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第62.5話④ レイラの決断

第62.5話④ レイラの決断


 歴史資料を読み漁り、様々な仮説、過程を考察し続け、レイラはローグリフについての調査結果をまとめていた。


「3国で始まったローグリフ連合だったけれど、かの対戦でマナハイムは連合を脱退している。」


 現状は2国の連合となっているローグリフ連合国。

 調査結果からだと、マナハイムは魔石の発掘地点として多く記録を残しているが、教皇府はべロックスにあり、密接な繋がりは元々薄かったのだろうと推察できる。


「マナハイムの離脱は、表向きにはマイナスのように思えるけれど、ローグリフを中心に考えれば、切り離されても問題はなさそうね。」


 更に懐疑的に考察すれば、わざと切り離した説まで用意できそうなくらいだった。


「流石にそこまでは無いと思うけれど……、シュヴァイン伯爵領マスマッドの事件を発端に、隣のリネ侯爵領リーネスの独立宣言、異端審問官マナハイム支部壊滅を経てローグリフ連合脱退の流れは、妖魔種廃絶の流れに待ったをかけつつも廃絶推進派を大いに刺激した。これが全て筋書だとしたら、それこそレベロ・セルフィートが巻き込まれたウォルタースの悲劇も、私と父が戦死した幾度目かの妖魔領域侵攻にも教皇府が関わっている気がするわ。」


 これといった決定的な資料がなく、様々な考察だけが独り歩きしていく。

 この状況に、レイラはまとめていたノートと本を閉じ、机の上を片付け始めた。


「いくら考察しても、決定的な情報が不足しているわ。机上の空論……、というよりは考察なのだけれど、もう一度……、今度は内部に潜入して情報を掴まなくては……。」


 本はすべて棚へと戻し、紙の資料はまとめて引き出しにしまい込む。

 最後に、まとめのノートとリスタルテが用紙してくれた資料を鞄に収納し、レイラはシャワールームへと向かった。

 扉に鍵をかけ、大鏡を前にして順番に衣服を脱いでいく。


「後、どれくらい持つのかしら……。」


 鏡に映った自身の裸体――。

 うら若き女性の白と、どこか艶やかさのある細身の四肢は、生前の自身を投影しているかのように再現されたものだ。

 しかし、心臓があるであろうその部分には、無理やり埋め込まれているようにしてその存在感を示す、赤く光を放つ球体に植物の根が纏わりつくような異形の核が脈打つように鼓動を続けている。

 それがある以上、到底――、人間種や妖魔種といった人とは呼べない。

 その部分を見つめ、レイラは不安と焦りを溢していた。


「終わりが近づく感覚はわからないけれど、役割とあの件の真実だけは解き明かさないといけない。」


 鏡に映る自分へ決意を語り、脱衣所から浴室へと移る。

 シャワーの水音が余計な思考を遮り、流れる水が不安と焦りを緩やかに流していった――。

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