第68.5話② 組織
第68.5話② 組織
魔王城最上階の一室にて、ディー、ステンリー、ダイス、フェロー、フロイヒの幹部5人が話を始めていた。
「ステンリー、これをどう見る。」
これまでの事も含めて、ディーはステンリーに見解を求める。
「魔王と言う組織の破壊が狙いなのであれば、現状のように周りから削いでいく策と直接トップを叩く策の2通りが最初に思いつくでしょう。現状から前者を遂行していると思われますが、別の狙いがあってもおかしくはないでしょう。」
確定に至らないステンリーの見解に、早速ダイスが反応を示した。
「3部隊の隊長が立て続けにやられやんだ。魔王を狙っての犯行は明らかだろう。別の狙いがあるにしろ、すぐにでも何らかの対策か報復は必要だ。」
相手の目的の特定よりも、自衛や報復の決定が急務である。
現場の意見としてダイスの意見は最もであった。
「それについてはすでに手を打ってあります。」
ダイスの意見に対して、ステンリーに代わりフェローが代弁する。
「協力関係にある遊戯低、白夜に依頼し、各部隊長に監視と護衛をつけました。相手の力量によっては戦闘を避け、隠密追跡により主犯を特定してもらいます。」
「つまり、俺達を餌にして他組織が釣り上げるってことか。」
フェローの説明をダイスが簡潔にまとめた。
その回答にフェローは頷き、確信をもって言い切る。
「その通りです。相手の狙いが魔王であれば、この策は有効です。」
ディーとステンリーは頷いて見せ、ダイスも納得したのか追及の言葉は発しなかった。
「……それなら俺も、護衛役に入れてほしい。」
4人が合意を示す中、黙然としていたフロイヒが提案する。
「誰かに委ねるのは性に合わない。自分の仲間は自分で守る。」
言い切ると同時に、彼の視線はダイスに向いていた。
それを察してか否か、ダイスも同意を述べる。
「それは俺も賛成だ。ステンリーが反対しても俺とフロイヒは護衛につくぜ。」
反対が出るならステンリーだろうと高を括った発言に、彼は溜息を一つ吐いて答えた。
「反対はしませんよ。白夜から3部隊、夜盗からは3名が護衛に付く手筈になっていますので、もう1部隊分はフロイヒに任せるつもりでしたので。」
心外だとばかりにステンリーは投げやりのような口調で述べる。
「ダイスには別の依頼を任せるつもりでしたが、護衛に回ってもらっても大丈夫ですよ。」
「ちょっとまて。護衛につくかどうかは先にその依頼内容を聞いてからだ。」
意味深な言い回しに、ダイスは慌てて訂正した。
しかし、そういう軽率さを咎めるように、ステンリーは撤回を許さない。
「残念ですが、この件はフェローに任せることにします。あなたはフロイヒと共に護衛をお願いします。」
いつもなら、『仕方ないですね。』と折れてくれるのだが、その素振りが見えなかった。
「俺の言い方が悪かった。この通りだ。だから機嫌を直して別の依頼を……。」
ダイスは顔の前で手を合わせ、謝罪の気持ちをアピールする。
その滑稽さに満足したのか、ステンリーはクスクスと笑いを溢しながら撤回を許した。
「そこまでするのでしたら仕方ないですね。では、別の依頼はダイスに任せることにしましょう。」
こうして、闇討ち犯の正体を掴むため、魔王は他のグループと協力して罠を張り巡らせることとなる。
しかし――、彼らが主犯に辿りつくのは、ずっと先の事であった――。




