第69.5話 勇者一行との遭遇
第69.5話 勇者一行との遭遇
*** ヨヅキの視点 ***
「すみません、この隊の中に勇者が居ると思うのですが。」
その一言の何が悪かったのか、私には理解できない。
「なぜそれを貴様が知っている。貴様はいったい何者だ?」
返ってきたのは警戒。
明らかにこちらを敵視しての言葉だった。
「えーっと……、その勇者知り合い……、になる予定の者?っていえばいいのかな?」
〝――そんな言い方では返って不審をを煽るだけだ。嘘が苦手なら正直に言えばいいだろう――″
そう思うなら私の代わりに良い言い方を教えてほしい。
スメイシカの忠告に悪態を吐きつつ、どうしたものかと考える。
「なんだその言い回しは?それに疑問形だし……。何を隠している?」
たった一言で最悪な状況になってしまったようだ。
スメイシカ先生、対処をお願いします。
〝――仕方あるまい。かの時代、交渉においても百戦錬磨であった我が助言して進ぜよう。しかし、我は直々に代弁出来ぬ故、今から伝える意思をそのまま声に出すがよい――″
流石スメイシカ先生!
一流のネゴシエーター!
「我の事などどうでもよい。貴様らの中に勇者はいるのかと問うておる。」
あれ?
この言い方やばいやつでは――。
「あくまでも隠し通すつもりか。ならばこちらも情報をくれてやる必要はない!」
だめじゃん!
全然だめじゃん!
「だからそれは言えない事情があって……。」
今の立ち位置上、元勇者であることは隠しておかなければならない。
しかし、その結果が悪循環を生んでしまったのだ。
「ならこれ以上話すことはない!全員、この不審人物を捕らえよ!」
結局こうなるのか――。
〝――こちらの方が手っ取り早いではないか。流石、舌戦でも無敗を誇る我の交渉術だ――″
黙れ老いぼれ。
〝――おい!我に向かって老いぼれとはなんだ!――″
スメイシカに恨みを込めて苦言を刺し、私は剣を強く握るのだった――。




