高校生が今丁度お金を入れ始めているとこであった。

しばらくかかりそうだし、他のガチャを見るかと、思ったとき

「ちょっ、先輩どこいったかと思ったすよ」とミクが声をかけてきた。

「振り向いたらいないっすもん。一人でしゃべってて恥ずかしかったっす」

「いや、ちゃんと声かけたんだけどな‥まて、なんだそれは」

「源たこっすよ?知らないんすか」

見ればミクの右手には源たこ特有のお皿に載った熱々のたこ焼きが3つ載っている。ソースのいい香りが鼻腔をくすぐり思わず唾を飲み込んだ。

「そういう意味じゃなくてな。お前はもうちょっと落ち着いて周りを気にしろ。そのうち迷子になるぞ」

見ていて不安になるわ。

「ちゃんと周り見てるっすよ。だからこうして美味しいものにありつけるんすから」

違った。こいつは周りしか見てないんだ。


「まあどうせこのお店だろうなと思ってたこ焼き買って待ってたんすけど、

先輩全然出てこないし。あ、1個要ります?」

8個入りのたこ焼きをものの数分で5個食い終わったんかこいつ。

「もう冷めてるし、猫舌の先輩でも丁度食べごろっすよ。」

と左手に持つ楊枝をブスっとにたこ焼きを刺して、俺の口へと運んでくる。

気恥ずかしいな思いながらも1個いただいて礼をいう。

残った2つヒョイッと口に運んで、近くにあっていたゴミ箱に捨てる。

うーんこういのって、俺の気にしすぎなんだろうか?

「で?新作のガチャ回したんすか?」

「あ、ああ。まだ回してない。人がいたからな。」

そろそろ筐体の空いた頃かなと視線をむける。すると目の前あったガチャが目に入る。

「ウエディングコレクション」と書いてあり、復刻版と書かれたポップが貼り付けてある。

筐体の前にはガチャガチャで出てくる景品が載ってある。


ウエディングドレスを模した携帯画面クリーナー。

ブーケのアクセサリーのついた髪留め。

そして他の景品とは一回り大きく写っている指輪のついたキーホルダー。


その写真を見て、俺は胸の奥にしまっていたある光景思い出していた。

「先輩?」ミクが不思議そうこちらを見る。

「へーこれ復刻版て書いてあるっすよ。復刻版ってことは前に発売されてたんすね?人気あるんすかね」

「さあな。」ミクへの返事もそこそこに吸い寄せられるように、コインを投入する。

ガチャガチャっと歯車が回る音がして、コロンとカプセルが落ちて来た。

中身は指輪がついたキーホルダーだった。

なんという運命のイタズラだ。つい天を仰ぎそうになる。


「おーなんかあたりっぽくないっすか、やば。1発であたり引くとか先輩豪運っすね」

と横で無邪気にはしゃぐミク。

「じゃあこれは私がもらうっす」

「はあ?どうしてそうなる」

俺の手の中にあったカプセルをよこからひったくると

ミクは俺にむかってチッチッチと指をふる。

「えっ、今しがた私のたこ焼き1個奪ったすよね」

「奪った?いや待て、あれはくれたんだろ?」

あんなこっ恥ずかしい渡し方しておいて、それはないだろうと。

「食べ物の恨みは恐ろしいっすよ、先輩」

「わかった、わかった。あげるから。そのかわり一枚レビュー用に写真だけ撮らせてくれ。」

そう言ってスマホのカメラ立ち上げる。

するとミクは「可愛く撮るっすよ」と言いながら自身の右手の薬指に指輪を嵌める。

いや待てなんで、薬指なんだよ、と思ったが

「似合うっすか?」と笑顔を見せてきたミクに「アホか」と一言いい、シャッターボタンを押した。

そんなやりとりをしつつ、二人でガチャガチャショップを出ると、駅に向かって歩き出す。

ミクが「どこに付けようかなー」と指輪ついたキーホルダーを眺めている。

「なくすなよ」とだけ注意しておいた。

「はいっすー」と歩きながら、あいまいな返事を返すミク。

彼女の手に持ったリングが、夕陽に照らされて鈍く輝いていた。


しばらく経って、まだ混雑しているガチャガチャショップに一人のお客が入店していた。

このあたりでは見慣れない、水色の制服を着こなした少女が店内を見渡す。

新作と書かれたポップに気がつくと、

筐体の前に立ってポケットから財布を取り出す。

財布には、少し古ぼけた指輪のついたキーホルダーが留めてあった。

「よし、これで」

少女は小銭をガチャガチャの筐体に入れて、レバーを回していた


happy new year

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