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第62.5話② レイラの調査考察

第62.5話② レイラの調査考察


 創霊25年。

 ハイデンベルグ王国の氏名制度開始とともに、各国でもファーストネームとファミリーネームを使うようになる。

 中央連合の諸国にもその文化は入ってきたが、サグリフ国では直ぐに定着したものの、ベロックス国、マナハイム国で定着するようになったのはしばらく先の事だった。


 創霊30年。

 三雄の誓いで有名となった、マリーラ一行による北方大陸の開拓が始まった年。

 物語では漁師とされているマリーラ達だが、ハイデンベルグ王国の史書には海軍の一部隊の隊員であったことが記されていた。

 英雄を際立たせるために脚色されたのは言うまでもない。

 

 創霊38年。

 魔石と呼ばれる精霊エネルギーの結晶体を活用した実験が、カルバイン王国で成功する。

 少量で、膨大なエネルギーを生み出す魔石に、世界中が注視した。

 各国は飛躍への期待と共に、やがて危険性を指摘するすようになる。

 それが現実となったのは、翌年の事であった。


 創霊39年。

 カルバイン王国は国境を越えてマナハイム国へと進軍する。

 魔石を活用した魔石兵器の試験投入も兼ね、ハイム領東部を侵攻したのだ。

 マナハイム国は中央連合諸国へ救援を依頼し、ベロックス国、サグリフ国が援軍を派遣する。

 援軍によって侵攻を食い止め、十分に威力を確かめたカルバイン王国はあっさりと撤退した。

 しかし、この侵攻は各国の怒りを買うことになる。

 そして、筆頭の軍事力を誇る、ハイデンベルグ王国が動くこととなった。


「この魔石兵器が戦争の発端となり、創霊42年にハイデンベルグ王国とカルバイン王国の国境にあったノースリア地方が消滅……。これを受けて、魔石兵器が世界的に禁忌となったのね。」


 悲惨な結末により導き出された制約。

 歴史にもしもは存在しないが、魔石兵器の投入を見送っていれば、果たしてノースリアは世界から消滅することはなかったのだろうか。


「平和的活用に注力すればこんなことには成らなかったのだろうけど……、価値を見出す専門家は技術者だけにとどまらない。軍も国の勝利の為にできることをしただけにすぎないわ。」


 自分自身の敗戦の過去と重ねると、魔石を兵器活用したカルバイン王国を責めることはできなかった。


「もしその兵器が完成していて、かの大戦に使用できていたなら……。」


 人間種が勝利し、私は戦場で死ぬことはなかったかもしれない――。

 そうなれば、〝レイラ″として今を生きてはいなかっただろう。


「こうやって歴史を調べる事も……。」


 言葉にして、本来の目的から外れていることに気づいた。


「いけないわ。今はローグリフ協定国について調べているのに……。」


 気を取り直し、私は本来の目的に復帰する。


 創霊67年。

 世界の終焉未遂と六英雄誕生の前兆となる、精霊獣リヴィアタンとの遭遇。

 マリーランド王国とハイデンベルグ王国を隔てる海域にて、精霊獣と呼ばれる巨大な魔物が出現する。

 両国が連携し討伐するも、これは始まりに過ぎなかった。


 創霊90年。

 ノーム霊山でサグリフ国の調査団が精霊獣ハイウルフと接触する。

 これを討伐したのが後の英雄、オルカイト、リセリア・テイナーズ、アニー・ライオット、アルテム・ワイズの4名だった。

 そこに、テイラー・アルバレスとライチ・カグチが加わり、一行は6人となる。

 その6名が目指したシルフ霊山にて、今度は精霊獣ガルーダと遭遇し討伐を果たした。


 創霊91年。

 マリーランド王国2代目の国王であったラピス・マリーランドが、カルバイン王国の国庫に封印されていた魔石を強奪する。

 国王の座をを息子に継承し隠居していたとされていたが、各国の疑念がマリーランド王国へ向けられた。

 当然、マリーランド王国は関与を否定。

 ラピスが帰国したという事実もないことから、マリーランド王国へ向けられた矛先は一旦降ろされることとなる。


「この時、ラピスがいた場所がどこだったのか……、どうやら歴史書には記されていないようね。」


 調べていた歴史書には載っていないことを確認し、私は別の書物を取り出した。


「でも、リスタルテ様が計画の為に集めた精霊研究報告書の中に、その痕跡が記述されているのよね。」


 その書物の中から目当ての頁を開き、私は注意深く読んでいく。


「魔石らしき鉱物の発見と処置に関する報告文書……、発見された場所は……。」


 声に出しながら文字を追っていくと、アスティア山道、アステイト森林、ヴァニサル洞窟の3か所がそこに記されていた。

 場所としては、すべて南ロザリオ連合国の周辺に位置している。


「そして、これらを発見した調査団の詳細を確認すると……、やっぱり思っていたとおりね。」


 更に、調査団の編成はベロックス国とサグリフ国の調査員で構成されており、文末には教皇府にて封印と記されていた。


「ラピスは南ロザリオ連合国のどこかに潜伏していた。そして、ラピス亡き後にベロックス国とサグリフ国は魔石掌握に動いていた……。」


 少しずつ――、パズルのピースが繋がっていく。


「隠し場所の特定と、ラピスの潜伏先が特定されていない事が関連しているのであれば、南ロザリオ連合国が匿っていた可能性も出てくるわね。」


 この、意図的に隠されている真相の先に、私は深淵を覗くような恐怖を感じ始めていた――。




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